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診療報酬本体の引き上げが、銀行の積極的な融資に結びつく―日医総研

2018.2.20.(火)

 銀行は「診療報酬本体の改定率」を指標として、医療機関への貸出スタンスを戦略的に調整している。国が医療を成長分野に位置付けるのであれば、診療報酬本体の引き上げを着実に行っていく必要がある―。

 日本医師会総合政策研究機構(日医総研)は、2月7日に公表したリサーチエッセイ「医療機関経営と銀行貸出の関係(マクロデータ分析)」で、このような提言を行いました(日医総研のサイトはこちら)。

改定率と、銀行から医療福祉への貸し出しはシンクロ

 医療機関でも、運転資金や建て替え・設備投資などのために多額の資金が必要です。資金源としては、補助金や福祉医療機関からの融資のほか、銀行をはじめとする民間金融機関からの融資があり、とくに普通銀行から貸し付けが大きなシェアを占めているとみられます(関連記事はこちらこちら)。

 したがって、医療機関の安定運営のためには「普通銀行が、どのような考えの下に、医療機関への貸し出しを行っているのか」を把握しておくことが重要となり、今般、日医総研がマクロ的な観点でデータ分析を行ったものです。
 

日医総研は、日銀統計の貸出データなどを基に、国内銀行の貸出残高(全体と医療福祉向け)の伸び率と同期間における診療報酬本体の改定率の推移を比較した

日医総研は、日銀統計の貸出データなどを基に、国内銀行の貸出残高(全体と医療福祉向け)の伸び率と同期間における診療報酬本体の改定率の推移を比較した

 
 日銀統計を基に、国内銀行の「医療福祉」向け貸出残高の伸び率をみると、次のような状況です。

(1)2000年代初期:
バブル崩壊後の不良債権処理の最終局面にあり、国内銀行の貸出は「医療福祉」向けを含め減少傾向が続く

(2)2000年代半ば:
不良債権問題に目途が付き銀行貸出全体はプラスに転じたが、「医療福祉」向け貸出の伸びはマイナス方向へと悪化。

(3)2011年度以降:
アベノミクス・異次元金融緩和などで銀行貸出が回復する。さらに「医療福祉」向け貸出の伸び率が、全体の伸び率を大きく上回っている。

 この点、日医総研では「銀行の医療福祉向け貸し出し残高の伸び率と、診療報酬本体の改定率との間にはシンクロ(同調)が見られる」と指摘します。

 上記(2)のように、2000年代半ばには、医療福祉向けの貸し出しに慎重でしたが、同時期には診療報酬本体のマイナス改定(2002年度:マイナス1.3%、2004年度:0%、2006年度:マイナス1.36%)が行われています。

 また上記(3)のように、2011年移行は、医療福祉向けの貸し出しが活発になっていますが、同時期には継続的な診療報酬本体のプラス改定が行われています((2010年度:プラス1.55%、2012年度:プラス1.379%、2014年度:プラス0.73%、2016年度:プラス0.49%)。

 ここから日医総研は、「銀行が診療報酬本体を医療機関経営のリスク指標として、医療機関への貸出スタンスを戦略的に調整している」と分析。さらに、「医療を政策的な成長分野に位置づけるのであれば、診療報酬本体の着実な積み上げが求められる」と強調しました。

 なお、昨今、「医療業界へのアプローチ強化」を経営戦略に掲げる銀行が増えています。

日医総研は、医療・介護等向けの貸出や営業対応に特化した専門部署等を設置する銀行が増えていると指摘する

日医総研は、医療・介護等向けの貸出や営業対応に特化した専門部署等を設置する銀行が増えていると指摘する

 
 その背景としては、▼医療・介護等は(特に地方では)地域の中心的な事業体である▼超高齢化が進む中で、医療施設等の提供体制の整備・拡充が見込まれる▼医療保険制度の下で事業キャッシュフローは安定しており、与信リスクの点で安心感がある▼アベノミクスでは医療を成長分野とする政策をとっている―といった点があげられます。

 日医総研では、「銀行にとって、医療・介護業界は目先の有力な貸出先であるのみならず、地域社会の維持発展のためにも重要であり、将来的に成長が期待できる業界である」点を強調。診療報酬本体のプラス改定を、いわば「呼び水」として、銀行から積極的な融資が行われ、地域の重要なインフラである医療機関経営が安定することに期待を寄せています。

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