強みが明確になれば、患者は集まる―事例で学ぶ、病院経営データ分析入門(5)
2018.2.9.(金)
ベンチマーク分析に基づく院内の改善活動は、病院が提供する医療の質や経営にどのような影響を与えるのか――。その具体的な内容を、「病院ダッシュボード」のユーザー事例をメディ・ウォッチでご紹介させていただいた記事を振り返りながら紐解いていく連載企画。今回は、増収増益の用途におけるソリューションとして、地域連携や生産性向上における病院ダッシュボード活用の事例を見ていきます。
出発点は自院の強みと弱みを知ること
急性期病床の最適化が進む中で、いかにして患者を集めるべきか――。このような経営課題に頭を悩ませる病院経営者は多いと思います。
病院ダッシュボードの「マーケット分析」にある「患者エリア分析」機能を用いることで、患者がどの地域から来院しているかを可視化できます。これにより、例えば「どの地域のクリニックと顔の見える関係を構築すれば、より紹介患者が増加するか」といった対策を適切に立てることが可能です。
また「マーケット分析」の「市場分析」機能を用いれば、地域において自院がどれだけの症例をシェアできているかが分かります。さらに他院のシェア状況も把握できるため、客観的かつ定量的に、自院の強みと弱みを知ることができます。
集患戦略の考え方と進め方は、(1)救急であれば応受率向上、(2)予定入院であれば開業医との連携を強化――。そのうえでエリアを拡大する、というステップが王道です。
ランチェスター戦略を集患対策に応用する方法も有効です。それにはまず、自病院の周辺地域を細分化して整理します。その中で、内部環境と外部環境を精査した上で、重点エリアを設定し、そこで必ず1位になれる戦略を打ち立てます。ここで重要なのは、「2位では駄目で、必ず1位になること」とGHCマネジャーの湯原淳平は強調します。局地戦はあくまで周辺地域でのシェアを伸ばすための手法で、目指すべきは局地戦を皮切りにオセロゲームのようにシェアを塗り替えていくことであり、そのためには局地戦での圧倒的な勝利が必要なのです。
生産性向上し、やるべきことの拡大を
生産性を向上させることで、病院の理念の実現や強みを発揮するための素地を作ることにつながります。例えば、手術室のオペレーション。済生会福岡総合病院の手術室の稼働率は、緊急手術を含めて79.2%(2014年現在)とほぼ80%で、全国平均の48.0%(同)を大きく上回っています。分析を担当したアキよしかわは、「われわれコンサルタントが真っ先に着目するのは手術室の稼働率。米国では、稼働率が80%を下回る手術室は何らかの問題があると言われている」と指摘します。
◆病院ダッシュボードの「手術分析」を用いれば、急性期病院の心臓部の現状を即座に把握することができます。市立函館病院の分析においても、入院や外来単価、手術料がほかの病院に比べて高く、手術室9室がすべて月曜から金曜にかけてむらなく稼働していることが分かりました。
A病院(一般300床台)では、病棟薬剤業務実施体制加算を算定し始めた結果、年間で2000万円規模の増収を見込んでいる――。加算算定の最適化でも、「チーム医療Plus」を用いることで、改善活動をスピーディに進めることができます。
チーム医療を推進する上で重要なポイントは、患者中心のチーム医療。医療の中心は常に患者であり、その周りを医師、看護師、薬剤師などの医療従事者が囲い込む輪のようなイメージで医療を提供する必要がありますが、事務職はこの輪をつなげる役割を担い、この輪に入ることが必要です。
連載◆成功事例で学ぶ、病院経営データ分析入門
(1)改革の突破口はベンチマークにあり
(2)急性期一本か機能分化か、決断どうする?
(3)「初の成功例」に最適なのはコスト削減
(4)なぜ、高度急性期の4割が導入するのか
(5)強みが明確になれば、患者は集まる
(6)専門コンサルによる勉強会で使いこなせる
(7)トップランナーからの学びでさらなる飛躍を