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2017年度の社会保障費は6600億円増の29兆1060億円に―厚労省17年度予算概算要求

2016.9.1.(木)

 来年度(2017年度)の厚生労働省予算(一般会計)は31兆1217億円で、うち年金・医療などの社会保障経費は29兆1060億円としてはどうか―。

 厚生労働省は8月30日に、こうした内容の2017年度予算概算要求の概要を公表しました(厚労省のサイトはこちら)。

2017年度の厚労省一般会計予算概算要求(労働保険や年金などの特別会計を除く)の大枠

2017年度の厚労省一般会計予算概算要求(労働保険や年金などの特別会計を除く)の大枠

厚労省の一般会計予算は31兆1217億円

 厚労省の2017年度予算概算要求のフレームを見ると、年金・医療などに係る社会保障経費については6400億円増額要求する一方で、裁量的経費などは今年度(2016年度)より10%減額。さらに、「新しい日本のための優先課題推進」のために別枠で2167億円を要求する考えです。このフレームは、2016年度と同じです(関連記事はこちら)。

2017年度厚労省予算概算要求のフレーム

2017年度厚労省予算概算要求のフレーム

 その結果、労働保険や年金などの特別会計を除く一般会計については31兆1217億円を要求。これは前年度に比べて8108億円・2.7%の増額要求となっています。また社会保障経費については、前年度から6601億円・2.3%増の29兆1060億円となります。

 2018年度予算における重点事項としては、アベノミクスの新たな3本の矢に沿って、次のような項目をあげました。

(1)希望を生み出す強い経済(GDP600兆円の実現):医療分野のイノベーション・ICT化の推進、医療の国際展開・国際保健への貢献など

(2)夢をつむぐ子育て支援(希望出生率1.8の実現):待機児童の解消や総合的子育て支援の推進など

(3)安心につながる社会保障(介護離職ゼロ、地域共生社会の実現):介護の環境整備、障害者、難病・がん患者などの活躍支援など

 このうち(1)の「医療分野のイノベーション」については、医療系ベンチャーを育成支援するために22億円、革新的な医薬品などの実用化に向けた環境整備を行うため、いわゆる最適使用推進ガイドラインの策定などにむけ3億4000万円を、(3)の「介護の環境整備」については、▽高齢者のニーズに対応した介護サービス基盤の整備(地域ケア会議の活用によるケアマネジメント支援など)に576億円▽介護人材の確保(月1万円程度の処遇改善
など)に48億円―などを要求しています。

アベノミスクの新たな3本の矢の実現に向けた予算編成となる

アベノミスクの新たな3本の矢の実現に向けた予算編成となる

地域包括ケアシステムの構築や、予防・健康管理なども重点項目

 厚労省予算に含まれる項目は極めて多岐にわたります。主要事項の中から、医療・介護に関係の深いものを見てみましょう。

 医療・介護に共通する最大のテーマとして「地域包括ケアシステムの構築」があげられます。2025年には、いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となり、医療(とくに慢性期医療)・介護のニーズがこれから飛躍的に増加します。これに対応するために、地域の実情に応じて在宅医療・在宅介護や住まい、保健サービスなどを複合的・総合的に提供する「地域包括ケアシステム」の構築が急がれるのです。具体的には次のような事項と金額が要求されています。

地域包括ケアシステムの概要(図における金額は2016年度予算ベース)

地域包括ケアシステムの概要(図における金額は2016年度予算ベース)

【医療・介護連携の推進】3兆482億円

▽介護保険サービスの確保:2兆9183億円

▽保険者機能強化:6億2000万円

▽介護離職防止のための相談機能の強化:1億9000万円

▽地域での介護基盤の整備:464億円

【質の高い効率的な医療提供体制の確保】622億円

▽地域枠就学資金による医師確保の推進:30億円(地域枠の医学生に対する修学資金の貸し付け事業を支援する)

▽医師の適正な地域配置のためのデータベース構築:900万円(医師の研修先、勤務先、診療科などを一元的に管理するデータベースの構築)(関連記事はこちら

新専門医制度の構築に向けた支援:3億3000万円(医師偏在の拡大を防止するため、専門医の養成数を調整する「都道府県協議会」の経費増額や、医師不足地域への指導医派遣経費の補助など)

特定行為にかかる看護師の研修制度の推進:4億7000万円(指定研修機関の確保や、指導者育成のための支援など)

▽在宅医療の推進:8100万円(好事例モデルの横展開など)

人生の最終段階における医療体制の整備:9900万円(患者の相談に適切に対応できる医師・看護師などの育成など)

▽医療安全の推進:11億円(医療事故調査制度における医療事故調査・支援センターの運営経費支援など)

▽救急・周産期医療などの体制整備:239億円+医療提供対体制推進事業補助金(167億円)の一部

▽救急医療体制の整備:5億2000万円+医療提供対体制推進事業補助金(167億円)の一部

▽小児・周産期医療体制の充実:7億2000万円+医療提供対体制推進事業補助金(167億円)の一部

 

 また医療保険制度を維持するための経費として11兆5795億円が要求されています。このうち大部分は、医療保険給付における国庫負担分で11兆5183億円ですが、このほかに▽国保の財政安定化基金の造成▽国保のシステム開発▽革新的医薬品における最適使用推進ガイドラインの遵守状況や実施のための課題に向けた調査―など、医療保険の制度を支えるための費用が要求されます。

 

 ところで医療保険制度を維持するためには、医療費を適正な水準に抑えることが必要であり、そこでは「予防・健康管理」の推進(781億円)が重要視されています。この点について厚労省は、▽レセプト・健診情報などの分析に基づく保健事業(データヘルス)などの推進12億円▽糖尿病性腎症患者の重症化予防の取り組みへの支援5900万円▽後期高齢者広域連合における後発医薬品の使用促進支援2億8000万円▽重複頻回受診者への訪問指導や高齢者の低栄養(フレイル)防止などの推進9億5000万円▽臨床効果データベースの整備1億4000万円▽遠隔医療の推進700万円▽医療データ利活用のための基盤整備16億円▽NDBデータの利活用・医療保険分野における番号制度の利活用推進566億円▽医療等分野におけるID導入42億円▽DPCデータの活用促進1億9000万円―などを要求しています。

 

 このほか医療に関係の深い項目としては、次のような要求項目が目立ちます。

がん対策:364億円(がん予防に186億円、治療研究の支援に168億円など)

▽肝炎対策:179億円(早期発見・早期治療の促進に139億円など)

難病・小児慢性特定疾患対策:1504億円

新たな難病対策(2015年1月スタート)の全体像(医療費助成対象となる疾病を拡大し、治療・研究を推進する)

新たな難病対策(2015年1月スタート)の全体像(医療費助成対象となる疾病を拡大し、治療・研究を推進する)

 
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