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救命救急センター、2018年から「地域への貢献度合い」なども評価—厚労省

2018.3.16.(金)

 救命救急センターについて、「地域の砦」としての役割を十分に果たしてもらうために、診療報酬の加算要件などにも用いられる「充実段階評価」において、「地域の重篤患者受け入れ数」や「行政・医師会などと連携した定期的な勉強会等の開催」など、地域への貢献度合いを新たに評価することとする―。

 厚生労働省は2月16日に、通知「救命救急センターの新しい充実段階評価について」を発出し、このような点を明確にしました(厚労省サイトはこちらこちら(旧充実段階に関する通知))(関連記事はこちら)。

 新しい充実段階評価は「2018年」(2018年1月-12月の実績)から行われます。

「行政や医師会と連携した定期的な勉強会」なども評価の対象に

 3次救急を担う救命救急センターは2017年度時点で284か所あり、▼救急科専門医の数▼休日・夜間帯における医師数▼感染症の管理▼医療事故防止への対応▼年間の重篤患者受入数▼都道府県メディカルコントロール(MC)協議会・地域MC協議会などへの関与—といった指標を定め、A・B・Cの「充実段階」評価が行われています。

A評価「機能は十分である」と判断された場合には、診療報酬上「1日につき1000点」の加算が行われるほか、施設運営費補助金が満額支給されます。B評価「機能が一部不十分な状態が2年続いている」と判断された場合には、診療報酬上の加算は「1日につき500点」となり、施設運営費補助金が半額になります。さらにC評価「機能が一部不十分な状態が3年以上続いている」と判断された場合には、診療報酬の加算取得や補助金受給ができなくなります。

ただし、例えば2015年の評価結果では「279施設中、A評価が278、B評価が1」、2016年の評価結果では「284施設すべてがA評価」となるなど、「評価の指標を見直す必要がある」との指摘がなされていました。

そこで厚労省は今般、評価指標を大幅に見直すとともに、充実段階評価を現在の「A・B・Cの3段階評価」から「S・A・B・Cの4段階評価」に細分化することを決めました。2018年1月から12月の状況・実績を踏まえて、2019年3月頃に評価が行われることになります。

 評価指標の見直しコンセプトは、これまでの「ストラクチャー(体制)」中心の評価に加え、「プロセス(診療の過程など)」も評価するというものです。新たに加えられた評価指標としては、次の項目が目につきます。

▽休日・夜間帯における救急専従医師数
▽地域貢献度
(地域内の重篤患者を診察している割合(所管地域人口当たり当該施設に搬送された重篤患者数÷全国総人口当たり全国重篤患者数)が0.5以上であれば2点)
▽薬剤師配置
▽臨床工学技士の配置
▽院内急変への診療体制
(院内における急変に対応する対応部署が具体的に決まっていれば2点)
▽脳死判定及び臓器・組織提供のための整備等(脳死に関する委員会が組織化され、脳死判定シミュレーションを年1回以上実施、もしくは過去3年以内に実績があれば2点)
▽救急医療領域の人生の最終段階における医療の整備(明文化された基準・手順が整備され、多職種による患者・家族等の意向を尊重した対応が行われていれば2点)
▽救急医療領域の虐待に関する整備(小児虐待、高齢者虐待、障害者虐待、配偶者からの暴力等を受けた疑いのある場合の対応方針を策定していれば2点)
▽地域の救急搬送(平時から、ドクターカーやドクターヘリ等により、地域のニーズに合わせて現場に医師を派遣できる体制ができていれば2点)
▽地域の関係機関との連携(都道府県、医師会、初期・2次・3次救急医療機関、消防機関等の関係機関と定期的に勉強会や症例検討会等を開催していれば2点)
▽専攻医の受入状況(救命救急センターで、専攻医(臨床研修を終了)を年間24単位以上受け入れていれば2点)
▽災害に関する教育(BCP(事業継続計画)を策定し、それに基づいた院内災害訓練・研修を年1回以上実施していれば1点、さらに都道府県・地域の災害訓練に年1回以上参加していれば2点)
▽災害に関する計画の策定(BCPを策定し、必要に応じて更新するための見直しを実施していれば2点)

 また、次のように「年間に受け入れた重篤患者数」や「救命救急センターを設置する病院の年間受入救急車搬送人員」などについて、「所管の人口10万人当たり人数」に統一され、前者の重篤患者受け入れ数は厳格化されています。新項目「地域貢献度」にもあるように、「地域の砦」としての役割を明確化するものと言えそうです。

▽(新基準)「年間に受け入れた重篤患者数(来院時)」:所管人口10万人当たりで100人以上であれば1点、150人以上であれば2点、200人以上であれば3点、250人以上であれば4点

▽(新基準)「救命救急センターを設置する病院の年間受入救急車搬送人員」:所管地域の人口10万人当たり400人以上であれば1点、800人以上であれば2点

充実段階の評価指標について、項目を大きく見直しており、たとえば「地域への貢献」などを重視していることが伺える

充実段階の評価指標について、項目を大きく見直しており、たとえば「地域への貢献」などを重視していることが伺える

充実度合いは4段階で評価、激変を避けるために基準値は段階的に厳格化

 これらの評価指標に基づいて、各救命救急センターの機能を▼各項目で獲得した点数の合計(評価点)▼「是正が必要」項目数—の2つで点数化。その点数から、充実度をS・A・B・Cの4段階で評価することになります。

もっとも、前述のように充実度は、各救命救急センターの収入(診療報酬や運営費補助金)に直結するため、急激な厳格化は経営を不安定にし、地域の救急医療体制を崩壊させる危険もあります。そこで、充実度の基準値は「段階を追って厳しくする」ことになりました。

【2018年】(2018年1月-12月)
▽S評価:評価点(各項目で獲得した点数の合計)92点以上、かつ是正が必要な項目ゼロ
▽A評価:是正が必要な項目が1-4(S評価以外)
▽B評価:是正が必要な項目が5-8
▽C評価:是正が必要な項目が9-20

充実段階の評価区分(S・A・B・Cの4段階)の基準値は、段階的に厳格化される(2018年分の基準値)

充実段階の評価区分(S・A・B・Cの4段階)の基準値は、段階的に厳格化される(2018年分の基準値)

 
【2019年】(2019年1月-12月)
▽S評価:評価点(各項目で獲得した点数の合計)92点以上、かつ是正が必要な項目ゼロ
▽A評価:是正が必要な項目が1-2(S評価以外)
▽B評価:是正が必要な項目が3-6
▽C評価:是正が必要な項目が7-20

【2020年】(2020年1月-12月)
▽S評価:評価点(各項目で獲得した点数の合計)92点以上、かつ是正が必要な項目ゼロ
▽A評価:是正が必要な項目が1(S評価以外)
▽B評価:是正が必要な項目が2-4
▽C評価:是正が必要な項目が5-20

充実段階の評価区分(S・A・B・Cの4段階)の基準値は、段階的に厳格化される(2019年分の基準値・上段と、2020年分の基準値・下段)

充実段階の評価区分(S・A・B・Cの4段階)の基準値は、段階的に厳格化される(2019年分の基準値・上段と、2020年分の基準値・下段)

充実度合いは4段階で評価、加算収入が増加する病院、減少する病院も発生

 
 この充実段階評価見直しに伴い、診療報酬上の加算も現在の「A評価:1日につき1000点、B評価:1日につき500点、C評価:加算なし」から、「S評価:1日につき1500点(救急体制充実加算1)、A評価:1日につき1000点(救急体制充実加算2)、B評価:1日につき500点(救急体制充実加算3)、C評価:加算なし」へと充実されました(関連記事はこちらこちら)。

 厚労省では、充実段階評価の見直しに関する試算も行っており、「2017年度の状況のまま、新たな充実段階評価を適用する」と、▼S評価:11施設(3.8%)▼A評価:241施設(84.8%)▼B評価:30施設(10.5%)▼C評価:2施設(0.7%)―となります。

もちろん、評価項目の見直しによって各病院の行動も変化するため、この通りとはなりませんが、一部病院では「S評価となって加算による収入が増加」し、一部の病院では「B評価やC評価となって加算による収入が減少する」ことになるでしょう。

なお、加算については、「2018年3月31日時点で届け出を行っている場合には、2019年3月31日まで当該加算を算定できる」旨の経過措置が設けられています。近く、2017年分(2017年1月-12月)の充実段階評価結果が明らかになりますが、多くの病院ではA評価となり、「1日につき1000点」の加算を引き続き算定できるでしょう。ただし、将来を考え、この1年間の間に体制等の見直しをきちんと行うことが肝要です。

救命救急センターの充実段階評価見直しに伴い、救命救急入院料の加算についても見直しが行われるが、病院経営への影響に鑑みた経過措置が置かれている

救命救急センターの充実段階評価見直しに伴い、救命救急入院料の加算についても見直しが行われるが、病院経営への影響に鑑みた経過措置が置かれている

 
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