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福祉用具貸与の上限価格、2021年度介護報酬改定から「3年に一度の改定」に―厚労省

2020.6.16.(火)

福祉用具貸与における上限価格は、他の介護報酬と同様に「3年に一度の改定」とする―。

新規に保険適用された製品は「別に3か月に一度、上限価格を設定する」こととし、上限価格設定から1年未満の新製品については、次の改定での上限価格見直しとする。例えば、▼2020年7月以降貸与分▼同10月以降貸与分▼2021年1月以降貸与分―として上限価格等を設ける商品は、2021年度改定では上限価格見直しを行わず、2024年度改定での見直しを行う―。

厚生労働省は6月12日に通知「『福祉用具貸与及び介護予防福祉用具貸与の基準について』の一部改正について」および、事務連絡「令和2年度及び令和3年度以降の福祉用具の全国平均貸与価格及び貸与価格の上限の取扱い」を示し、こうした点を明確にしました。

毎年度の改定では、福祉用具貸与事業者のコストが嵩みすぎる

「福祉用具貸与」「介護予防福祉用具貸与」は公的介護保険サービスの1つで、▼車いす(付属品含む)▼特殊寝台(ベッド、付属品含む)▼床ずれ防止用具▼体位変換器▼手すり▼スロープ▼歩行器▼歩行補助つえ▼認知症老人徘徊感知機器▼移動用リフト(つり具の部分を除く)▼自動排泄処理装置—について、貸与費用の一部を保険給付する(利用者は低額の自己負担で貸与を受けられる)ものです。福祉用具の利用によって、要介護状態になっても住み慣れた在宅での生活を継続が可能になってきます(いわゆる「在宅限界」を高める)。

ただし、福祉用具貸与の価格は、かつては「事業所の裁量による価格」(つまり「言い値」)となっており、まったく同じ製品であっても貸与事業者によって貸与価格に大きなバラつきがありました。中には、非常に高額な貸与価格を設定している事業者もあったのです。

もっとも、例えば「利用者が山間部に居住しており、納品・搬送に大きなコストがかかる」などのケースもあり、「同じ製品の価格は全国一律とする」ことは困難です(採算が合わず、山間部等への福祉用具貸与サービスが滞る可能性もある)。そこで2018年度の介護報酬改定において、次の2つの仕組みを福祉用具貸与に導入しました。

(1)全国における平均的な貸与価格を公表し、福祉用具専門員に対し「利用者に説明する」ことを義務付ける

(2)貸与価格に上限を設ける(上限を超過する貸与価格を設定した事業所者について、当該製品は保険給付を行わない)

前者(1)は、利用者が「製品・事業者を適切に選択できる」ようにするもので、福祉用具専門員は、利用者に対し▼当該製品の貸与価格▼同一製品の全国平均貸与価格▼当該製品の特徴▼同一の機能を持つ他製品の情報―の情報を提供することが義務づけられています(2018年10月から義務付け)。



また後者(2)は、保険請求できる上限価格を「全国平均価格+一定幅(1SD、標準偏差)」に定めるものです(2018年10月から)。同じ製品でも、▼仕入値▼搬出入経費(遠方の利用者に届けるには輸送費が多くかかる)▼保守点検等費用―が事業者によって異なることから、貸与価格の一定幅を認めたものです(一律の価格設定はしない)。なお、上限価格を超える製品については、保険給付の対象とならず、全額利用者負担となります(「超過負担のみが自己負担となる」ものではない、関連記事はこちら



あわせて厚労省は2019年度以降、▼3か月に1度程度、新規製品について「全国平均価格情報」や「貸与価格上限」を設定し、公表する▼1年に1度程度、「全国平均価格情報」や「貸与価格上限」を見直す―こととしていました。

しかし、2018年10月以降の平均価格・上限価格公表によって、▼高額な貸与価格設定は相当程度排除されている▼福祉用具貸与事業所の74%で収益が減少し、またカタログ修正などによるコストも発生している―などの状況に鑑みて、「2019年度には上限価格見直しは行わず、新商品についてのみ新たな上限価格設定を行う」方向に修正されました(2019年4月10日の社会保障審議会・介護給付費分科会で決定)(関連記事はこちら)。



さらに、2018年度介護報酬改定の効果検証調査でも、▼2018年10月貸与分と2019年9月貸与分で貸与価格に変化がないレコードは99.1%(上限まで価格を引き上げるような明確な動きはない)▼事業者の仕入れ価格が下がらず、貸与価格の引き下げにより利益が減少している事業者が多い―ことなどが明らかになりました。こうした状況を受けて2020年6月1日の介護給付費分科会において、▼他の介護報酬と同様に、上限価格は「3年に一度の見直し」とする▼改定の間に新規に保険適用された製品については、別途、上限価格を設定していく―方針を決定(関連記事はこちら)。今般、関連通知改正などが行われたものです。

具体的には、次のスケジュール・内容で上限価格見直しが行われます。

▽上限設定等については、3年に1度の頻度で見直しを行う
→2021年度の介護報酬改定において「2021年4月貸与分から適用する価格」を見直し、その後、3年に1度の頻度で見直す

▽ただし、「上限設定等から経過した期間が1年未満の新商品」については上限価格見直しを行わず、次に見直しを行う年度に見直す
→▼2020年7月以降貸与分▼同10月以降貸与分▼2021年1月以降貸与分―として上限価格等を設ける商品は、2021年度改定時点で「上限設定等から経過した期間が1年未満の新商品」となるため、2021年度改定では上限価格見直しを行わず、2024年度改定での見直しを行う

▽新商品については、3か月に1度の頻度で上限設定等を行う(これまで通りの取り扱い)



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