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GemMed塾 看護モニタリング

「多くの自治体病院は過疎地に所在し、地域の医療・介護提供体制確保の要である」点を重視して、新たな地域医療構想考えよ―全自病・小熊会長

2024.5.28.(火)

2040年頃を念頭におく新たな地域医療構想に関する議論が進んでいる。そこでは「多くの自治体病院が医療資源の乏しい過疎地に所在し、自治体病院が高度急性期機能からかかりつけ医機能までを幅広く確保・実施し、地域の医療・介護提供体制確保の要となっている」点を重視しなければならない—。

全国自治体病院協議会の定例記者会見が5月23日に開催され、小熊豊会長(砂川市立病院名誉院長)ら幹部から、こうした考えが改めて強調されました。小熊会長が近く(5月末予定)、「新たな地域医療構想等に関する検討会」で意見陳述を行う見込みです。

5月23日の全国自治体病院協議会定例記者会見に臨んだ執行部。向かって左から田中一成副会長(静岡県立病院機構理事長)、望月泉副会長(岩手県立中央病院 名誉院長・岩手県八幡平市 病院事業管理者)、小熊豊会長(砂川市立病院名誉院長)、竹中賢治副会長(熊本県・天草市病院事業管理者)、松本昌美副会長(奈良県・南和広域医療企業団南奈良総合医療センター院長)

医療DXは推進しなければならないが、入口となるマイナ保険証利用には様々な障壁

2040年頃を念頭においた「新たな地域医療構想」策定論議が検討会で進んでいます(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

2025年度には団塊世代がすべて75歳以上の後期高齢者に達することから、急速な医療ニーズの増加・複雑化に対応できる効果的・効率的な医療提供体制を地域ごとに構築するため、【地域医療構想】の実現が求められています(関連記事はこちら)。

さらに2025年以降は、高齢者人口そのものは大きく増えない(高止まりしたまま)ものの、▼85歳以上の高齢者比率が大きくなる(重度の要介護高齢者、認知症高齢者の比率が高まる)▼支え手となる生産年齢人口が急激に減少していく(医療・介護人材の確保が極めて困難になる)—ことが分かっています。少なくなる一方の若年世代で、多くの高齢者を支えなければならず、「効果的かつ効率的な医療提供体制」の構築がますます重要になってきます。

また、こうした人口構造の変化は、地域によって大きく異なります。ある地域では「高齢者も、若者も減少していく」ものの、別の地域では「高齢者も、若者もますます増加していく」、さらに別の地域では「高齢者が増加する一方で、若者が減少していく」など区々です。

そこで、2025年以降、2040年頃までを見据えた「医療提供体制の新たな設計図」(ポスト地域医療構想、新地域医療構想)作成に向けた議論が進められているのです(関連記事はこちら)。



この点について、小熊会長は次のような見解を改めて強調しました。

▽いわゆる「消滅可能性自治体」が全体の4割あるが、そこでは「人口減が著しい」状況があり、結果、医療・介護提供体制確保にも大きな影響がある。自治体病院の多くはそうした地域に所在しており、医療・介護提供体制確保に向けて自治体病院はしっかりと対応しなければならない

多くの自治体病院が人口規模の小さな自治体に所在している



▽将来を見据えた正しい医療・介護のデータをもとに、必要となる医療・介護の提供量・体制を予測したうえで、新たな地域医療構想を考えていかなければならない

▽現在の地域医療構想調整会議では「旗振り役」が明確でない。新たな地域医療構想では、地域の議論をまとめていくための「旗振り役」を地域で明確にする必要がある。そのために、まず都道府県・市町村・国の、それぞれの役割を明らかにし、皆で協力して改革を進めていく必要がある

▽地域の医療・介護提供体制を考えるうえでは「かかりつけ医機能の明確化、強化」が必須となる。しかし、都市部では「平日の9時から17時までのみ診療し、土日・祝日は稼働しない」というクリニックが自由開業制の下で増えるが、一方で過疎地域・地方では医療従事者の確保もままならない中で、既存スタッフが死に物狂いで働いている。医師偏在の解消を含めて、こうした状況の改善が必要ではないか。

▽人口の少ない地域では、そもそも医療資源そのものも少ない。このため400床クラスの病院であっても、「紹介状なし患者」を多く受け入れ(紹介してくれるクリニック・中小病院が存在しない)、症状の軽快した患者の「逆紹介」を行うこともできず(逆紹介を受けてくれるクリニック・中小病院が存在しない)、結果、地域医療支援病院の指定を受けられず(地域医療支援病院の指定を受けるためには紹介率・逆紹介率の基準を満たさなければならない)、結果、収益にも大きなデメリット(地域医療支援病院入院診療加算の取得などができない)が生じてしまう。一方で、都市部では規模の大きな高度急性期病院でも救急対応が十分でないというケースもある。こうした不公平への対応も検討すべきである

地域医療支援病院の指定を受ける自治体病院の割合は、人口規模の小さな自治体で非常に低い

大病院でも地域医療支援病院の指定を受けられない背景には「地域の医療資源の乏しさにより、紹介率・逆紹介率を確保できない」点がある



小熊会長は、こうした意見を整理し、近く(5月末予定)、「新たな地域医療構想等に関する検討会」で意見陳述を行う予定です。



このほか、5月23日の会見では、▼医療DXを推進することが極めて重要であるが、その入り口となるマイナ保険証(マイナンバーカードによる医療機関受診)が進んでいない。マイナ保険証対応をするためには、病院のシステム改修など多大なコストがかかり、またマイナ保険証による受診者に対応するためのスタッフ確保が求められ、この点でもコストがかかる。一方で、マイナ保険証受診者では診療報酬が低く設定されており(【医療情報取得加算】(従前の医療情報・システム基盤整備体制充実加算から改組、マイナ保険証受診者の負担を抑えるために保険証受診では初診時3点、マイナ保険証受診では同じく1点に設定)、病院側には厳しい状況になっている▼医師偏在解消に向け、「専門医資格を得るための研修において、地方での一定期間研修・従事を義務付ける仕組みの充実」「すべての医療機関において、院長・管理者に『一定期間の地方での勤務』を要件化する仕組みの創設」なども検討していく必要がある▼公立病院に対し「経営マインドの強化」を求める声があるが、そもそも公立病院は「民間病院が手を上げない不採算医療をしっかり担っている」点、「医師以外の医療従事者にも相応の給与水準を確保している」点なども考慮すべきである—といった声が小熊会長はじめ、全自病幹部から出されました。



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