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医療介護の地域別データの2017年度版を公表―日医総研

2018.1.12.(金)

 日本医師会総合政策研究機構(日医総研)は1月10日、ワーキングペーパー「地域の医療介護提供体制の現状(2017年度版)」を公表しました。

 「都道府県別・二次医療圏別データ集」と「市区町村別データ集」があり、▼都道府県▼二次医療圏▼市区町村―の単位で、人口動態や医療需要、介護保険施設の設置状況などを把握できます。病院経営者が自院の将来像を描く際の参考になりそうです(日医総研のサイトはこちらこちら)。

日医総研のワーキングペーパーでは、人口分布を地図上に示すなど、情報が分かりやすく提示されている

日医総研のワーキングペーパーでは、人口分布を地図上に示すなど、情報が分かりやすく提示されている

自院の将来像を模索する上で参考になるデータ集の最新版

 人口減少社会に入った我が国では、入院患者数そのものも減少していきます。また少子・高齢化の進展に伴い、疾病構造も変化します(肺炎や骨折での入院需要が増え、大手術が必要な急性疾患での入院需要は減る)。このため病院には、▼地域医療構想(地域の将来の医療提供体制像)▼病床機能報告の結果(地域における他院の動き)▼自院の実際の姿▼地域の医療需要(人口動態や疾病構造など)―などを総合的に捉え、将来の姿を模索することが求められます。

 高齢化は介護サービスの需要増大も引き起こすため、「治療によって状態が落ち着いたが、介護サービスを利用するめどがつかず退院できない」高齢患者が増える恐れもあります。病院経営者は、「地域にどの程度の医療・介護資源があり、どの程度の供給不足(もしくは過剰)が見込まれるか」を把握することが求められます。

 日医総研が今般公表したワーキングペーパーは、医療・介護資源の現状や、今後の人口動態などを地域別に示すもので、病院経営者には、最低限このデータを活用して「自院の歩むべき道」を考えることが求められます。

 「都道府県別・二次医療圏別データ集」は2012年、「市区町村別データ集」は2015年から毎年公開しています。2017年度版では、各地の人口データを2015年の国勢調査に基づいて更新するなどして、現状により近い値を示しています。

 上述した2つのデータ集で確認できる情報を、都道府県→二次医療圏→市区町村という具合に、焦点を絞りながら見ていきましょう。北海道→札幌二次医療圏(札幌市など6市1町1村)→札幌中央区を例にとると、次のようなことが確認できます。

【北海道】
▼人口は、▽2005年:562万7737人→(4%減少)→▽2015年:538万1733人→(8%減少)→▽2025年:495万9984人と推移する
▼患者の受療行動が大きく変わらなければ、高齢化の影響により医療需要が2015年から2025年にかけて4%程度増える
▼介護保険施設やサービス付き高齢者向け住宅の定員数は、現状では75歳以上人口に対して比較的多い(偏差値にすると60)ものの、75歳以上人口が増える2025年までに現状の1.1倍程度に増やさなければ不足してしまうので、施設・住宅の増設か、在宅療養のためのインフラ整備が求められる

【札幌二次医療圏】
▼人口は、▽2005年:231万15人→(3%増加)→▽2015年:237万5449人→(3%減少)→▽2025年:229万3364人―と推移する
▼医療需要は2015年から2025年にかけて12%程度増加する
▼75歳以上人口に対する介護保険施設などの定員数の偏差値は現在69で、全国平均レベルを大きく上回っているが、現状の1.3倍程度まで増やさなければ、やはり2025年には不足する

【札幌市中央区】
▼人口が、▽2015年:23万7627人→(1%増加)→▽2025年:24万488人→(1%減少)→▽2040年:23万8093人―と推移する
▼人口当たり病床数の偏差値は現在、一般病床が81と非常に高く、▽回復期病床:57▽地域包括ケア病棟:57▽療養病床:57―の偏差値も高い
▼サービス付き高齢者向け住宅の75歳人口当たり戸数が、1000人当たり92.6と多く(全国平均は13.5)、偏差値は119に達し、飽和状態にあると想定される
▼75歳以上人口当たりの通所介護事業所数と短期入所事業所数の偏差値はどちらも43で、地域の需要に対して不足している可能性がある

これらは、病院経営者が「自院の病床戦略を立てる」際や、「介護サービスへの参入を検討する」際などに必要な最低限の情報となります。

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