看護師の育児・介護離職を防止するため、介護のための所定労働時間短縮制度等を設けよ―日看協
2019.5.15.(水)
「育児・介護」と「仕事」との両立に向け、介護のために所定労働時間を短縮する仕組みを設けよ。また、育児・介護両立支援に取り組む事業所への補助について、医療分野では中小企業要件を「常時雇用者300人以下」(現在は100人以下)に拡大すべきである―。
日本看護協会は5月9日に、厚生労働省雇用環境・均等局の小林洋司局長に宛てて、こういった内容を盛り込んだ2020年度予算・政策に関する要望書を提出しました(日看協のサイトはこちら)。
育児・介護と仕事との両立支援に取り組む事業所への補助、300床未満病院に拡大せよ
今般の日看協の要望は次の3項目で、主に「介護や育児」と「仕事」との両立をこれまで以上に支援することを求める内容です。
(1)介護のために所定労働時間を短縮する制度の義務化
(2)育児・介護両立支援取り組み事業所への助成対象の拡大
(3)医療分野における顧客(患者・利用者・家族)からのハラスメント防止対策の推進(関連記事はこちら)
育児・介護休業法第16条の9では、「要介護状態にある家族を介護する労働者」についても、「3歳未満の子を養育する労働者」と同じく、「労働組合等の協定により、事業の正常な運営を妨げる場合を除いて、所定労働時間を超えて労働させてはならない」旨を規定しています。
ただし、「3歳未満の子を養育する労働者」では、「労働者の申し出に基づいて、所定労働時間を短縮する」仕組み(法第23条第1項)がありますが、「要介護状態にある家族を介護する労働者」には設けられていません。
日看協の調査では、40歳代の看護職員では13人に1人、50歳代では5人に1人が「現在、家族等の介護をしている」状況が明らかになっており、また40歳代の看護職員の41.9%、50歳代の51.5%が「介護のための短時間勤務制度を利用したい」と考えていることも分かっています。
こうした状況を踏まえ、(1)のように、家族介護等をする労働者についても「所定労働時間を短縮する」仕組みを創設し、これを事業主に義務化してはどうかと提案しています。具体的には、▼同居家族を介護する場合には、デイサービス(通所介護)等の送迎に対応した短時間勤務を認める▼遠方の家族を介護する場合には、勤務日数を5日(つまり週休3日)などへ短縮することを認める―仕組みなどを例示しています。
また育児・介護休業法では、育児・介護のための休暇(スポットでの休暇)・休業(比較的長期間の休暇)の仕組みを設けています。その際、職場においては労働力が不足してしまうため、代替要員の確保などが必要となってくることから、厚労省では「両立支援助成金」というサポート制度を準備しています。
例えば、介護離職を防止するために「介護支援プラン」を作成し、上述した所定時間制度(法第16条の9)などを実施する中小企業には28万5000円などが支給されます(介護離職防止支援コース)。また中小企業では、育児休業中の代替職員確保のために1人当たり47万5000円が支給されます(育児休業等支援コース)(厚労省のサイトはこちら)。
医療機関も、この「両立支援助成金」の対象ですが、手厚いサポートを受けられる中小企業の要件は「常時雇用する労働者の数が100人以下」とされ、概ね100床未満の小規模医療機関しか「育児休業中の代替職員確保」の助成を受けられません。
この点、日看協では、医療機関における中小企業の要件を「常時雇用する労働者の数が300人以下」に拡大するよう求めています。仮にこの拡大が認められれば、概ね300床未満の病院(病院全体の8割程度)が助成金の対象となり、「育児・介護」と「仕事」との両立支援に向けた強力な下支えが可能となるでしょう。
未曽有の少子高齢化が進む我が国では、少ない労働力で、多くの高齢者を支えなければなりません。また少子化の進行は、社会保障制度はもとより、国家の存続をも脅かします。「育児・介護」と「仕事」との両立に向けたさらなるサポートに期待が集まります(関連記事はこちら)。
【関連記事】
他院の看護師へも「特定行為研修」を提供する病院への財政補助を―日看協
看護師の「特定行為研修」受講のハードル下げるため、研修費用への助成を―日看協
看護職員への患者・家族等からのハラスメント対策を実施せよ―日看協
看護師・准看護師・看護補助者の業務内容や指示ルートを院内業務基準等に明示せよ―日看協
訪問看護ステーションや病院で看護師不足、看護師定着にはメンタルケアや働き方改革を―日看協
特定行為研修を包含した新認定看護師を2020年度から養成、「特定認定看護師」を名乗ることも可能―日看協
多職種連携の推進など踏まえ、非専門職等も理解できるような表現で看護記録の記載を―日看協
特定行為研修の指定研修機関充実、研修期間中の代替職員確保などを検討せよ―日看協
少子化対策の一環として、全妊産婦へ「産後に必要な支援」等を提供せよ―日看協
介護施設で働く勤続10年以上の看護職員、2019年度に処遇改善すべき―日看協
高度急性期から慢性期のいずれの機能でも、看護人材の育成・確保が大きな課題—日看協
看護職の夜勤、1回では24時間、2連続では48時間以上のインターバルが必要―日看協
社会人からの4年生看護師養成所への入学支援に向け、給付金の対象等拡充せよ―日看協
2019年度予算で、訪問看護レセプトの電子化を進めよ―日看協
求職中の看護職、大病院では「看護内容」重視―日看協
高度急性期・急性期の入院医療においては「7対1看護配置」をベースとせよ―日看協
看護必要度、2018年度に拙速な改変せず、中長期に在り方論議を―日病・全日病・日看協
機能強化型相当の訪問看護を実施する病院、介護報酬の訪問看護費を引き上げよ—日看協
2018年度同時改定で「5対1看護配置加算」など創設せよ—日看協
特養などの看護師に、認定・専門看護師が医療技術指導を行うモデル事業の実施を—日看協
措置入院患者への効果的な退院支援の推進と、精神保健福祉担当する自治体保健師の確保を—日看協
日看協が「看護師教育年限を4年に延長し、より質の高い看護を実現せよ」と改めて要望
看護師の夜勤負担軽減に向け、勤務時間インターバルや夜勤時間・回数の上限設定など実現せよ—日看協
看護職員の夜勤実態などを把握した上で、「深夜労働の回数上限」などを設定せよ―日看協が来年度予算で要望
看護師の教育年限を4年に延長し、特定行為研修を推進し、より質の高い看護の実現を―日看協が要望
多様化する医療・介護ニーズに応えるため、大学での質の高い看護教育推進を―日看協が文科省に要望