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地域医療連携推進法人、参加病院の重要事項決定に意見具申できるが、法的拘束力はない―厚労省

2017.2.21.(火)

 地域医療連携推進法人(以下、推進法人)を設立する「医療連携推進区域」は、原則として「地域医療構想区域」と整合的なものとするが、地域医療構想達成に資する場合には「2以上の構想区域にわたる医療連携推進区域」の設定も可能とする。また、参加病院が合併などの重要な事項を決定する場合には、推進法人の意見を聴かなければいけないが、推進法人の意見に法的拘束力はない―。

 厚生労働省は17日に、通知「地域医療連携推進法人制度について」を発出。このような推進法人の詳細についての定めを明らかにしました(厚労省のサイトはこちら(局長通知)こちら(定款例)こちら(事業報告書様式))。推進法人に関する法令は本年(2017年)4月月2日から施行されますが、その前から都道府県知事への認定申請などが可能です。

地域医療連携推進法人の連携区域、「地域医療構想区域」と整合させることが原則

 地域医療連携推進法人は、一昨年(2015年)の医療法改正で創設された仕組みです。病院・診療所・介護老人保健施設などを開設する複数の非営利法人・個人が参加して推進法人を設立。推進法人で「地域医療の再編に向けた統一的な連携推進に向けた方針」(以下、連携推進方針)を策定し、参加法人はこの方針に基づき、地域医療構想の実現に向けて医療・介護事業を推進していくことが求められます(関連記事はこちらこちら)。

地域医療連携推進法人制度の概要

地域医療連携推進法人制度の概要

 厚労省は8日に関係省令(医療法施行規則)の改正を行い(厚労省のサイトはこちらこちら)、今般、具体的な設立手続きなどを定めた詳細について通知を行ったものです。

 まず推進法人は「地域医療構想」「地域包括ケアシステム構築」の実現に向けた「選択肢の1つ」で、必ず設立・参加しなければならないものではない点に留意が必要です。参加が認められるのは、▼病院などを開設する法人(医療法人、社会福祉法人、公益法人、NPO法人、学校法人、国立大学法人、独立行政法人、地方独立行政法人、地方自治体など)▼介護事業者(薬局や生活支援事業なども含む)▼地域で良質・適切な医療を効率的に提供するために必要な者(開業医や医師会、歯科医師会など)―です。株式会社立病院の開設者(つまり株式会社)も参加が可能ですが、その場合について厚労省は「推進法人の理事・監事を当該株式会社の役員が務めることは適当でない」「病院と株式会社本体が経理上切り離されているかなどを、実態に基づいて慎重に判断する」ことを特筆しています。

 前述のとおり、推進法人は連携推進方針を定め、参加法人はこの方針に沿って地域医療構想の実現・地域包括ケアシステムの構築などを進めます。このため、医療連携を行う区域(医療連携推進区域)は「原則として、地域医療構想区域と整合的になる」よう定めるほか、「参加法人の機能分担や業務、さらにその目標」を明確にする必要があります。

 もっとも、地域医療構想の実現に資すると認められる場合には、「2以上の構想区域にわたる連携推進区域」を定めることが可能ですが、都道府県はその理由や必要性を十分に精査しなければなりません。

医薬品や医療機器、推進法人が「一括購入の調整」を行い、契約は個別病院で

 推進法人は、連携推進方針策定のほかに、▼医療従事者の資質向上のための研修▼医薬品・医療機器などの供給▼参加法人への資金貸付・債務保証・基金の引き受け▼医療機関の開設(都道府県知事の確認が必要)―などといった医療連携推進業務を行うことが可能です。

 このうち医薬品・医療機器については、「推進法人が『一括購入を調整』し、個別購入計画は参加法人がそれぞれ締結する」こととされました。医薬品・医療機器以外の物品においては、▽一括購入を実施する▽一括購入を調整する▽一括購入を実施しない―のいずれとしても構いません。

 また推進法人が、医療連携推進業務と関連する業務に「出資」することも可能ですが、その場合には▽出資に係る収益をすべて医療連携推進業務に充てる▽出資先事業者のすべての議決権を推進法人が保有する―などの条件を満たさなければいけません。

 一方、参加法人間では▼人事交流▼病床の融通―を行うことが可能です。人事交流について厚労省は、「▽経営指導・技術指導の実施▽職業能力開発の一環である▽グループ内の人事交流の一環である―場合には、在籍出向型が繰り返されても、人材派遣業と判断されにくい」ことを注意書きしています。

 また、後者の病床融通は、都道府県によっては推進法人を設立しなくとも可能なもので、「既存病床数(実際の病床数)が基準病床数を上回っていても(つまり病床過剰)、A病院を50床減少し、B病院で50床新設する(総病床数の増加はない)ことを認める」という仕組みです。その必要性などを都道府県の医療審議会で確認することになります。

 なお、機能分担・業務連携のために、参加法人Aから参加法人Bに患者を転院させるケースが生じると思われますが、厚労省は「AやBが参加法人であることをもって、診療報酬上の『特別の関係』に該当することにはならない」点を明確にしています。

 一方、ある医療法人が複数の病院を保有する場合(A法人がa1病院・a2病院・a3病院を保有)に、a1病院はX推進法人に参加し、a2病院・a3病院はY推進法人に参加することも可能です。この場合、a1病院からa3病院に患者が転院した場合、参加する推進法人はXとYで異なっていますが、両者は開設者が同一のため「特別の関係」にある点には留意が必要です。

医療連携推進業務5割超などが、推進法人認定の基準

 ところで、推進法人の設立に当たっては「都道府県知事の認定」が必要となります。厚労省は、▼前述の医療連携推進業務が事業比率の5割超▼医療連携推進業務によって社員・理事・監事などに特別の利益を与えない▼社員が各1個の議決権を有する(不当な差別的取り扱いをしなければ、定款で別の定めも可能)▼参加法人の議決権合計が、総社員の議決権の過半を占める▼参加法人が予算・事業計画・定款変更などの重要事項を決定する場合に、推進法人に意見を求めなければならない旨を定款に定める―などの基準を明らかにしました。

 ところで、参加法人である病院が近隣病院と合併を行ったりする場合、「当該法人や主務大臣などの意思」と「推進法人の意見」とどちらが優先するのか、といった疑問が生じます。この点、厚労省は「推進法人の意見に法的拘束力まではない」ことを付言しており、病院の意思決定の独自性は一定程度担保されます。もっとも、参加法人が連携推進方針に明らかに反するような動きをすることは地域医療構想実現などへの妨げになるので、関係者間での緊密な話し合いが重要になります。

 
 

 こうした規定は本年(2017年)4月2日から適用されますが、厚労省は、施行前でも「都道府県知事への認定申請」を行ったり、都道府県知事が医療審議会からの意見聴取を行ったりすることを認めています。

 
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