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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

医療機器の「適応外使用」が散見されるが、院内の倫理審査・患者の同意が必要となるほか、保険外診療で診療報酬請求など不可の点に留意を

2023.8.21.(月)

医療機器の「適応外使用」事例が散見されるが、院内の倫理審査・患者の同意が必要となるほか、一連の治療がすべて保険外となり診療報酬請求などが認められなくなる点に留意してほしい—。

日本形成外科学会や日本熱傷学会は先頃、こうした注意喚起を行いました(日本形成外科学会のサイトはこちら)。

適応外の医療機器使用は、一連の治療すべてが「保険外診療」となる点に留意を

我が国において、医療機器は(1)不具合が生じた場合でも人体へのリスクが極めて低いと考えられるクラスI(一般医療機器)(2)不具合が生じた場合でも人体へのリスクが比較的低いと考えられるクラスII(管理医療機器)(3)不具合が生じた場合に人体へのリスクが比較的高いと考えられるクラスIII(高度管理医療機器)(4)患者への侵襲度が高く、不具合が生じた場合には生命の危険に直結するおそれがあるクラスIV(高度管理医療機器)―の4つに分類されています。医療機器メーカーは、各分類に応じた手続きを経て、薬事承認・認証・届け出の取得を行っています。医療現場においては、各医療機器について「有効性・安全性が認められた(薬事承認された)傷病への治療」にのみ使用するのが原則です。

また、保険診療においては、安全性・有効性を確保するために、医薬品や医療機器について「効能・効果が認められた(=安全性・有効性が確認された)傷病の治療」以外に用いることは原則として許されません。仮にその他傷病の治療に用いれば保険外診療(自由診療)となり、当該一連の治療全体が全額患者負担となるのが原則です。「この医薬品は異なる傷病の治療に効果があるのではないか」と考えられる場合には、治験などを実施して有効性・安全性に関するデータを揃え、薬食審で効能・効果追加の承認を得ることが原則です。限られた公的財源(保険料、税)の中で、安全性・有効性が確認されていない治療を認めることは好ましくないためです。

ところで昨今、何らかの適用で薬事承認取得・届け出はなされている医療機器について、「適応対象とは異なる使用」(いわゆるOff-label use)をしている事例が学会発表などで散見されるようです。

適応外使用をした場合、当該使用法に対する審査がなされておらず、有効性や安全性についての根拠もありません。このため、当該適応外使用を行うにあたっては、▼病院内で倫理委員会での承認を得る▼患者へ十分な説明を行い、同意を得る—ことなどが必要となります。また、保険診療上の問題点もクリアする必要があります(特段の規定(適応外使用を認める規定など)がない限り、混合診療となってしまうため、医療保険を用いることは原則としてできない)。

こうした状況を踏まえ、日本熱傷学会は、具体的事例も交えて次のような注意喚起を行っています。

(a)熱傷領域の医療機器である「RECELL 自家細胞採取・非培養細胞懸濁液作製キット」(以下RECELL)は、新規性の高いクラスIII医療機器として、臨床試験の有用性・安全性、非臨床試験での安全性が評価されて薬事承認、その後、保険適用された。その適応は「急性熱傷および採皮部」とされている

(b)一方、RECELLで分離された細胞には、皮膚のあらゆる細胞が含まるため、例えば▼尋常性白斑▼外傷性皮膚欠損▼難治性潰瘍—などへの臨床応用が期待されるが、それらへの使用は現時点では「全て適応外」となる。

(c)検査用医療機器を用いて皮膚組織を破砕し、生理食塩水と共に懸濁液を作成し、熱傷創等に噴霧する「RECELLに類似した治療法」が学会発表等で散見される。この医療機器はクラスI医療検査機器として届け出がなされているが、PMDAは当該治療目的の使用に関する審査をしておらず、有効性・安全性についても根拠はない。臨床で使用する場合には、倫理委員会等での承認や患者への十分な説明が必要となる

(d)(b)(c)のような適応外使用については、一連の治療に関し「特定医療材料費や診療報酬の算定」は認められない(自由診療となり、全額患者負担となるのが原則)

(e)適応外使用を含む未承認医療機器の臨床研究に関しては「臨床研究に関する倫理指針」に添って適正な手続きを取る必要がある

(f)学会発表においても、「適応外使用である」こと、「院内の倫理委員会等での適正なプロセスを踏んでの使用である」ことを明示し、適応外使用の助長に繋がらないよう十分に注意を払ってほしい



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