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DPC病院は「DPC制度の正しい理解」が極めて重要、制度の周知徹底と合わせ、違反時の「退出勧告」などの対応検討を—中医協総会

2023.5.10.(水)

DPC制度においては、参加病院が正しく制度を理解し、適切にデータ提出などを行うことが極めて重要であるが、一部にそうでない病院も見られる。改めて制度の周知などを徹底するとともに、DPCに相応しくない病院について「退出を促す」仕組みを検討すべきではないか—。

5月10日に開催された中央社会保険医療協議会・総会、および先立って開催された診療報酬基本問題小委員会でこういった議論が行われました。

DPC病院の大幅病床変更、「事前申請」が必要だが、「変更後の申請」を行う違反事例も

Gem Medで報じているとおり、2022年度のDPC特別調査において、例えば▼「診療情報管理士の配置」を行っていない▼医療の標準化・質向上・在院日数短縮に向けた「クリニカルパスの導入・使用」を行っていない▼急性期医療の根幹となる「救急患者の受け入れ」を行っていない—といったDPC病院が一部に存在することが再確認されました。

【DPC特別調査等に関する記事】
DPC機能評価係数II、「高齢化に伴う患者構成の変化」などに対応した計算式に見直してはどうか—入院・外来医療分科会(3)
DPC病院の経営向上に向け、診療情報管理士の確保・クリニカルパスの導入使用・救急患者受け入れ等推進を—入院・外来医療分科会(2)
2023年度DPC機能評価係数II内訳を公表、自院の係数と他院の状況を比較し、自院の取り組みの検証が重要―入院・外来医療分科会(1)



DPC制度では、全病院に共通する「DPC点数表に基づく点数」(日当点)に、「医療機関ごとの係数」(医療機関別係数)と「入院日数」を乗じて、包括範囲の収益を計算します(DPC点数×医療機関別係数×在院日数、ここに手術などの出来高点数が上乗せされる)。

DPCにおける診療報酬算定の概要



包括部分を構成するDPC点数は「DPC病院全体の平均」として定められ、また医療機関別係数は「DPC病院全体の中での相対評価」として定められます。このため、例えば「不当に、極端に医療資源投入量を少なくしている病院」があれば、平均値=DPC点数が下がり、「十分な収益を得られない」病院が多数出てしまいます。また、「不当に、極点に在院日数を短くしている病院」があれば、他のDPC病院について「在院日数が長い=評価を低くする」といった事態が生じてしまいます。

このように極端な病院の存在は「DPC全体に悪影響を及ぼしてしまう」のです。

また、DPC点数は「傷病」「手術の有無」「合併症の有無」「投与した薬剤」などによって細かく設定されます(診断群分類ごと・在院日数ごとに設定)。個々の患者がどの診断群分類に該当するかは、病院で判断します(コーディング)。このコーディングが不適切であれば、DPC点数に歪みが生じ、やはり「DPC全体に悪影響を及ぼしてしまう」ことになります。

しかし、「一部、不適切とも思われるDPC病院がある」と指摘され、2018・20・22年度に渡り様々な調査・検討が行われてきており、2024年度の次期診療報酬改定に向けても重要論点の1つに位置づけられています。

4月24日に開催された中医協の下部組織である診療報酬調査専門組織「入院・外来医療等の調査・評価分科会」では、2022年度に実施された特別調査結果が報告され、冒頭に述べたとおり、▼「診療情報管理士の配置」を行っておらず、コーディング委員会の開催が不十分である(適切なコーディングが難しい)▼医療の標準化・質向上・在院日数短縮に向けた「クリニカルパスの導入・使用」を行っていない▼急性期医療の根幹となる「救急患者の受け入れ」を行っていない—といったDPC病院が一部に存在することが再確認さところが一部に存在することや、「高齢化に伴う患者構成の変化」により、本来の趣旨とは異なる形で「係数が高くなっている」ケースが存在すること、などが明らかにされました(関連記事はこちらこちらこちら)。

5月10日に開催された中医協でもこの点が問題視され、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「DPC制度は医療の質向上・医療の標準化を目指すものである。診療実態を踏まえた制度の精緻化も重要であるが、DPC制度の趣旨・目的を達成するために、制度に診療実態を合わせていくことも重要である。DPC制度の趣旨に沿わない病院については退出勧告なども検討していくべき」と提案。

また同じく支払側の眞田享委員(日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会部会長代理)や安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は「適切なコーディングがなされていない可能性の高い病院が散見される。適切なコーディングの実施はDPC制度の根幹であり、各病院の体制充実が強く求められる。今後改善方策を検討する必要がある」と指摘しています。



ところで5月10日の中医協総会には、DPC病院である聖フランシスコ病院(長崎県)について病床数変更の報告がなされました。

DPC病院において大きな病床数変更があった場合、「急性期入院医療提供が困難となり、DPC参加が不適切となる」ケースも出かねないことから、▼200床以上の増減がある▼2倍以上または2分の1以下となる—場合には、事前に「DPC合併・退出等審査会」でDPC参加継続の可否を判断することになっています。

今回の聖フランシスコ病院については、病床数変更(DPC病床が105床→50床に減少)後にも急性期入院医療提供等が可能で、DPCへの参加継続が「可」と判断されました。

しかし、ルール(変更の6か月前までに厚労省に申請する)に則らず「事後の申請」であったことが問題視され、厚労省保険局医療課の眞鍋馨課長は▼審査対象となる場合についての事務処理フローの見直し、周知を図る▼手続きに遺漏があった場合の取り扱いについて、入院・外来医療等の調査評価分科会に検討を求める—考えを示しました。

この点についても支払側の松本委員は「すべてのDPC病院が制度を正しく理解することが極めて重要である。事務処理フローの見直しとともに、制度の周知を改めて徹底すべきではないか」と強く求めました。

今後、「ルール違反があった場合に、なんらかのペナルティを課すのか否か」なども含め、入院・外来医療等の調査評価分科会での議論に注目が集まります。厳しい対応を求める意見が多く出た場合には、データ提出遅延による「データ提出加算を一定期間算定できなくする」ルールなどを参考にしたペナルティが検討される可能性も否定できません。すべてのDPC病院が「各種のルール(DPC以外の保険診療ルールも含めて)を確認し遵守する」ことが求められます。



また、入院・外来医療等の調査評価分科会では「2023年度の入院・外来医療に関する調査」内容も了承しています(関連記事はこちら)。



このほか、5月10日の中医協総会では、新たな医療機器4点について保険適用することを承認しています。

【新たな医療機器の保険適用】(2023年6月に保険適用予定)
(新機能 C1)
▽コラーゲン繊維で腱を管理・保護することにで、組織の実質的な喪失を伴わない腱損傷部位の修復を促進するために用いる「REGENETEN インプラント」(保険償還価格25万7000円、スミス・アンド・ネフュー社)

(新機能・新区分 C2)
▽パーキンソン病の症状改善に用いる「「ヴィアレブ配合持続皮下注」を持続皮下投与するための「ヴィアフューザー皮下投与システム」(技術料の中で評価、アルフレッサファーマ社)

▽外科的治療の対象とならない変形性膝関節症に伴う慢性疼痛に対し、末梢神経に高周波電流を供給し、神経を加温・凝固(焼灼)させる「Coolief 疼痛管理用高周波システム」(技術料の中で評価、アバノス・メディカル・ジャパン社)

▽前立腺肥大症(BPH)による下部尿路症状(LUTS)を有する男性の前立腺組織切除・除去に使用する「AQUABEAM ロボットシステム」(保険償還価格34万4000円、ヴォーパル・テクノロジーズ社)



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