特定行為研修修了看護師、各都道府県で「現状把握→課題抽出→目標設定→施策推進→評価・改善」による計画的確保を―厚労省
2023.4.10.(月)
2024年度から稼働する第8次医療計画には「特定行為研修を修了した看護師就業者」数の目標値を記載することが各都道府県に求められる。その目標値は、▼在宅・慢性期領域▼感染症対応▼医師からのタスク・シフト—のそれぞれに必要な特定行為研修修了者の数を推計し、その合計+αとする—。
ただし、「都道府県内の指定研修機関数が極端に少ない」など研修体制整備が十分でない場合は、「都道府県内の指定研修機関における特定行為研修修了者の状況」をもとに目標値を設定することも考えられる—。
厚生労働省は3月31日に通知「医療計画における看護師の特定行為研修の体制の整備等について」を示し、こうした考えを明確化しました(厚労省サイトはこちら)。
各都道府県で2023年度に医療計画を作成し、24年度から計画に沿った施策を稼働
一定の研修(特定行為に係る研修、以下、特定行為研修)を受けた看護師は、医師・歯科医師の包括的指示の下で、手順書(プロトコル)に基づいて38行為(21分野)の診療の補助(特定行為)を実施することが可能になります(関連記事はこちらとこちら)。
2022年度から、人口の大きなボリュームゾーンを占める団塊世代が75歳以上の後期高齢者になり始め、2025年度には全員が後期高齢者となることから、今後、医療・介護ニーズが急増していきます。とりわけ在宅療養や介護施設など「医師の関与が手薄になりがちな場面」において、一定の医行為を行える特定行為研修修了看護師が活躍することが期待されています(2025年度に「特定行為研修修了看護師を10万人程度養成する」との目標が立てられている)。
さらに、特定行為研修修了者には、▼新型コロナウイルス感染症対応の重要な担い手▼医師働き方改革の中で、医師からの重要なタスク・シフティング先—としての役割も期待されています。
このように重要な役割を果たす特定行為研修ですが、目標達成に向けた道程はまだまだ厳しいものがあります。
そこで、Gem Medで報じているとおり、▼「特定行為研修を修了した看護師の確保」などをさらに強力に支援する▼特定行為研修の内容等、妥当性についての調査を実施し検討していく▼特定行為研修制度を推進・活用したことによる「医師向け」の好事例集を作成し、医師への周知に活用する▼研修施設の整備などをさらに強化していく▼第8次医療計画に中に「研修体制の整備」「研修を修了した就業者の目標値」を設定する—などの方針が固められました(関連記事はこちら)。
さらに、2月17日に開催された医道審議会・保健師助産師看護師分科会の「看護師特定行為・研修部会」では、こうした内容を「厚労省医政局看護課長通知の中にも具体的に記載する」方針を固めました(関連記事はこちら)。
今般、この方針に沿って詳細な内容が次のように示されました。
まず、次のように【体制整備・目標値設定】についてPDCAサイクルを回し、計画的に進めることが求められます。
▽研修体制の整備にあたり、まず「地域における特定行為研修等の普及の現状」を、例えば次のようなデータを用いて客観的に把握すること(業務従事者届の集計データ、指定研修機関数等の国が提供するデータ、独自調査データなどを活用する)
・特定行為研修に係る指定研修機関数、実習を行う協力施設数
・特定行為研修修了者その他の専門性の高い看護師の就業者数(総数、特定行為区分別、就業場所別等)
・医療機関及び訪問看護ステーション等における特定行為研修等の受講希望者等のニーズ
・医療機関における指定研修機関の指定申請の意向
↓
▽上記のように把握した数値から現状について分析を行い、「研修体制の整備における課題」や「特定行為研修修了者その他の専門性の高い看護師の就業状況における課題」を抽出する
↓
▽後述する手法により「就業者数の数値目標」を設定する
↓
▽抽出した「課題」に対応し、「目標」を達成するような施策・事業等を立案する
(施策・事業の例)
・特定行為研修の受講に係る支援を実施する(受講料の補助、代替職員の経費の補助)
・指定研修機関・実習を行う協力施設の確保に係る支援を実施する
・指定研修機関・協力施設の確保、指定研修機関相互のネットワーク形成を目的とした関係団体(者)や医療機関との会議の場を設置、運営する
・特定行為研修修了者の活動体制の推進に係る支援やフォローアップ研修の実施、運営を行う
↓
▽計画の進捗状況を評価し、必要に応じて計画の内容を見直す
・あらかじめ「評価を行う体制」を整え、計画の評価を行う組織や時期を明確にする
・少なくとも施策の進捗状況の評価は「1年ごとに行う」ことが望ましい
・数値目標の達成状況・現状把握に用いた指標の状況について「医療計画の中間見直し」(3年後に見直す)に合わせて調査、分析・評価を行い、必要に応じて医療計画を変更する
また、「特定行為研修修了看護師の就業者」目標については次のような考えが示されました。
▽「指定研修機関数」「協力施設数」「特定行為研修修了者、その他の専門性の高い看護師の就業者数」について、▼地域の実情に応じた数値目標▼目標達成に要する期間—を設定する
▽「特定行為研修修了者その他の専門性の高い看護師の就業者数」についての目標設定では、次の点を考慮する
(1)在宅医療における質の高い効果的なケアの実施の推進
→例えば「在宅・慢性期領域における特定行為研修その他の専門性の高い看護師の就業者数」を目標値とすることが考えられる
(2)新興感染症等の感染拡大時に、高度急性期治療に対応できる知識と技術を有する看護師の平時からの確保
→例えば「新興感染症等の感染拡大等の有事に対応可能な特定行為研修修了者その他の専門性の高い看護師の就業者数」を目標値とすることが考えられる
(3)看護の質の向上と医師の時間外労働の上限規制に資するタスク・シフト/シェアの推進
→例えば「医師労働時間短縮計画の作成対象となる医療機関等における看護の質向上とタスク・シフト/シェアに資するに必要な特定行為研修修了者の就業者数」を目標値とすることが考えられる
上記(1)+(2)+(3)、さらに都道府県独自の「+α」を考慮して、「自地域の特定行為研修修了看護師の就業者」目標数とすることが考えられるでしょう。
もっとも、都道府県によっては「指定研修機関数が極端に少ない」などの研修体制の整備が十分でない場合が考えられます。そこで上記の考えに沿うと「絵に描いた餅」となりかねません。これでは、その後の「施策推進」「評価」も十分に行えないため、厚労省は「都道府県内の指定研修機関における特定行為研修修了者の状況をもとに就業者数の目標値を設定する」ことも考えられる旨を示しています。
各都道府県は、2023年度に、上記の考えに沿って、医療計画へ「特定行為研修修了者の養成・確保・就業強化」策を盛り込み、2024年度から施策を推進していくことになります。
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