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ビタミンD不足が、高齢者の筋力低下やサルコペニア(骨格筋減弱症)発症を招く大きな要因の1つ—長寿医療研究センター

2022.10.26.(水)

高齢者のデータやマウス実験により、「ビタミンDが不足する」→「筋力の低下や、サルコペニア(骨格筋減弱症)発症を引き起こす」ことが証明された—。

国立長寿医療研究センターは8月24日に、こうした研究結果を公表しました(センターのサイトはこちら)。将来、「血液検査結果をもとに、適切なビタミンDの補給によりサルコペニア予防(ひいては要支援・要介護状態の予防)が可能になる」ことなどが期待されます。

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ついに今年度(2022年度)から団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が後期高齢者となります。高齢化の進展は「要介護者、要支援者の増加」につながるため、「介護予防」などが非常に重要となります。

要介護・要支援の原因は多種多様ですが、▼サルコペニア(加齢に伴って生じる骨格筋減弱症)→(増悪)→▼要支援・要介護—という流れが1つ存在します。しかし、サルコペニアの発症や増悪化の分子機構は不明であり、また、診断・発症予測に有用な分子マーカー(バイオマーカー)も同定されていません。

この点、先行研究において「ビタミンDの加齢による量的変動がサルコペニアと関連する」との見解がありますが、成熟した骨格筋に対するビタミンDの作用やサルコペニアとの関連性を示す科学的根拠は明確になっていませんでした。

そこで今般、▼長寿医療研究センター運動器疾患研究部の細山徹副部長▼名古屋大学大学院医学系研究科整形外科学の水野隆文医員—を代表とする研究グループ(長寿医療研究センター老化疫学研究部、名古屋学芸大学、東京大学、松本歯科大学、医療創生大学も共同参画)では、「血中ビタミンDの値」と「筋力・筋量」「サルコペニア」との関係を調査・分析。

具体的には、NILS-LSA(国立長寿医療研究センターで実施している老化に関する長期縦断疫学研究)の1919名のデータを用いて、▼ビタミンDが欠乏している者384名のグループ(血中の25OHD量が20ng/ml以下)▼ビタミンDが充足している者384名のグループ—で、4年後の「筋力変化」「筋量変化」「新規サルコペニア発生数」がどのように異なるかを分析しました。そこからは「ビタミンD欠乏群では、充足郡に比べて筋力低下が進行し、サルコペニアの新規発生数も有意に増加する」ことが分かりました。ここから、「ビタミンD欠乏が将来的な筋力低下を導き、結果としてサルコペニア罹患率が上昇する」ことが示唆されます



また、研究グループは「ビタミンD受容体遺伝子Vdrを成熟した筋線維で特異的に欠損させたマウス」(VdrmcKOマウス、欠損マウス)を実験的に作出。欠損マウスと、通常マウス(コントロール)と比較すると、▼筋重量、筋線維径、筋線維タイプ、骨格筋幹細胞数など骨格筋の量的形質には影響は見られないが、欠損マウスで有意に筋力低下が認められた▼欠損マウスでは、骨格筋における筋小胞体Ca2+-ATPアーゼ活性が低下していた—ことが分かりました。ここから、「成熟筋線維におけるビタミンDシグナルの低下もしくは抑制がSerca(筋線維の収縮・弛緩にかかわる遺伝子)発現を介して筋収縮に影響を与え、結果として筋力低下が引き起こされる」と考えられます。つまりビタミンD不足は筋量を減らすわけではなく、「筋力の低下」に作用すると言えるのです。



高齢者においてはビタミンDが不足しがちになります。長寿医療研究センターでは「高齢者で生じる筋力低下やサルコペニア発症にビタミンD不足が深くかかわっている可能性がある」、「血中ビタミンDがサルコペニア発症を予測するバイオマーカーの1つとなり得る」と指摘しています。

今後、さらなる研究を進めることで、例えば「高齢者の血液検査結果をもとに、適切なビタミンDの補給によりサルコペニア予防(ひいては要支援・要介護状態の予防)が可能になる」ことなどが期待できるでしょう。



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