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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

2024年度診療報酬改定、本体プラス0.88%だが、物価高騰を考慮すれば「不十分」―内保連・外保連・看保連

2024.3.11.(月)

2024年度の診療報酬改定は、本体「0.88%のプラス改定」となったが、物価高騰などを考慮すれば「十分」とは言えない。できれば2%、最低でも1%に乗せてほしかった—。

学会からの医療技術提案が十分に採択されず、厳しい改定内容と言える—。

内科系学会社会保険連合(内保連)・外科系学会社会保険委員会連合(外保連)・看護系学会等社会保険連合(看保連)は3月5日に「三保連合同シンポジウム」を開催し、2024年度診療報酬改定を受けてこうした見解を明らかにしました。

2024年度診療報酬改定を受けた三保連シンポ2(向かって左から内保連の小林弘祐理事長北里研究所理事長)、外保連の岩中督会長(埼玉県病院事業管理者)、看保連の山田雅子代表理事(聖路加国際大学教授))

2024年度診療報酬改定を受けた三保連シンポ2(向かって左から外保連の瀬戸泰之会長補佐(東京大学大学院医学系研究科消化管外科学・乳腺内分泌外科学教授)、看保連の酒井郁子副代表理事(千葉大学大学院教授)、内保連の待鳥詔洋副理事長(国立国際医療研究センター国府台病院放射線科診療科長))

学会による「医療技術」の提案が十分採択されず、厳しい改定内容である

厚生労働省が3月5日に、2024年度診療報酬に関する関係告示の公布・通知の発出を行い、ついに2024年度資料報酬改定の詳細な内容までが固められました(関連記事はこちら

これを受けた三保連シンポでは、改定内容に対する評価・見解が示されました。

まず「改定率」等について見てみましょう。昨年(2023年)12月20日の武見敬三厚生労働大臣・鈴木俊一財務大臣折衝により次のように改定率が設定されました(関連記事はこちら)。

▽診療報酬本体について「プラス0.88%の引き上げ」を行い、その内訳は次のとおり
(a)いわゆる「実質的な本体改定」部分:プラス0.46%(この中に「40歳未満の勤務医・勤務歯科医、薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所に勤務する歯科技工士などの賃上げに資する措置分」(プラス0.28%程度)が含まれる)

(b)看護職員、病院薬剤師、その他の医療関係職種の処遇改善(賃上げ)部分:プラス0.61%

(c)入院時の食費引き上げ部分:プラス0.06%

(d)適正化部分:マイナス0.25%



本体改定率の推移を見ると、▼2016年度:プラス0.49%以▼2018年度:プラス0.55%▼2020年度:プラス0.55%▼2022年度:プラス0.43%▼2024年度:本体プラス0.88%となり、「昨今で大きなプラス改定」と見ることもできそうです。

しかし三保連では、「光熱水費等が急騰しており、医業収益の1%を占める上昇幅となっている。そこを勘案すれば『プラス2%』程度の引き上げが必要であった。物価上昇分について補助金等での対応が必要である。さもなくば、地方で患者数が少なく、診療報酬収入に限界がある病院では経営の危機が訪れることになる」(外保連の岩中督会長:埼玉県病院事業管理者)、「消費者物価指数の上昇に鑑みれば、せめて『プラス1%』に乗せてほしかった。材料費等が上がっている点を踏まえれば、実質的なドクターズフィー分は『マイナス』になっている」(内保連の待鳥詔洋副理事長:国立国際医療研究センター国府台病院放射線科診療科長)と厳しい見方をしています。

また物価上昇に対応するために「診療報酬にも物価スライドを導入すべき」(内保連の小林弘祐理事長:北里研究所理事長)との提言もなされています。



また、具体的な改定内容、とりわけ「医療技術」に関しては次のような見解が示されました。

▽外保連からの技術提案の採択率は新規技術で26%(139技術中36を採択、2022年度改定時に比べて12ポイント低下、2020年度改定時に比べて13ポイント低下)、既存技術で23%(182技術中42を採択、同じく2ポイント低下、19ポイント低下)という非常に厳しいものであった(外保連の瀬戸泰之会長補佐:東京大学大学院医学系研究科消化管外科学・乳腺内分泌外科学教授)

▽内保連からの技術提案の採択率は新規技術で8%、既存技術で21%、全体で16%という厳しい状況であった(内保連の待鳥副理事長)

▽看保連からの技術提案については、新規技術6項目提案のうち1項目を準採択(ACP支援管理料を提案したが入院基本料通則に盛り込まれた)、既存技術13項目提案のうち2項目を採択(乳腺炎重症化予防ケア・指導料2の新設、ストーマ処置合併症加算の新設)にとどまった(看保連の山田雅子代表理事:聖路加国際大学教授)



医療技術の保険導入にあたっては、「安全性・有効性に関するエビデンスが構築されているか」という視点で、中央社会保険医療協議会で審査が行われます。今後もレジストリ活用などにより「安全性・有効性に関するエビデンス」を構築し、優れた医療技術の保険導入に向けた取り組みが積極的に行われることに期待が集まります(その成果は患者・国民が享受できる)。この点について外保連の岩中会長は「今後、データをもとにした『診療報酬の透明化』の動き(●●の効果があるので◆点を増点するなど)が進むと思う。その点に重点を置いて、患者のためになる医療を適正価格で提供する動きを強化していく」と強調しています。

急性期一般1(7対1)の死守が得策でない病院も出てくる、新病棟移行など検討せよ

また、技術以外の改定内容については、例えば「生活習慣病管理の報酬体系が大きく見直され、【生活習慣病管理料(I)(II)】では『学会の診療ガイドラインに沿う』ことが要件化された。学会の取り組みを評価するものと言えるが、『評価の引き下げ』に使われたイメージもある。今後、ガイドラインを診療報酬に盛り込むにあたっては、事前に学会に相談していただき、適切な要件設定をしてほしいと考えている。また技術にも関連するが、詳細な点がステークホルダー(中医協委員など)に十分に届いていないことも考えられ、今後、細部を十分に伝達していくことが重要と考えている」(内保連の待鳥副理事長)との意見が出されたほか、「管理料の新設を提案したが通りにくくなっている。今後は、既存点数の要件・施設基準の中に新たな考え方を盛り込む手法も重要ではないか」との声も出されました。

他方、「医療DXに関する加算が新設され、点数は低いものの、電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスの導入を進めよとのメッセージが伺える。当初は経過措置があり取得しやすいが、後にしっかりとDX対応を進めていかなければならない点に留意が必要である」(内保連の小林理事長)との意見も出されました。

さらに、新設された高齢の救急患者に包括的な対応を行う新病棟【地域包括医療病棟入院料】については、「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度が厳格化され、病院の規模や体制によっては『急性期一般1の死守』が得策ではなくなってくる。その際の移行先として新設された【地域包括医療病棟入院料】は重要な選択肢となる。急性期一般1から地域包括医療病棟への移行を真剣に考える必要がある」(内保連の小林理事長)、「急性期一般1から地域包括医療病棟への移行が推進されると思うが、高齢者救急の体制は地域で異なっており、状況を十分に注視していく必要がある」(外保連の岩中会長)と冷静な見方をしています。

なお内保連の小林理事長は、一般病棟用の重症度、医療・看護必要度について、「専門的な処置の一部(注射剤の麻薬使用など)がA3点となり、それだけで看護必要度に該当することとなった。内科系にも配慮しており、個人的には評価できる見直し内容である」ともコメントしています。



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