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費用対効果評価の結果、「保険償還価格の調整」に活用—中医協・費用対効果専門部会

2017.6.28.(水)

費用対効果評価の対象医薬品・医療機器は「革新性が高く、かつ市場規模が大きな」ものに限定し、希少疾患や小児疾患への治療に用いるものや、医療上の必要性が高いものは対象から除外する。また、費用対効果評価の結果が悪い場合でも、「保険収載は認めない」といった判断はせず、価格調整にとどめることとする—。

28日に開催された中央社会保険医療協議会の費用対効果評価専門部会で、2018年度からの費用対効果評価の制度化(本格導入)に向けて、こういった方針が固まりました。

6月28日に開催された、「第41回 中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会」

6月28日に開催された、「第41回 中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会」

小児疾患や希少疾患などの治療に用いる医療技術は費用対効果評価の対象外

現在、安全性・有効性が確認された医薬品や医療機器は、基本的にすべて保険収載され、国民がアクセス可能な状態になっています。しかし、医療保険財政が厳しくなる中で、こうした仕組みを継続していくことが難しくなると予想され、英国などで導入されている【医療技術の費用対効果を評価し、その結果をもとに保険収載の是非や保険償還価格(薬価など)を考える】仕組みを我が国でも検討すべきではないか。

前中医協会長の森田明・国立社会保障・人口問題研究所長のこういった発言を発端として、中医協では医薬品・医療機器などの費用対効果評価導入に向けた検討を進めており、2018年度から制度化することになっています(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

これまでに、「費用対効果をどのような手法・基準で評価するか」といった論点の議論が行われており、28日の専門部会では、▼費用対効果評価の対象をどう考えるか▼費用対効果評価の結果をどう活用するか—という2点について検討を行いました。

前者の「対象」については、例えば「費用対効果が極めて悪いが、その医薬品がなければ医療上大きな問題が生じる」ような品目については、評価するまでもなく保険収載が望ましいので、「予め対象から除外しておく」ことが効率的です。

そこで厚労省保険局医療課の眞鍋馨企画官は、費用対効果評価の選定に向けた考え方を次のように提示しました。

【医薬品・医療機器】

●対象から除外する要件

▽治療法が十分に存在しない希少疾患(指定難病、血友病、HIV感染症)治療に用いるもの【治療の開発を阻害しないため】

▽「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」「医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会」の結果を踏まえ、厚労省の開発要請・公募に応じて開発したもの【同】

▽小児疾患治療に用いるもの【同】

▽基礎的医薬品、不採算品再算定、最低薬価の対象医薬品、不採算品目の償還価格見直し対象の医療機器【安定供給のため】

▽後発品【複数品目が同じ価格であり、取扱いに検討が必要なため】

▽1機能区分に複数品目が含まれている場合の医療機器【同】

▽先発品のある後発品【今後の議論を踏まえる必要があるため】

●対象とする要件

▽革新性が高く(補正加算があるなど)、市場規模が大きな(一定規模以上)品目

▽効能追加等により収載後に市場規模が一定の額以上拡大した品目

※市場規模が一定程度を超えない場合でも、著しく高額な品目などは柔軟な対応を行う

【高額な医療機器を用いる医療技術】

●対象から除外する要件

▽治療法が十分に存在しない稀少疾患(指定難病、血友病、HIV感染症)治療に用いるもの

▽「医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会」の結果を踏まえ、厚労省の開発要請・公募に応じて開発したもの

▽小児疾患治療に用いるもの

●対象とする要件

▽診療報酬項目において高額な医療機器が包括的に評価されており、既存技術との比較(置き換え)が明確な技術

 
ここで、6月14日の前回会合などで「小児疾患を対象とする治療については、総合的評価(倫理的、社会的な観点からの評価)の対象とする」とされた点とどう関連するのかが気になります。「小児疾患治療に用いるもの」が除外される、つまり評価対象とならないのであれば「総合的評価」の俎上にも上がることがないからです。

この点について厚労省保険局医療課の担当者は、「小児疾患のみを対象とした医薬品もあれば、小児だけでなく成人も対象とした医薬品もあり、さまざまである」と述べ、一律に「総合的評価」において「小児疾患治療」の要素を除外することにはならないとの考えを明らかにしています。

費用対効果評価の結果は、薬価や材料改革などの「調整」に活用

後者の「結果の活用」に関しては、「償還価格(薬価や材料価格、診療報酬点数)の調整に用いる」ことが確認されました。

一般に費用対効果評価の結果は、(1)保険償還の可否(2)償還価格の調整—の2つの方法で活用されます。前者(1)は「費用対効果が悪い場合には保険給付の対象としない」などと判断し、後者(2)は「費用対効果が悪いので、償還価格を低く抑える」といった具合です。

このうち(1)の「保険償還の可否」に用いることについては、「薬事承認→保険適用」という我が国の原則に馴染まないことや、医薬品などへの患者のアクセスを制限してしまうことから、活用方法として否定されました。ただし、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)や吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は、将来的に「保険償還の可否」に活用する道も検討してはどうかとの考えを示し、診療側の松原謙二委員(日本医師会副会長)はこれに強く反対しています。

この点、さまざまな考えがありますが、(2)の償還価格調整によって開発企業の意向とかけ離れた低価格に設定された場合、企業が「当該製品の保険収載を見送る」という可能性もあり(この場合、保険償還が否と判断されたのと同じ効果がある)、また「企業が低価格を受け入れ、価格引き下げを行う」こともある(この場合、費用対効果が受け入れられ、つまり保険償還が可と判断されたのと同じ効果がある)ので、(2)の手段を準備すれば十分とも思われます。

一度薬価や材料価格を設定して保険適用、後に費用対効果評価を用いて価格調整

では、どのように価格調整を行うのでしょう。この点にも▼保険適用する際に価格を調整する▼保険適用の後に価格を調整する—という2つの手法が考えられます。

前者には「費用対効果評価には一定の時間がかかり(試行では1年程度)、ドラッグ・ラグ、デバイス・ラグが生じてしまう」というデメリットがあるため、厚労省の眞鍋企画官は「一度、薬価・材料価格を設定して保険適用し、後に費用対効果評価の結果を用いた価格調整を行う」ことを提案し、了承されました。具体的な手法(いつ価格調整を行うかなども含めて)は今後、薬価専門部会、保険医療材料専門部会、中医協総会で検討されます。

費用対効果評価の対象となる新薬・新規医療機器では、まず薬価算定ルールなどに沿って保険償還価格を定め、保険適用する。後に費用対効果評価の結果を用いて価格調整が行われる。

費用対効果評価の対象となる新薬・新規医療機器では、まず薬価算定ルールなどに沿って保険償還価格を定め、保険適用する。後に費用対効果評価の結果を用いて価格調整が行われる。

 
ただし、制度を運用し費用対効果評価に習熟していく中で、費用対効果評価に係る時間が短縮していくことも期待されます。その際には、改めて前者の「保険適用する際の価格調整」が可能かが検討されることになるでしょう。

 
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