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急性期一本か機能分化か、決断どうする?―事例で学ぶ、病院経営データ分析入門(2)

2018.1.25.(木)

 ベンチマーク分析に基づく院内の改善活動は、病院が提供する医療の質や経営にどのような影響を与えるのか――。その具体的な内容を、「病院ダッシュボード」のユーザー事例をメディ・ウォッチでご紹介させていただいた記事を振り返りながら紐解いていく連載企画。今回は、戦略・ビジョンの策定の用途でのソリューションとして、病院ダッシュボードを活用している事例を確認します。

医療ニーズ半減も、病院大再編時代にどう対処?

 病院経営の課題は、(1)戦略・ビジョンの策定(2)増収増益(3)コスト削減(4)人材育成――の大きく4つに分けることができます。本記事では(1)戦略・ビジョンの策定の事例記事について確認していきます。

 2025年、急性期病床のニーズが半減する中で、急性期病院はどのように戦略的な経営を行っていけばいいのか――。

 例えば、北海道全体でみると、2025年の「高度急性期」と「一般急性期」を足した医療ニーズが2013年の「一般病床数」の半数で足りるという衝撃的な結果が明らかになっています。このような病院大再編は、枯渇しつつある社会保障財源の膨張を抑制し、持続可能な医療提供体制を整備するため、ニーズを超過してしまった急性期病床を大幅に削減する一方、逆に足りない回復期病床を大幅に拡大することなどが狙いです。

 中長期的な戦略を立案するには、院内のデータはもちろん、ありとあらゆる院外のデータを精査した上で、自院の今後の立ち位置を決定することが欠かせません。特に、急性期病院は(1)経営・マネジメントの徹底(2)機能分化と連携の推進(3)「地域医療構想」を視野に入れた自院のポジショニング――の3つが生き残りに向けて必要になります。

個々の病院の将来像はデータが示している

 例えば、400床規模のある病院では、病院ダッシュボードや分析フレームワークなどを用いて、正確なデータで詳細かつ緻密な分析を実施。今後5年間の経営戦略の軸となる「5年マスタープラン」を作成しました。周辺病院や地域の医療ニーズなどを加味し、一般病床を削減する一方、回復期病床を新設するなどの内容で、これにより年間2.5億円の増収インパクトがあると試算。こうした分析が、病院ダッシュボードを用いることで可能になります。

 事例を見てみましょう。SWOT分析の結果、岩手県立中央病院は岩手医科大学附属病院の3分の2程度の病床数であるにもかかわらず、多くの疾患で強みを発揮し、規模的には二番手ながら症例数が岩手医科大学附属病院に肉薄。さらに、具体的な疾患別症例数で見ていくと、神経系疾患、消化器系疾患(手術あり)、呼吸器系疾患などは医療圏トップに位置しています。一方、筋骨格系疾患(手術あり)については岩手医科大学附属病院に大きく引き離されており、近年、さらに症例数が減少傾向にあることが分かります(下図)。こうした分析を瞬時にできるのが、病院ダッシュボードの強みの一つです。

 佐久医療センターでは、運営方針を固める際にデータ分析の結果を重視。医師をはじめ現場スタッフの協力を得るには、エビデンスが何よりも重要だからで、診療情報管理課の須田茂男主任がデータ分析の中心的な役割を担っています。例えば患者数や在院日数などを診断群分類ごとに全国のII群病院や近隣の病院とベンチマークし、それらの結果を各診療科に毎年報告しています。これにより各診療科の優れた点や課題が明らかになり、改善手法を明確にすることができます。

外来機能適正化、病床管理でも活用できる

 病床機能適正化のほかにも、外来機能適正化で病院ダッシュボードは活躍します。例えば、外来単価5000円未満の患者の割合が多い病院では、診察だけの患者が多く、「専門性の高い病院」にふさわしい外来にはなっていない可能性が高いと言えます。そうした場合には、単価の低い外来患者を地域の診療所などに逆紹介し、医師や看護師といった医療資源を入院や専門外来に集中させることを検討する必要があります。こうした分析も、病院ダッシュボードの「外来分析」を用いることで、容易に行うことができます。

 病床管理でも活躍します。病院ダッシュボードを活用しつつ、平日日勤に発生する空床利用の順位を、診療部、看護部、事務部などの専任メンバーによる「病床管理チーム」が毎日のベッドコントロール会議で決定することで、1日単価が5万9000円弱から6万2000円弱に向上した500床規模の病院や、200床規模の病院では年間1990万円増収したケースもあります。

連載◆成功事例で学ぶ、病院経営データ分析入門
(1)改革の突破口はベンチマークにあり
(2)急性期一本か機能分化か、決断どうする?
(3)「初の成功例」に最適なのはコスト削減
(4)なぜ、高度急性期の4割が導入するのか
(5)強みが明確になれば、患者は集まる
(6)専門コンサルによる勉強会で使いこなせる
(7)トップランナーからの学びでさらなる飛躍を

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