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食道がん・胃がん患者へ「免疫チェックポイント阻害剤投与」と「腸内細菌叢移植」とを併用する臨床試験を実施—国がん他

2024.8.20.(火)

免疫チェックポイント阻害剤の効果が十分でない食道がん・胃がん患者に対し、「免疫チェックポイント阻害剤投与」と「腸内細菌叢移植」とを併用する治療法の有効性・安全性を確かめる臨床試験を実施する—。

国立がん研究センター・順天堂大学・メタジェンセラピューティクス社が先頃、こうした共同研究結果を公表しました(国がんのサイトはこちら)。

免疫チェックポイント阻害剤が奏功しない食道がん・胃がん患者への新治療法に期待

ヒトの腸管には約1000種、40兆個以上の腸内細菌が生息しており、その細菌の集団を「腸内細菌叢」(腸内フローラ)と呼びます。

近年、「腸内細菌叢」の研究が進んでおり、例えば米国やオーストラリアでは「腸内細菌叢移植を応用した医薬品」が難治性クロストリジウム・ディフィシル感染症の治療薬として薬事承認されるなどしています。

また、がん領域では「免疫チェックポイント阻害薬(オプジーボやキイトルーダなど)による治療効果が得られない悪性黒色腫患者に対し、腸内細菌叢を移植し、腸内細菌叢を調節することでがんに対する免疫が増強され、治療の奏効割合が改善される可能性がある」との研究結果が得られています。腸内細菌叢移植は、「健康な人の便に含まれている腸内細菌叢」を、疾患を持つ患者の腸に内視鏡により注入し、バランスのとれた腸内細菌叢を構築する医療技術です。

我が国でも、2023年1月から、順天堂大学において「潰瘍性大腸炎患者を対象とする『抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法』」が先進医療B(保険外の本治療技術を、保険診療と組み合わせて実施することを認める仕組み)として実施されています(メタジェンセラピューティクス社が、この先進医療の共同研究機関として、便ドナーのリクルーティング、便検体の管理、腸内細菌叢溶液の調製、品質管理などに係る支援を実施)。

今般、▼順天堂大学の腸内細菌叢移植の医療技術▼メタジェンセラピューティクス社の腸内細菌叢移植プラットフォーム—を活用し、「消化器がん(食道がん、胃がん)患者を対象とした腸内細菌叢移植」の臨床試験を本邦で初めて行うことを国がんが公表しました。

2020年には約2万5000人が新たに食道がんと診断され、約1万1000人が亡くなっています。また、胃がんは日本で3番目に多いがんで、2020年には約11万人が新たに胃がんと診断され、約4万2000人が亡くなっています。

食道がんや胃がんでは、免疫チェックポイント阻害薬により治療の選択肢が広がる一方、「治療効果が得られない患者への新たな治療法の開発」が期待されており、今回の臨床試験に期待が集まります。

具体的には、次のような臨床試験が行われます。

【対象患者】
▽切除不能進行・再発の食道がんおよび胃がん

【試験内容】
▽「免疫チェックポイント阻害薬」と「腸内細菌叢移植」との併用療法
→抗菌薬3種類(アモキシシリン、ホスホマイシン、メトロニダゾール)を1週間投与した後、腸内細菌叢溶液を大腸内視鏡で1回投与する腸内細菌叢移植を実施
→腸内細菌叢移植の翌日以降から免疫チェックポイント阻害薬を含む治療を実施

▽併用療法の有効性・安全性を確認する

臨床試験の概要

腸内細菌叢移植実施までの流れ



「誰一人取り残さないがん対策を推進し、全ての国民とがんの克服を目指す」ことを全体目標に掲げた第4期がん対策推進基本計画では、「新規医薬品、医療機器及び医療技術の速やかな医療実装」を医療分野の1目標に掲げており、今般の臨床研究結果が、この計画実現に向けた重要な要素となることに期待が集まります。



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