医療法の看護師等配置標準を満たす病院、2015年度には99.3%―2015年度立入検査結果
2018.10.2.(火)
2015年度に医師配置の標準を満たしている病院は95.9%で前年度に比べて0.4ポイント改善した。看護師・准看護師については99.3%だが、地域別に見ると大きな格差がある―。
このような状況が、厚生労働省が9月27日に発表した2014年度・15年度の「医療法第25条に基づく病院に対する立入検査結果」から明らかになりました。メディ・ウォッチでは最新データとなる2015年度の状況に焦点を合わせて眺めてみます。
医師配置については年々改善しているが、今後の「働き方改革」の影響は・・・
都道府県都知事や、保健所設置市の市長、特別区の区長は毎年度、医療法第25条に基づいて医療機関に対する立入検査を実施し、人員配置・構造設備などが医療法の規定に適合しているかどうかをチェックしています。
2015年度は、全8482病院(当時)のうち8042病院に対して立入検査が行われ、実施率は94.8%(前年度から0.4ポイント上昇)となりました。
まず医師の配置状況を見てみましょう。
医療法では、▽一般病床は16対1▽療養病床は48対1▽100床以上などの精神病院では16対1―などの医師配置の標準が定められています。
この標準数を満たしているかどうかを見てみると、2015年度は7711施設・95.9%の病院でクリアしていることが分かりました。前年度に比べて0.4ポイント向上しています。2009年度以降の適合率を見ると、▼2009年度:90.0% → ▼2010年度:91.8% → ▼2011年度:92.5% → ▼2012年度:93.6% → ▼2013年度:94.5% → ▼2014年度:95.5% → ▼2015年度:95.9%—となっており、年々改善していることが再確認できました。
地域別に見ると、近畿(98.3%)や東海(98.0%)、関東(97.7%)では高いものの、北海道・東北では89.9%、北陸・甲信越では93.8、四国では95.3%と低く、地域間の格差があります。現在、「医師の働き方改革」に関する議論が進められており、医師にも時間外労働の上限を設定することとなっています(2023年適用予定)。「これまでの医療提供量を維持するためには、医師の増員が必要」との指摘もありますが、北海道・東北などでは、医療法標準を満たしていない病院が1割程度あり、この改革によって、さらに医療法標準を満たせない病院が増えてくる可能性なども考えられ、今後の動きが気になるところです(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちら)。
また病床規模別に見てみると、一般病院では▼500床以上:98.9%(前年度に比べて0.3ポイント低下)▼400-499床:97.9%(同0.6ポイント低下)▼300-399床:97.8%(同0.1ポイント上昇)▼200-299床:97.5%(同1.2ポイント上昇)▼150-199床:96.0%(同0.8ポイント上昇)▼100-149床:95.2%(同0.5ポイント上昇)▼50-99床:94.7%(同0.5ポイント上昇)▼20-49床:91.7%(同0.8ポイント低下)―となっています。大規模病院で医師確保に苦労し、中小規模の病院で医師確保に向けた注力がなされている状況が伺えます。やはり、働き方改革などで、どのような影響が出るのか、今後の動向に注目が集まります。
なお、一般病院の全体の95.5%にあたる6503病院では、医師を標準以上に配置していますが、その一方で、標準の50%に満たない医師しか配置できていない一般病院も7施設(0.1%)あります。この「標準数の半分未満の医師しか配置できていない」一般病院は、前年度に比べて1施設増加している点が気になります。
西日本で看護師等の確保に苦労している状況が伺える
次に、看護師・准看護師(以下、看護師等)の配置状況を見てみましょう。医療法では、▽一般病院の一般病床は3対1▽同じく療養病床は4対1(2017年度まで6対1を認める経過措置あり)▽特定機能病院は2対1―といった標準配置数が定められています(病棟)。
この適合状況を見ると、2015年度は99.3%の病院で医療法標準を満たしています。2009年度以降の適合率を見ると、▼2009年度:99.2% → ▼2010年度:99.4% → ▼2011年度:99.4% → ▼2012年度:99.0% → ▼2013年度:98.8% → ▼2014年度:99.3% → ▼2015年度:99.3%—となっています。
地域別に前年度からの適合率の推移を見ると、▼東海(0.3ポイント低下)▼四国(0.3ポイント低下)▼近畿(0.1ポイント低下)—と、西日本で低下しており、看護師等確保に苦労している状況が伺えます。なお、「2014年度には、北海道・東北、東海を除く全国で、前年度に比べて適合率が低下していた」点を踏まえると、やや看護師等確保環境が「やや改善しているのではないか」と見ることもできそうですが、2016年度以降の状況を慎重に分析する必要があるでしょう。
なお、適合率の高い地域は▼九州(99.7%)▼北海道・当方(99.6%)—、逆に低い地域は▼四国(98.6%)▼北陸・甲信越(99.0%)—となっています。
病床規模別に見ると、一般病院では▼500床以上:100.0%(前年度から増減なし)▼400-499床:99.6%(同0.4ポイント低下)▼300-399床:99.8%(同増減なし)▼200-299床:99.9%(同増減なし)▼150-199床:100.0%(同0.3ポイント上昇)▼100-149床:99.5%(同増減なし)▼50-99床:98.5%(同0.1ポイント低下)▼20-49床:98.4%(同0.3ポイント低下)―となっています。中小規模の病院において、看護師等確保に苦戦している状況が再確認できます。
なお、一般病院の99.2%にあたる6752病院では、看護師等を標準以上に配置しています。2014年度には「標準の50%に満たない看護師等しか配置できていない」病院が3施設ありましたが、2015年度には解消しています。ただし、標準の60%未満の看護師等配置となっている一般病院は1施設あり、早期の対策が待たれます。
薬剤師配置も年々改善、ただし中国や北海道・東北で確保に困難も
薬剤師については、医療法上、▽一般病院の一般病床は70対1▽同じく療養病床は150対1▽特定機能病院は30対1―などといった標準配置数が定められています(病棟)。
この適合状況を見てみると、2015年度は96.3%の病院で医療法標準を満たしていることが分かりました。前年度と比べて、0.1ポイント改善しています。薬剤師配置も医師と同じく年々改善していることが分かります。
地域別に見ると、▼北陸・甲信越(前年度に比べて0.3ポイント低下)▼四国(同0.2ポイント低下)▼九州(同0.8ポイント低下)—で、前年度よりも適合率が悪化しています。適合率が高いのは▼近畿(98.7%)▼東海(97.6%)—、低いのは▼九州(93.9%)▼北海道・東北(94.6%)—という状況です。
病床規模別に見ると、一般病院では▼500床以上:99.2%(前年度に比べて0.3ポイント上昇)▼400-499床:98.9%(同増減なし)▼300-399床:98.6%(同0.2ポイント上昇)▼200-299床:98.5%(同0.3ポイント上昇)▼150-199床:97.2%(同0.5ポイント上昇)▼100-149床:96.7%(同増減なし)▼50-99床:96.8%(同0.1ポイント上昇)▼20-49床:93.4%(同0.5ポイント上昇)―となっており、病床規模に関わらず薬剤師確保に力を入れている状況が伺えます。
なお、病院全体で法令遵守の度合いが芳しくないのは、低い順に(1)職員の健康管理(適合率92.6%)(2)医薬品安全管理責任者による手順書に基づく業務の定期的な確認の実施(同94.6%)(3)医療法許可の変更(同95.5%)(4)医師数(同95.9%)(5)医薬品の管理(同96.3%)(5(同率))薬剤師数(同96.3%)―などといった項目です。
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