Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

支払基金の支部機能をブロック単位に集約し、地方ルールの統一化を―規制改革推進会議で健保連が意見

2017.3.27.(月)

 医療保険財政が厳しくなる中、社会保険診療報酬支払基金は「データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会」の報告書を踏まえ、保険者の意見も聞きながら改革を進めるべきである―。

 健康保険組合連合会は23日、規制改革推進会議でこのように訴えました。

支払基金業務効率化計画・工程表に、保険者の意見の反映を

 社会保険診療報酬支払基金(支払基金)は、主に被用者保険(健康保険組合や協会けんぽ、共済組合)のレセプトを審査し、医療機関に診療報酬を支払う役割を担っています。ただし、支払基金の業務には▼コンピュータによる審査が必ずしも十分に行われていない(効率化の余地がある)▼支部(47都道府県に支部がある)によってローカルルールがあり、必ずしも統一した審査が行われてない(標準化の余地がある)▼審査基準が公開されていない(透明化の余地がある)―といった問題点が指摘されます。

支払基金の支部間で、レセプト審査には実績・内容ともに大きなバラつきがあると指摘されている

支払基金の支部間で、レセプト審査には実績・内容ともに大きなバラつきがあると指摘されている

 

 健康保険組合連合会(主に大企業のサラリーマンとその家族が加入する健康保険組合で組織)は、こうした問題点を解決するために「支部機能を、地域ブロック単位に集約」する必要性を強調。具体的、次のような対策をとる必要があると訴えます。

効率化を推進するために、まず「コンピュータチェックの精度向上による審査の段階化」(【コンピュータチェック80%+α】→【審査委員による目視審査20%-α】)を行い、次いで「コンピュータチェックと付箋剥がしなどの審査付随の集約化」(ブロック単位化)を行う

標準化を推進するために、まずは、支部間差異の「見える化」と要因分析を進め、保険者 の意見も聞きながらローカルルールの統一化を行い、最終的にローカルルール (支払基金の支部点検条件項目数は11万4969項目)は廃止する方向とする

透明化を推進するために、コンピュータチェックの審査基準を保険者と医療機関などに原則公開する

 あわせて、レセプトの形式について、コンピュータチェック・分析の精度向上に向けた見直しが必要とも指摘。例えば、▽傷病名と診療行為、医薬品の紐付け▽患者所在地の郵便番号記載▽患者の氏名表記(漢字・カナ)の統一▽診療行為の実施日と時系列表記▽全診療行為などにおける点数・回数の記載―などを提案しています。これは、厚生労働省に向けた提案と言えるでしょう。

 

 ところで、健保連ではデータヘルスに力を入れ、これまでにもさまざまな提言を行っていますが(関連記事はこちらこちらこちらこちら)、あくまで集計データに基づく分析であり、個票そのものが分析とはなっていません。そこで、膨大な量のレセプトデータを保有する支払基金が「データヘルス計画が効果的かつ持続可能となるような保険者に対する総合的な支援機能」を保有すべきとも提言。さらに▼診療報酬と介護報酬のレセプトデータ連結▼支払基金と国民健康保険団体連合会(国民健康保険のレセプトを審査し、支払いを行う都道府県ごとの組織)のデータ連結―を行うべきとも指摘しています。

 医療保険の保険者は被用者保険と地域保険(国保、後期高齢者医療)に分かれており、また介護保険は市町村が保険者となっているため、レセプトのデータは、いわば「散在」してしまっています。これらを連結し、出生から死亡までの、医療・介護・健診データなどを統合して分析すれば、より効果的な健康・受診指導などに結びつけることも可能でしょう。

 

 こうした提言や要望は、すでに「データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会」でなされており、報告書にも反映されています(厚労省のサイトはこちら)。報告書では厚労省と支払基金で「支払基金の業務効率化に向けた工程表」を、さらに国民健康保険中央会(国民健康保険団体連合会の中央組織)も加わって「ビッグデータ活用に向けた工程表」を検討し、今春(2017年4-5月頃)に基本方針を固めるよう要望(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。健保連は23日の会合で、前者の「支払基金業務効率化計画」と「工程表」の策定にあたり、保険者の意見を十分に聞くことなどを改めて強く求めています。

 なお健保連は、保険者による直接審査の拡充に向けた「医療機関の事前同意要件」などの規制撤廃を会議メンバーに要請しています。

健保組合による直接審査には規制が多く、実施に向けた非効率などがある

健保組合による直接審査には規制が多く、実施に向けた非効率などがある

 

 また、主に中小企業のサラリーマンとその家族が加入する「協会けんぽ」の運営者である全国健康保険協会も、23日の規制改革推進会議に出席。支払基金改革に向けて、▼レセプト審査業務の、コンピュータシステムを基本としたプロセスへの変更▼支部間ルールの統一化を図り、各支部審査委員会の判断の一元化―などが必要との見解を示しています。

  
診療報酬改定セミナー2024MW_GHC_logo

【関連記事】
審査支払改革で報告書まとまるが、支払基金の組織体制で禍根残る―質の高い医療実現に向けた有識者検討会
支払基金の都道府県支部、ICT進展する中で存在に疑問の声も―質の高い医療実現に向けた有識者検討会
レセプト審査、ルールを統一して中央本部や地域ブロック単位に集約化していくべきか―質の高い医療実現に向けた有識者検討会
支払基金の組織・体制、ICTやネット環境が発達した現代における合理性を問うべき―質の高い医療実現に向けた有識者検討会
診療報酬の審査基準を公開、医療機関自らレセプト請求前にコンピュータチェックを―質の高い医療実現に向けた有識者検討会
都道府県の支払基金と国保連、審査基準を統一し共同審査を実施すべき―質の高い医療実現に向けた有識者検討会で構成員が提案
レセプト審査基準の地域差など、具体的事例を基にした議論が必要―質の高い医療実現に向けた有識者検討会
支払基金の改革案に批判続出、「審査支払い能力に問題」の声も―質の高い医療実現に向けた有識者検討会
診療報酬審査ルールの全国統一、審査支払機関の在り方などをゼロベースで検討開始―厚労省が検討会設置
診療報酬の審査を抜本見直し、医師主導の全国統一ルールや、民間活用なども視野に―規制改革会議WG
ゲムシタビン塩酸塩の適応外使用を保険上容認-「転移ある精巣がん」などに、支払基金
医療費適正化対策は不十分、レセプト点検の充実や適正な指導・監査を実施せよ―会計検査院
レセプト病名は不適切、禁忌の薬剤投与に留意―近畿厚生局が個別指導事例を公表
16年度診療報酬改定に向け「湿布薬の保険給付上限」などを検討―健康・医療WG
団塊ジュニアが65歳となる35年を見据え、「医療の価値」を高める―厚労省、保健医療2035

肺炎患者に対する救急医療管理加算、都道府県で審査基準が大きく異なる可能性―GHC湯原が分析

感冒やアレルギー性鼻炎の医療費分析、サラリーマン本人は家族に比べ「受診せず」―健保連
肥満や血圧などの健康リスク保有者、罹患疾病トップは高血圧症―健保連
肥満者のほうが健康リスクが高く、その内容も複雑―健保連調査
健保組合の生活習慣病対策、特定健診実施率は72.4%、特定保健指導では15.2%にとどまる―2014年度健保連調査