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診療報酬改定セミナー2024 新制度シミュレーションリリース

2040年度を見据えた「さらなる社会保障改革」が必要—社保審

2021.2.2.(火)

少子高齢化がさらに進行する2040年度を見据えて、全世代型社会保障検討会議の最終報告がまとまり「一定所得以上の後期高齢者における窓口2割負担」「大規模な紹介中心型病院における紹介状なし患者の特別負担増」などが行われるが、これにとどまることなく、2040年度を見据えて、さらなる社会保障制度改革を進める必要がある—。

1月29日に開催された社会保障審議会において、こういった議論が行われました。なお、新たな社会保障審議会長に田中滋氏(埼玉県立大学理事長・慶應義塾大学名誉教授)が選任されています。田中会長は、Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンの顧問でもあります。

新型コロナ対策、都道府県による「市町村支援」の充実を求める声も

社会保障審議会は、我が国の「社会保障制度を総合的な視点で議論する」場です。医療保険や介護保険、公的年金制度、福祉施策、少子化対策などの個別の社会保障制度に関する議論は下部組織である部会等で詳細に検討され、親組織である社会保障審議会では、これら制度全体のあるべき姿などを高所大所から検討します。

1月29日に会合では、厚生労働省から「全世代型社会保障検討会議の最終報告」と「2021年度厚労省予算案」について報告が行われ、これ関する自由討議が行われました。

2019年10月に消費税率が10%に引き上げられたことで、2025年度を見据えた「社会保障・税一体改革」が完了しました。2022年度から、いわゆる団塊の世代が後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が75歳以上に到達することから、今後、急速に医療・介護ニーズが増大すると考えられます。このため「社会保障の充実」が必須の課題となり、その財源を確保するために「消費税率の引き上げ」が行われたのです。

2025年度以降は、高齢者の増加ペース自体は鈍化しますが(数自体は増えない)が、現役世代人口が急速に減少していく)などにより、我が国の医療保険財政は今後、厳しくなっていくことが確実です。このため政府は「2040年度を見据えた、全世代型の社会保障改革」に向けた議論を進めてきました。

2040年度を見据えた社会保障の課題(社会保障審議会2 210129)

2040年度を見据えた社会保障の見通し(社会保障審議会2 210129)



医療に関しては、Gem Medでお伝えしているように「一定所得以上(課税所得28万円以上かつ年収200万円以上など)の後期高齢者は、医療機関等の窓口負担を2割に引き上げる」(配慮措置あり)、「一般病床200床以上の『紹介中心型病院』(基準等は今後検討)を紹介状なしに受診した患者では、初・再診の一部を保険給付から除外し、その分を特別負担(定額負担)に上乗せ徴収する(初診では7000円程度以上)」などの制度改正が行われます(関連記事はこちら)。

特別負担額を引き上げ、初・再診料相当額を保険から控除する方向が示されている(医療保険部会 201202)

2割負担導入の財政効果(医療保険部会1 201217)



この点、社保審委員からは「さらなる改革が必要である」との指摘が相次いでいます。

例えば、小堀秀毅委員(日本経済団体連合会審議員会副議長・社会保障委員長)や武田洋子委員(三菱総合研究所シンクタンク部門副部門長兼政策・経済センター長)らは「我が国の社会保障制度は、高齢者給付に偏りがあり、現役世代の負担が重くなるというアンバランスがある。これを是正する今回制度改正案には一定の評価ができる。2040年度を見据えて、引き続き制度改革を進めるべき」と強く要請。

また、改革の進め方について今村聡委員(日本医師会副会長)は「大きな制度改革においては、当初想定できていなかった課題が浮上する可能性もある。現場の理解を得ながら、丁寧な説明、十分な支援を行って、制度改革を進める必要がある」とコメントしています。



また、猛威を振るう新型コロナウイルス感染症について、2021年度予算案・2020年度予算の第3次補正でさまざまな対策がとられています。この点、基礎自治体の長であり、医師でもある立谷秀清委員(全国市長会会長、福島県相馬市長)らは「例えばワクチン接種に関して、クリニック等の中には協力してくれないところも多く、医師確保に苦労する。都道府県の協力・支援を強く求めたい」と要望。

これは、在宅医療・介護連携についても同じ課題があります。自治体から個別医療機関に協力を求めることも、もちろん重要ですが、「医師会」等への協力依頼が効率的かつ効果的です。しかし、基礎自治体である市町村の中には、郡市区医師会との連携関係が不十分なところもあり、厚労省は「都道府県医師会とすでに連携関係を構築できている都道府県の支援が重要である」ことを強調しています。ワクチン接種をはじめとする新型コロナウイルス感染症対策でも、都道府県による「市町村支援」や「医師会との仲介」などに期待が集まります。

この点に関連して都道府県代表として参画する平井伸治委員(全国知事会社会保障常任委員会委員長、鳥取県知事)は「国による都道府県へのさらなる支援」を要請していますが、国・自治体(都道府県、市町村)、医療関係団体(病院会や医師会など)が、今以上に一体となることが必要でしょう。



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