医師の宿直、待機場所が病院に隣接していなくても免除―第57回社保審・医療部会(1)
2017.12.7.(木)
医師の待機場所が病院と隣接していなくても、院内への宿直を免除する基準を明確化する。具体的には、連絡体制を確保するなどして、入院患者の急変時にすぐ駆けつけ、適切な診療を行える体制を確保することを求める―。
12月6日の社会保障審議会・医療部会で厚生労働省は、こうした方針を示しました。病院管理者には、病院に医師を宿直させる義務があります(医療法16条)。都道府県が許可すれば宿直が免除され、院外での待機が認められますが、▼「事実上、病院の敷地内で医師が待機する場合に限って認める」という旧厚生省の解釈に対し、病院から500メートル離れた場所での待機を認めた自治体もある▼待機場所を定めるだけでは、実際に急変患者にすぐ対応可能な体制なのか分からない―といった課題があります。
このため厚労省では、宿直を免除する条件を省令(医療法施行規則)で明示し、来年(2018年)4月から適用させる考えです。
宿直免除の許可、1955年の旧厚生省解釈と異なる事例も
厚労省の解釈は、1955年に示したもの(昭和30年2月9日付医収第62号山口県知事あて厚生省医務局長回答)で、宿直免除を都道府県が認める際の「医師の待機場所と病院の距離」について、「病院に勤務する医師の居住する場所が事実上当該病院の敷地と同一であると認められる場合」に許可すべきで、「単に医師が近距離に居住しており連絡が容易であること等の程度をもって足りるものではない」としています。
宿直が不要な状況には、さまざまなケースがあると考えられるため、実際には、各都道府県が実態を踏まえて許可を与えています。多くの自治体は、今も旧厚生省の解釈を参考にしていますが、以下のような「待機場所が病院と隣接していないと考えられるケース」で、宿直を免除している自治体もあることが分かっています。
▼【医師が病院から500メートル離れた場所に居住】(へき地にある精神科病院であり、観察を要する患者の入院が少なく診療時間外の処置患者数は月3人程度。また、要観察者入院時には宿直室を利用しており、措置入院患者実績は0人)
▼【医師が病院から50メートル離れた場所に居住】(機能回復を中心とするリハビリテーション病院であり、夜間緊急の患者がなく、連絡方法も十分確立している)
どちらのケースでも、待機場所など以外の情報も踏まえて、「入院患者の夜間などの急変への対応が遅れる事態にはならない」と自治体が判断したと考えられます。しかし、宿直を免除された病院の実態が見えづらいことから、今年(2017年)6月に公布された改正医療法で、宿直免除の条件を、厚労省令で明示することになりました(2018年4月施行)。
公道等を挟む隣接地での待機なら都道府県への申請不要
厚労省は宿直免除の条件を、(1)隣接場所待機:医師が病院に隣接する場所に待機する場合(2)非隣接場所待機:医師の待機場所が病院と隣接していないが、速やかに診療できる体制を確保している場合―に分けて整理する方針です。
このうち(1)の隣接場所待機は、患者の急変時に速やかに緊急治療を行えるように、「事実上、当該病院の敷地と同一」の場所で医師が待機している状態を指します。「病院の敷地内」はもちろん、「公道等を挟んで隣接する場所」での待機でも認められ、都道府県への申請は不要です。
今後、介護医療院(医師の宿直が原則不要)に一部転換する病院では、入所者の夜間急変時に、病院の宿直医師が往診することになると考えられます。(1)で宿直を免除することには、こうした往診の間に「病院に宿直の医師がいない」と見なされるのを防ぐ狙いもあるといえます。
非隣接場所での待機には、連絡体制の確保など4つの要件
一方、(2)の非隣接場所待機では、都道府県の判断に基づいて宿直を免除しますが、その判断基準を厚労省は、(a)入院患者の急変時に看護師等が医師に連絡をする体制を常時確保している(b)医師が病院からの連絡を常時受けられる(c)医師が速やかに病院に駆けつけられる場所にいる(d)医師が適切な診療を行える状態である―の4つにする方針です(すべて満たすことが宿直免除の基準)。
「4要件を満たさないが、宿直を免除されている事例」もある可能性がありますが、そうした病院が宿直医師を確保するか、4要件を満たすまでには一定の時間がかかります。そこで、厚労省医政局総務課の榎本健太郎課長は、「4要件を満たしていると見なす経過措置」を設ける方針を示しています。
医療部会の委員からは、「こうした基準に基づいて宿直を免除された病院で、問題が起きていないか検証し、より良い体制づくりにつなげていくべき」といった声が上がっています。
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