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GemMed塾 看護モニタリング

21年10月から医師の立ち合いなく乳がん集団検診実施可、「マンモ避けるべき者」など事前質問で抽出―がん検診あり方検討会(2)

2021.8.13.(金)

この10月(2021年10月)から、医師の立ち合いなく乳がん集団検診(マンモグラフィ)を実施することが可能となる。その際、「マンモグラフィ検査を避けるべき者」(豊胸術実施者・ペースメーカー装着者・V-Pシャント施行者)などを適切に把握するために、「診療放射線技師による質問票の様式例」などを示しておく―。

子宮頸がん検診の受診率が低調であるが、大学と自治体が連携して受診率向上に取り組んではどうか―。

8月5日に開催された「がん検診のあり方に関する検討会」(以下、検討会)では、こういった議論も行われました。

医師の立ち合いなく乳がん検診可能だが、巡回車には医師静注が求められる点に留意

乳がん検診については、これまでに次のような大きな見直しが行われ、現在では「40歳以上の女性に、マンモグラフィによる検診を原則とする」こととなっています。

▼50歳以上について問診・視触診・マンモグラフィによる検診を原則とする(2000年)

▼40歳以上について問診・視触診・マンモグラフィによる検診を原則とする(2004年)

▼40歳以上について「マンモグラフィ」による検診を原則と、「視触診」は推奨しない(2016年)

この点、▼「視触診」が推奨されなくなったこと▼地方自治体から「医師確保が困難なために乳がん集団検診の実施が困難になっている」との声が強いこと▼乳がん検診の3割超が「子宮頸がん検診などの医師の立ち合いが必要な検査」とは別個に行われていること―などを踏まえ、診療放射線技師法等を改正し、乳がん集団検診(マンモグラフィ)において医師の立ち会いを不要とすることなりました。

改正法令が、この10月(2021年10月)に施行されることから、厚労省では「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」の改正作業にも着手。そこでは、(1)上述のとおり「乳がん集団検診(マンモグラフィ)において医師の立ち会いを不要とする」(2)「医師による問診」に代えて、「診療放射線技師による質問」を十分に行う」(3)ブレスト・アウェアネス(自身の乳房の状態に関心を持つ生活習慣)の普及に努める(4)その他の技術的修正を行う―という見直しが検討されています。

「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」の新旧対照案



まず(1)は、上述したとおり「医師の確保が困難な地域でも、乳がん検診を実施する」ことを目指すものです。

ただし、今般の改正内容は「検査において、医師の立ち合いを不要とする」もので、いわゆる巡回検診車については、「医療機関であり、僻地などを除き、医師が常駐しなければならない」という点に変わりはない点に留意が必要です。この点の誤解が生じないよう、厚労省で指針改正内容を工夫していくことになります。



また、(2)では、診療放射線技師が適切な質問を行えるよう、「質問様式例」が示されます。具体的には、▼今までに乳がん検診(マンモグラフィ)を受けたことがあるか、受けたことがある場合には、どこで、いつ受け、その結果はどうであったか▼乳房の病気にかかったことはあるか▼血縁者に乳がんになった人はいるか▼現在「しこり」「いたみ」「乳頭分泌」などの症状があるか▼月経はあるか▼現在、妊娠(可能性を含む)しているか▼「豊胸術実施者」「ペースメーカー装着者」「V-Pシャント施行者」であるか―を聞くことになります。

医師の立ち合いなき乳がん検診においては、診療放射線技師が質問票に基づいて「マンモを避けるべき者」などを適切に判断することが求められる(がん検診の在り方に関する検討会(2)1 210805)



乳がん検診質問用紙(様式例)、乳がん検診実施計画書(様式例)

例えば、最後の質問から「豊胸術実施者」「ペースメーカー装着者」「V-Pシャント施行者」であることが判明すれば、「乳がん検診を避ける」という判断すうことになります。

この点、がん患者代表として参画する若尾直子構成員(NPO法人がんフォーラム山梨理事長)は「家族歴について、情報漏洩などを心配する被検者も少なくないと思う。個人情報保護が十分にされること、それが被検者に明確に分かるように工夫すべき」と指摘しています。

乳がんや卵巣がんに罹患しやすい遺伝子変異のあることが分かっており(いわゆるHBOC)、2020年度の診療報酬改定では「保険診療の中で、予防的に臓器切除を行う」ことを認めるなど、画期的な対応も図られています(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。血縁者に乳がん罹患者がいれば、本人が乳がんに罹患している可能性も高くなることから、「家族歴」の質問・把握は非常に重要です。ただし、極めて機微性の高い情報であり、若尾委員の指摘どおり「個人情報の保護」に十分配慮すること、被検者が「情報は保護される、安心して検査を受けられる」と感じられる環境を整えることも極めて重要です。



なお、「胃がん検診」について、受診を特に推奨する者を「50歳以上69歳以下」(胃部エックス線検査は40歳以上も可)とする技術的見直しが検討されていますが、「分かりやすくするために、かっこ書きの(胃部エックス線検査は40歳以上も可能)という部分を削除する」こととなっています。

意見を踏まえて、指針改正作業が進められます。

「がん検診の評価手法」改訂に向けた研究進む

がん検診についても、他の事業と同じく「事後の検証」が重要です。問題点がないか、あるとすれば、それはどこで、どう改善していくかを検討し、実際に改善を繰り返していくことが極めて重要です。

この点、検診事業の検証(事後評価)は、2008年の「今後の我が国におけるがん検診事業評価の在り方について 報告書」に基づいて実施されていますが、報告書、つまり「評価の手法や内容」については13年間改訂がなされていません。

13年の間には、技術革新も進み、ベースとなる「がん対策推進基本計画」の見直しも重ねられています。そこで厚生労働省は、「がん検診の評価方法の見直し」を行うための研究班を設置。今般、研究班の代表である高橋宏和参考人(国立がん研究センター「社会と健康研究センター検診研究部」室長)から、まず「都道府県における評価の在り方」に関する研究状況が報告されました。

都道府県は、▼県内全体のがん検診について事業評価を行う▼検診を実施する市区町村や検診機関に評価結果をフィードバックし、助言等を行う▼住民に対し評価結果を公表する―という役割を担います。

この役割を適切に担えるよう、都道府県のチェックリスト改訂に向けた研究が進められています。例えば、「都道府県が把握困難な事項については、市区町村・検診機関・医師会などの関係機関と連携して回答する」「要精検率や精密検査受診率について『把握』にとどまらず『集計』することを求める」などの項目見直し・追加が行われる見込みです。



ところで、現在のチェックリストでは「陽性反応適中度の把握」を求めています。陽性反応適中度とは、「精密検査が必要である」とされた者のうち、「実際に『がん』であった者」の割合のことです。研究班では「対象集団の疾患存在割合に依存し、陽性反応適中度の高低をもって、検査精度の良し悪しを判断することはできない。検査精度・検査の質の向上に、この指標は適さない」という意見が多く、改訂案では「削除する」方針が示されています。

しかし、大内憲明座長(東北大学大学院医学系研究科客員教授、東北大学名誉教授)は「削除には疑問を覚える」とし、再考を要請しています。

大学と自治体が連携し、子宮頸がん検診の受診率向上を目指してはどうか

また、がん検診で、極めて重要な要素の1つに「多くの住民、国民が受診する」という点があります。どれほど検診の精度が向上しても「検査を受ける人が少ない」状況では、死亡率の低下にはつながらないためです。

厚労省では、受診率向上に向けて▼個別の受診勧奨・再勧奨を行う▼子宮頸がん検診・乳がん検診の初年度対象者にクーポン券を配布する▼精密検査未受診者に対する受診再勧奨を行う―などの取り組みを進めていますが、「とりわけ子宮頸がん検診で、クーポン券利用が低調である」といった課題もあります。

がん検診の受診率向上に向けて、国はクーポン券配布財源の確保などを行っている(がん検診の在り方に関する検討会(2)2 210805)

子宮頸がん検診においては、クーポン券の利用は低調である(がん検診の在り方に関する検討会(2)3 210805)



この背景として、「クーポン券を配布された20歳の女性が、がん検診の必要性等を十分に認識していない」「居住地と住民票が異なる等の理由により、クーポン券が本人の手元に届いていない」ことが考えられ、構成員からは「大学との連携を強化していくべき」との意見が数多く出されました。

「大学進学で実家から離れるが、住民票を移していない」ケースが少なくなく、これが「クーポン券が届かない」一因になっていることは十分に考えられます。また、大学教育の中で「がん検診の重要性」を説くことで、少しでも「検診を受けてみよう」と思う人が増えることは極めて重要です。

また「クーポン券は高等学校卒業時に配付し、それを20歳になった時に使えるようにする」などの工夫を求める声も出ています(中川恵一構成員:東京大学大学院医学系研究科特任教授、がん対策推進企業アクションアドバイザリーボード議長)。

こうした意見を踏まえて、検診受診率向上策を様々な角度からとることが重要でしょう。



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