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ヒュミラ皮下注40mg、「既存治療で効果不十分なX線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎」治療に保険診療の中で使用可―厚労省

2024.8.6.(火)

若年性特発性関節炎や重症の潰瘍性大腸炎などの治療に用いる「アダリムマブ(遺伝子組換え)」(販売名:ヒュミラ皮下注40mgシリンジ0.4mL、同皮下注40mgペン0.4mL)について、新たに「既存治療で効果不十分なX線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎」治療にも用いることを保険診療の中で認める―。

厚生労働省は8月2日に通知「公知申請に係る事前評価が終了した医薬品の保険上の取扱いについて」を発出し、こうした点を明らかにしました。同日(2024年8月2日)から保険適用範囲が拡大されています(厚労省サイトはこちら)。

保険診療の中で「ドラッグ・ラグ」に強力に対応する特別ルール

従前、我が国において医薬品の承認・保険適用手続きが複雑で時間がかかることを原因といた「ドラッグ・ラグ」(欧米の先進諸国で使用できる医療用医薬品が我が国で保険診療において使用できない)が問題視されました(現在、新たな、別の形での「ドラッグ・ラグ」が問題視されている、関連記事はこちら)。

日本国民が最新の医療技術にアクセスしにくい状況を放置することはできず、例えば「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において、我が国では未承認・適応外となっているが医療上の必要性の高い医薬品について製薬メーカーに開発要請を行うなど、ドラッグ・ラグ解消に向けた取り組みが進められています。

また、未承認・適応外薬の開発促進に向けて、2010年度の薬価制度改革で【新薬創出・未承認薬解消等促進加算】を創設し、2018年度の薬価制度抜本改革でこれを制度化。その後の薬価制度改革でも加算の見直しを続けています。

さらに、医療保険制度からドラッグ・ラグ解消に強力にアプローチするために、2010年8月25日の中央社会保険医療協議会・総会で「医薬品の適応外使用について、薬事・食品衛生審議会の事前審査で『公知申請を行っても差し支えない』と判断された場合には、その翌日から自動的に保険適用を行う」という特別ルールが創設されました。

保険診療では、安全性・有効性を確保するために、医薬品は「効能・効果が認められた(=安全性・有効性が確認された)傷病の治療」以外に用いることはできません。仮にその他傷病の治療に用いれば保険外診療(自由診療)となり、当該一連の治療全体が全額患者負担となるのが原則です。「この医薬品は異なる傷病の治療に効果があるのではないか」と考えられる場合には、治験などを実施して有効性・安全性に関するデータを揃え、薬食審で効能・効果追加の承認を得ることが原則です。限られた公的財源(保険料、税)の中で、安全性・有効性が確認されていない治療を認めることは好ましくないためです。

もっとも、治験等を実施してエビデンスを構築し、審査が完了する(=効能・効果追加が認められる)までには相当の時間が必要です。このため、上記原則をあまりに厳格に適用すれば「今まさに疾病と闘っている患者」が最新の医療技術(医薬品)にアクセスするチャンスが大きく阻害されてしまいます(事実上、我が国では最新医療技術(医薬品)にアクセスできないことになってしまう)。

これでは「傷病と闘う患者にあまりに酷」であることから、中医協において「医療保険の原則」と「最新の医療技術へのアクセス」とのバランスに配慮して上記特別ルールが創設されました。▼適応外使用であれば、既に「人体への安全性」は審査済である▼海外の論文など(公知)で一定の有効性・安全性が確保され、それをもとに薬食審の事前審査で「公知申請を認めて良い」と判断された場合には、必ず後に効能・効果追加が認められている—ことなどに鑑みたものです。本特例ルールにより「公知申請を認めてよいとの事前審査から、実際に効能・効果追加が行われるまでの期間」分(概ね6か月程度とされる)、保険収載を前倒しすることが可能となります(ドラッグ・ラグの短縮)。



今般、この特別ルールにより次の医薬品について、新たな効能・効果が認められることになりました(保険診療の中での適応外使用が認められる)。

●アダリムマブ(遺伝子組換え)(販売名:ヒュミラ皮下注40mgシリンジ0.4mL、同皮下注40mgペン0.4mL)

【現在認められている効能・効果】
▽既存治療で効果不十分な、▼多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎▼中等症または重症の潰瘍性大腸炎の治療(既存治療で効果不十分な場合に限る)▼関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)▼化膿性汗腺炎▼壊疽性膿皮症—
▽既存治療で効果不十分な、▼尋常性乾癬、乾癬性関節炎、膿疱性乾癬▼強直性脊椎炎▼腸管型ベーチェット病—
▽非感染性の中間部、後部または汎ぶどう膜炎
▽中等症または重症の活動期にあるクローン病の寛解導入および維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)

【新たに認められる効能・効果】
▽既存治療で効果不十分な「X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎」

【新たに認められる効能・効果における留意事項等】
▽過去の治療において、既存治療薬(非ステロイド性抗炎症薬等)による適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな臨床症状及び炎症の客観的徴候が認められる場合に投与する

▽通常、成人にはアダリムマブ(遺伝子組換え)として40mgを2週に1回、皮下注射する(新たに認められる効能・効果における用法・用量)



脊椎関節炎治療の選択肢が広がると期待されます。



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