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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

オプジーボなどの適正使用推進GL固まる、留意事項通知を2月14日に発出―中医協総会(2)

2017.2.8.(水)

 画期的な抗がん剤であるオプジーボ(ニボルマブ製剤)とキイトルーダ(ペムブロリズマブ)を悪性黒色腫・非小性細胞肺がん治療に用いる場合の最適使用推進ガイドラインが8日の中央社会保険医療協議会総会で了承されました。厚生労働省はこれをベースに保険診療上の留意事項通知を2月14日(予定)に発出する考えです(厚労省の提示したガイドライン案:オプジーボの悪性黒色腫治療オプジーボの肺がん治療キイトルーダの悪性黒色腫治療キイトルーダの肺がん治療)。

 臨床現場では、このガイドラインに沿って有効性・安全性が確認されている患者に両製剤を投与することが求められますが、ガイドラインから外れた使用が保険診療上一切認められないわけではなく、個別ケースごとに判断することになります。

2月8日に開催された、「第345回 中央社会保険医療協議会 総会」

2月8日に開催された、「第345回 中央社会保険医療協議会 総会」

超高額薬剤を適切な施設で、有効性・安全性が確立された患者に使用するためのGL

 画期的な医薬品の開発が進んでいますが、極めて高額なケースも少なくなく、これが医療保険財政を圧迫していると指摘されます。中医協では、これらに対応するため薬価制度の抜本改革に向けた検討を進めると同時に、「どのような施設」で「どのような患者」に投与することが適切かを規定する「最適使用推進ガイドライン」(ガイドライン)を設けることとしています。

 8日の中医協総会には、オプジーボとキイトルーダのそれぞれについて、悪性黒色腫および非小性細胞肺がんに使用する場合のガイドライン案が提示され、了承されました。

 肺がん患者への使用におけるガイドラインについては、これまでに厚労省から次のような案が提示されています(関連記事はこちらこちら)。

【施設要件】

(a)がん診療連携拠点病院や特定機能病院、都道府県の指定するがん診療連携病院、外来化学療法室を設置し、外来化学療法加算1または2を取得している施設で、「肺癌の化学療法および副作用発現時の対応に十分な知識と経験を持つ医師が、当該診療科の本剤治療の責任者として配置されている

(b)医薬品情報管理の専任者が配置され、製薬企業からの情報窓口、有効性・安全性など薬学的情報の管理および医師などに対する情報提供、有害事象が発生した場合の報告業務などを速やかに行う体制が整っている

(c)副作用に速やかに対応するために、「間質性肺疾患などの重篤な副作用が発生した際に、24時間診療体制の下、入院管理およびCTなど鑑別に必要な検査の結果が当日中に得られ、直ちに対応可能な体制が整って」おり、「間質性肺疾患などの副作用に対して、専門性を有する医師と連携し、直ちに適切な処置ができる体制が整って」いる

【対象患者】(「本剤成分に過敏症の既往歴がある患者」「妊婦または妊娠の可能性のある患者(キイトルーダのみ)」は禁忌、「間質性肺疾患の合併または既往のある患者」などは慎重投与)

◆オプジーボ

▼プラチナ製剤を含む化学療法歴を有する切除不能なIIIB期/IV期または再発の扁平上皮がん患者

▼プラチナ製剤を含む化学療法歴を有する切除不能なIIIB期/IV期または再発の非扁平上皮がん患者(PD-L1発現率が1%以上)

▼「化学療法未治療の患者」「術後補助化学療法」「他の抗悪性腫瘍剤との併用」では有効性が確立されておらず、投与対象とならない

◆キイトルーダ

▼化学療法歴のない場合:EGFR遺伝子変異陰性、ALK融合遺伝子陰性およびPD-L1陽性(TPS50%以上)の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん患者

▼化学療法歴のある場合:PD-L1陽性(TPS1%以上)の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん患者(なおEGFR遺伝子変異陽性またはALK融合遺伝子陽性の患者では、それぞれEGFRチロシンキナーゼ阻害剤またはALKチロシンキナーゼ阻害剤の治療歴があること)

▼「術後補助化学療法」「他の抗悪性腫瘍剤との併用」では有効性が確立されておらず、投与対象とならない。

 

 このうち施設要件の(a)について、ガイドライン最終版では「抗悪性腫瘍剤処方管理加算の施設基準を届け出ている施設」を新たに盛り込んでおり、対象施設の範囲が若干広くなっています。

オプジーボ・キイトルーダの悪性黒色腫・肺がん治療におけるGLの施設要件に、赤枠部分が追加された

オプジーボ・キイトルーダの悪性黒色腫・肺がん治療におけるGLの施設要件に、赤枠部分が追加された

 またガイドライン最終版では、新たに「投与中は定期的に画像検査で効果の確認を行うこと」という留意事項が追加されました。

オプジーボ・キイトルーダの悪性黒色腫・肺がん治療におけるGLの留意事項に、赤枠部分が追加された

オプジーボ・キイトルーダの悪性黒色腫・肺がん治療におけるGLの留意事項に、赤枠部分が追加された

オプジーボ、悪性黒色腫治療では「化学療法歴」の有無を問わずに使用可能

 一方、新規に示された悪性黒色腫患者への使用ガイドラインでも、肺がんと同様の【施設要件】が設定されました。ただし、悪性黒色腫の化学療法などに十分な知識をもつ医師を責任者と配置することなどが求められる点などが異なります(肺がんガイドラインでは、肺がんの化学療法などに十分な知識を持つ医師配置などが求められる)。

 また【対象患者】については、禁忌・慎重投与については肺がんガイドラインと同様ですが、有効性については次のように規定されました。肺がん治療においては「化学療法歴のない患者」はオプジーボの投与対象になりませんが、悪性黒色腫治療ではこの患者もオプジーボの投与対象となる点には留意が必要です。

悪性黒色腫治療では、オプジーボにおいても「化学療法歴のない患者」も投与対象になる(肺がん治療では、投与対象外)

悪性黒色腫治療では、オプジーボにおいても「化学療法歴のない患者」も投与対象になる(肺がん治療では、投与対象外)

◆オプジーボおよびキイトルーダ

▼「化学療法歴のない患者」および「化学療法歴のある患者」において本剤の有効性が示されている(BRAF遺伝子変異のある患者ではBRAF阻害剤による治療も考慮すること)

▼「術後補助化学療法」「他の抗悪性腫瘍剤との併用」では有効性が確立されておらず、投与対象とならない。

 また「投与中の画像検査における効果確認」も、肺がん治療と同様に実施する必要があります。

GLから外れたオプジーボ等使用、保険請求の可否は個別に判断

 厚生労働省はこのガイドラインをベースに、保険診療上の留意事項通知を2月14日に発出する予定です。留意事項通知には、「ガイドラインに従って使用すること」のほか、▼施設要件のどの項目に該当するか(がん診療連携拠点病院なのか、外来化学療法加算を届け出ているのかなど)▼治療責任者がどの要件を満たすか▼オプジーボでは「PD-L1発現率」検査の結果など▼キイトルーダでは「PD-L1陽性」検査の結果―などをレセプトの摘要欄に記載することが必要である旨が規定されます。

 ところで、留意事項通知やガイドラインに沿わない使用を行った場合、オプジーボなどの費用を保険請求できるのでしょうか。前述のようにオプジーボを非扁平上皮がん患者に用いる場合、患者には「PD-L1発現率が1%以上」であることが求められますが、例えば「PD-L1発現率が1%未満」の患者には保険診療上、一切投与が認められないわけではなく、レセプトの摘要欄に「オプジーボを投与した理由」を記載することで保険請求が可能となります。この点について厚労省保険局医療課の中山智紀薬剤管理官は、「有効性・安全性に反する使用は認められない。PD-L1抗体1%未満の患者への使用は有効性・安全性に反するわけではなく(既存治療に比べて有意な有効性が確認できないにとどまる)、経済的な視点で使用を推奨していない(原則としてドセタキセルなどの既存抗がん剤使用を推奨)に過ぎない」ことを説明しています。

 さらにPD-L1発現率1%未満の患者で、「単なる患者の希望」という理由でオプジーボを使用した場合には、それは「適切な理由」として保険請求が認められるのでしょうか、それとも「不適切な理由」として保険請求が認められないのでしょうか。この点、厚労省保険局医療課の迫井正深課長は「明らかにガイドラインや留意事項通知に反する使用であれば、保険請求を認めることはできないが、『明らかに反している』かどうかは個別ケースごとに判断することになる」との考えを明らかにしています。臨床現場における柔軟な判断を尊重するものと言えます。

 

 また留意事項通知が発出される前からオプジーボを投与している患者などに配慮し、厚労省は「適切な経過措置」を設ける考えも明らかにしています。

 

 なお8日の中医協総会では、キイトルーダ(根治切除不能な悪性黒色腫、PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんへの効能効果)など11成分・17品目の薬価基準収載、およびオプジーボ・キイトルーダの有効性を確認するための検査「PD-L1タンパク免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作成」(2700点)の保険収載も了承されています。

オプジーボ・キイトルーダの有効性を判断する要素の1つである「PDーL1」抗体についての検査概要

オプジーボ・キイトルーダの有効性を判断する要素の1つである「PDーL1」抗体についての検査概要

   
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