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「金額ベースの後発品使用目標」を検討、白内障手術・化学療法について強力に外来移行を進めよ—社保審・医療保険部会(1)

2023.6.30.(金)

2024年度からの新たな「医療費適正化計画」においては、「風邪や急性下痢症への抗菌剤投与を半減する」「白内障手術や化学療法などの外来移行を、全国平均を目指して進める」ことを盛り込み、各都道府県で実施してもらう—。

後発医薬品の使用促進に向けて、新たに「金額ベースの目標値」を検討していく—。

6月29日に開催された社会保障審議会・医療保険部会において、こういった内容を盛り込んだ「医療費適正化に関する施策についての基本的な方針」がまとめられました。7月中旬に厚生労働省が告示等を行い、この基本方針をもとに各都道府県で来年度(2024年度)に医療費適正化計画を立て・実行していくことになります。同日の医療保険部会では「オンライン資格確認」「NDBデータの利活用促進」も議題となっており、別稿で報じます。

6月29日に開催された「第165回 社会保障審議会 医療保険部会」

毎年度「薬価が変動する」中で、どのように金額ベースの目標値を定めるのか・・・

医療保険部会では、▼出産育児一時金を引き上げる▼高齢者にも一時金の一部を担ってもらうなどのために医療保険料負担を引き上げる▼医療費適正化計画を充実させる—などを内容とする医療保険改革案)をまとめ、これをもとにした「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」が成立しています(関連記事はこちら)。

このうち「医療費適正化計画」については、各都道府県において▼6年後(計画満了時)の医療費適正化の見込み(医療費の伸びをどれだけ抑えられるか)▼医療費適正化を実現するための方策(特定健診・保険指導の推進、糖尿病の重症化予防、後発医薬品の使用促進、地域医療構想の実現など)―を計画に落とし込み、実行を求めるものです(2008年度からスタート)。



医療技術の高度化(1億円を超える薬剤の保険適用など)、高齢化の進展などにより「医療費は膨張」を続けていきます。その一方で、主な費用負担者である現役世代は減少していくため、「医療費の伸びを抑える」ことが、医療保険制度の安定・維持のために必要不可欠となるのです。

2024年度からの新たな医療費適正化計画を作成・実行するため、厚生労働省保険局医療介護連携政策課の水谷忠由課長は、これまでの議論を踏まえて「基本方針」案を医療保険部会に提示。次のような点がポイントとなります(関連記事はこちらこちら)。

第4期医療費適正化計画の見直しポイント(医療保険部会(1)2 230629)



(1)計画作成にあたっては保険者や医療関係者の参画を求める(保険者等による保健事業の取り組みを特定健診等実施計画やデータヘルス計画に反映させる、後述する「医療資源投入の地域差是正」などのために医療関係者の意見を十分に踏まえる、ことが必要かつ重要である)

(2)特定健診・特定保健指導の実施率目標値は従前どおり健診70%・保健指導45%とするが、新たに「高齢者の心身機能の低下等に起因した疾病予防・介護予防の推進」(例えば「高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施の推進」項目を盛り込む

(3)後発医薬品の使用促進に向けて、新たな目標値を次のように設定する
▽医薬品の安定供給を基本とする

▽政府目標は、厚生労働省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」の議論も踏まえ、本年度(2023年度)中に「金額ベース等の観点」を踏まえて設定する

▽都道府県計画の目標は、政府目標を踏まえ2024年度に設定する

▽現時点の目標値「数量シェア80%」を達成していない都道府県は、当面の目標として「可能な限り早期に数量シェア80%の達成」を目指すこととする

▽バイオ後続品について、「『80%以上置き換わった成分数』が全体の60%以上」との新目標を追加する

▽目標達成に向けて、例えば「保険者等による差額通知の実施の支援」「フォーミュラリに関する医療関係者への周知をはじめとした必要な取り組み」などを進める

(4)医療資源の効果的・効率的な活用に向け、次の新目標を設定する
(a)「効果が乏しい」とのエビデンスが指摘されている医療(例:急性気道感染症・急性下痢症への抗菌薬処方)について「半減」を目指す
→目標達成に向け、「「抗菌薬の適正使用について、国が提供するデータ等を用いた現状・動向の把握、住民や医療関係者に対する普及啓発」などを計画に盛り込み、実行する

(b)医療資源投入量に地域差がある医療(例:白内障手術・化学療法の外来での実施、リフィル処方箋)について「全国平均」を目指す
→目標達成に向け、薬物療法の外来実施については「地域医療介護総合確保基金等を活用した医師確保支援、施設・設備整備、医療機関間の役割分担の明確化、連携体制・施設の整備」などを、リフィル処方箋については「保険者、都道府県、医師、薬剤師などの必要な取り組みの検討・実施支援、分割処方等その他の長期処方」などを、地域の実態を確認しながら取り組む旨を計画に盛り込み、実行する

医療資源の効果的・効率的活用の推進(医療保険部会(1)1 230629)



(5)「医療・介護連携」を通じた効果的・効率的なサービス提供(例:市町村の在宅医療・介護連携推進事業への都道府県による後方支援、広域調整等の支援等)を推進する

(6)「高齢者に対する6種類以上の薬剤投与」を目安として、医薬品の適正使用の推進に向けた取り組みを進める(現在は「15種類以上」であり、対象が拡大される、関連記事はこちらこちらこちらこちら

●基本方針はこちら、基本方針のポイント等はこちら



まず注目されるのが(3)の「後発品使用の新目標値」です。現在は「数量ベース」ですが、新たな目標値は「金額ベース」の観点を盛り込むとしています。しかし、薬価は「毎年度変動する」ことになります。このため、例えば「金額ベースで●%以上の後発品使用とする」という目標値を設定したとして、ある年度には●%がクリアできても、翌年度には薬価引き下げにより「数量ベースでは後発品使用が進んでいるが、金額ベースでは目標値をクリアできない」事態が生じえます。薬価設定に都道府県が関与することはできず、「都道府県の責に帰せられない事情により、目標がクリアできない」こととなりますが、この場合に「貴県は後発品使用が進んでいない」として不利に扱われるのは酷でしょう。

今後、厚労省医政局経済課が中心となって「金額ベースの観点も盛り込んだ新目標値」を検討していきますが、どのような形で新目標値を設定するのか注目が集まります。

白内障手術や化学療法、各都道府県では、全国平均を目指して「外来への移行」進める

また(4a)(4b)については、上述の例示のほかに「どのような医療行為が対象となるのか」(効果なしとのエビデンスがある医療行為、資源投入量に大きな地域差がある医療行為)が気になります。水谷医療介護連携政策課長は「国において、エビデンス等を継続的に収集・分析し、都道府県が取り組むべき目標等の追加を検討する」考えを示していますが、具体的にどう進めるのか(例えば有識者の検討会議等を立ち上げて検討するのか、など)は明らかになっていません。まずは上述の例示事項を踏まえ、▼急性気道感染症・急性下痢症への抗菌薬処方の「半減」を目指す▼白内障手術・化学療法の入院から外来へのシフト、リフィル処方箋の使用について「全国平均」を目指す—取り組みを進めていくことが重要です。

もっとも、後者(白内障手術や化学療法、リフィル処方箋)については、地域の医療提供体制と密接に関連するため、単純に「白内障手術や化学療法を外来で進めよ」などと求めることはできません。このため、(1)にあるように「計画作成への医療関係者参画」を求め、地域の医療提供体制・医療提供の実態を十分に踏まえた目標値や取り組み内容の設定を行うことが重要となってくる点に留意が必要です。

医療・介護連携を進めることで「寝たきり防止」を実現し、結果、医療費の縮減も目指す

他方(5)は、医療・介護の複合的なニーズをもつ高齢者(慢性疾患を抱える要介護者など)に対し「医療・介護サービスを一体的に提供することで、早期に在宅復帰し、寝たきりを防止する」ことにより医療費の縮減効果を狙うものです。この視点からも明らかなように「医療費適正化」は、「より適切かつ良質な医療(効果的・効率的な医療)を提供することで、医療費の縮減を副次的に狙う」という考え方が色濃く現れていると言えそうです。

例えば、骨密度の低下した高齢者が転倒し骨折した場合に、「急性期治療を終えたが、回復期リハビリ病棟への転院が遅れ、リハビリの効果が十分に得られなかった」→「その結果、介護施設に入所後にも、やはり思うようなリハビリが行えず、寝たきりになってしまった」などの事態が少なからず生じていると指摘されます(関連記事はこちらこちら)。これは「医療費・介護費の増加」をもたらすとともに、患者のQOLの著しい低下を招いてしまいます。

こうした事態を避けるためには、「急性期から回復期、在宅での介護や通院時の医療・介護の機能連携や適切な受診勧奨等を推進する」考えを提示しました。切れ目のない適切な医療・介護提供により「早期の日常生活への復帰」を促すことが、結果として医療費・介護費の適正化にもつながると考えられるのです。

具体的には、▼市町村が実施する「在宅医療・介護連携推進事業」を都道府県が支援するために、管内の課題の把握、必要なデータの分析・活用支援、管内の取り組み事例の横展開、関係団体との調整などを図る▼高齢者の骨折対策として「骨粗鬆症健診の受診率の向上」「機能予後等を高めるための骨折手術後の早期離床の促進」「介護施設等の入所者等を含めた退院後の継続的なフォローアップ」「二次性骨折を予防するための体制整備」などを進める—といった事項を医療計画に記載し、実行していくことになります。

もちろん、これらを実現するためには地域の医療関係者・介護関係者・保険者・自治体の連携が重要になることは述べるまでもありません。新型コロナウイルス感染症対策の中で「地域医療・介護連携が進んだ」と指摘され、それをさらに継続・発展させていくことに期待が集まります。



ところで医療費適正化計画は、名称どおり「医療費の適正化」を求めるものです。上述した「後発品使用促進」や「白内障手術等の外来実施」といった施策の効果を積み上げ、「医療費の伸びをどの程度抑えられるか」という目標値も設定することになります。

この点については、「入院外医療費の適正化」と「入院医療費の適正化」に分けられ、上記の取り組みは主に「入院外医療費の適正化」に強く関連するとされました。

後者の「入院医療費の適正化」に関しては、主に「地域医療構想の実現」(機能分化・連携の強化による効率的な医療提供)により実現していくことになります。地域医療構想については「2025年度」がゴールであり、今後「ポスト地域医療構想」を検討していくことになり、第4期医療費適正化計画(2024-29年度)の途中に「ポスト地域医療構想」の姿が明確にされ、それを踏まえて医療費適正化計画についても「期間中の見直し」(入院医療費適正化に関する部分)が行われることになります(関連記事はこちら)。



こうした基本方針に対し異論・反論は出ておらず、「ポリファーマシー対策(高齢者への6種類以上の薬剤投与に対する処方見直し)やリフィル処方箋の活用などを積極的に進めるべき」(佐野雅宏委員:健康保険組合連合会副会長)、「後発品使用促進は重要であるが、まず現在の供給不安への対策を進めてほしい」(池端幸彦委員:日本慢性期医療協会副会長、福井県医師会長)、「在宅医療・介護連携の推進は非常に重要な課題であり、都道府県による支援に期待したい」(猪口雄二委員:日本医師会副会長)などの注文がついています。



地域の医療提供内容にも深く関連してくる事項であり、医療関係者も「医療費適正化計画」の内容を十分に把握する必要があります。



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