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GemMed塾 看護モニタリング

電子処方箋、まず「導入意欲の高い地域」を中心に支援を強化!患者・国民が利便性を認識することが何より重要—電子処方箋推進協議会

2023.3.2.(木)

電子処方箋の導入促進に向けて、何より患者・国民にその利便性・メリットを感じてもらうことが極めて重要である。このため、電子処方箋の導入促進策を3つのフェーズに分け、当面はまず「地域で複数の医療機関・複数の薬局が導入している『導入意欲の高い地域』を中心に支援を強化していく」ことが重要ではないか—。

2月27日にスタートした「電子処方箋協議会」で、こういった方針が厚生労働省から説明されました。病院団体や医師会等からは「導入コスト支援の充実」などの要望の声が出ています。

電子処方箋の導入に向け「院内の電子カルテにおけるマスタ整備」が非常に重要

電子処方箋は、オンライン資格確認等システムのインフラを活用し、これまで「紙」で運用されていた、医療機関から薬局への処方指示(処方箋発行)を「オンライン」で行うもので、大まかな流れは以下のようになります(関連記事はこちら)。

(a)患者が医療機関を受診し、「電子処方箋の発行」を希望する(オンライン資格確認等システムでの資格認証や診察時などに確認、マイナンバーカード以外で受診する場合には口頭で確認する)

(b)医療機関において医師が、オンライン資格確認等システムの中に設けられる【電子処方箋管理サービス】に「処方箋内容を登録」する

(c)医療機関は患者に「電子処方箋の控え」(紙、アプリ)を交付する

(d)患者が薬局を受診し、「電子処方箋の控え」を提示する

(e)薬局において、薬剤師が【電子処方箋管理サービス】から「処方箋内容」を取得し、調剤を行う

(d)患者に薬剤を交付する



このうち(b)および(e)において、患者同意の下で「過去に処方・調剤された薬剤情報」の閲覧が可能になるため、重複投薬や多剤投与、禁忌薬剤の投与などを「リアルタイム」でチェックし是正を図ることが可能になります。

電子処方箋の概要(健康・医療・介護情報利活用検討会1 221019)

電子処方箋の導入スケジュール(健康・医療・介護情報利活用検討会2 221019)



この1月26日(2023年1月26日)から全国展開が始まっていますが、まだ対応医療機関・薬局は少数にとどまり、2月19日(2023年2月19日)時点では次のような状況です。

▽全国684施設(病院6、医科診療所38、歯科診療所8、薬局632)で運用開始

▽システム改修の事前申請施設数は4万412施設(病院930、医科診療所1万5580、歯科診療所8754、薬局1万5148)

▽1月末時点で、電子処方箋発行に必要なHPKIカードの発行枚数は約4万4000枚(うち電子処方箋の全国展開に向けたモデル事業がスタートした昨年(2022年)10月から本年(2023年)1月末までの発行枚数は約1万8000枚)



こうした「遅れ」の背景には、▼オンライン資格確認導入対応等でシステムベンダの逼迫が続いていることなどにより、システム改修が進んでいない▼電子署名に必要なHPKIカードが届いていない▼地域によっては、医療機関と薬局のいずれかしか運用開始していないために、利用に結びつかない—ことがあります。

そこで厚労省は2月27日の「電子処方箋協議会」において、次のような3段階の推進策をとる考えを提示しました。

【第1フェーズ】(現在から)
▽「国民が電子処方箋を利用できる地域」を全国的に確保する
▼導入意欲の高い医療機関・薬局が多い地域を中心に普及拡大を図る
→「同一市町村内の医療機関・薬局から電子処方箋の利用申請が数多く出されている」などの利用意欲が高いと考えられる地域(例えば秋田県秋田市、東京都台東区、長野県長野市、愛知県名古屋市、大阪府大阪市、広島県広島市、福岡県北九州市など)を中心に普及拡大を図る
▼並行して公的病院での早期導入も要請する(公的病院を起点に面的に拡張)

▽電子処方箋のメリットについて周知広報を強化する

▽20220年度補正予算(例:HPKI補助22億円)や2023年度予算案(例:2023年度分のシステム改修補助率を引き上げ)を活用した早期導入の呼びかけを行う


【第2フェーズ】(本年(2023年)9月以降のオンライン資格確認等いステムの経過措置が終了し、システムベンダ・医療機関等に余裕が出てくるタイミングから)
▽システムベンダの改修余力が出てくるタイミングで、全国での普及拡大を加速化する

▽電子処方箋の機能拡充(リフィル処方箋への対応など)を図り、利便性の向上を図る

▽普及導入加速化のための更なる方策を検討・実施していく


【第3フェーズ】(2025年3月末まで)
▽2024年度末(2025年3月末)に「概ねすべての医療機関・薬局への導入」を目指す



さらに厚労省は、▼現時点で電子処方箋システムの導入に対応できるベンダの公表▼ベンダにより医療機関等のシステム改修のリモート実施▼HPKIカードの発行推進(日本医師会など認証局の体制強化、早期発効など)▼かードレス署名の導入推進(カードレス署名対応事業者も公表)—などの取り組みも進めています。

カードレス署名(電子処方箋推進協議会2 230227)



まだ電子処方箋の普及に向けては「効果、メリットを患者が実感・体感する」ことが何よりも重要です。このため上述した第1フェーズでは、「同一市町村内の医療機関・薬局から電子処方箋の利用申請が数多く出されている」などの利用意欲が高いと考えられる地域(例えば秋田県秋田市、東京都台東区、長野県長野市、愛知県名古屋市、大阪府大阪市、広島県広島市、福岡県北九州市など)を中心に普及拡大を図っていく考えを強調しています。「医療機関(=処方箋発行サイド)しか対応していない」「薬局(=処方箋の受け手)しか対応していない」地域では、「効果、メリットを実感できる」ようになるまで時間がかかるため、まずは「準備の進んでいる地域を支援する→利用者が効果、メリットを実感する→さらなる推進を図る」という部分に力を入れていくことになります。

同一地域で複数の医療機関・複数の薬局が電子処方箋を導入する「意欲的な地域」も全国にある(電子処方箋推進協議会1 230227)

電子処方箋の推進に向けた「当面の取り組み」(電子処方箋推進協議会3 230227)



「電子処方箋協議会」では、こうした方向を歓迎するとともに、例えば長島公之構成員(日本医師会常任理事)らから、医療機関等支援の充実を求める声が多数だされています。日本医師会と病院団体では、連名で(1)補助率の引き上げ(現在「病院3分の1、診療所2分の1」補助だが、本来は「10分の10」j補助が望ましい)(2)事業額上限の引き上げ(現在「⼤規模病院486万6000円、それ以外の病院325万9000円、診療所38万7000円」だが、実態を踏まえた引き上げが必要)(3)補助申請期限の⾒直し(2023年4月1日以降は補助率引き上げがなされるが、この期限の廃止・大幅延長が必要)—との要望を加藤勝信厚生労働大臣に行っており、協議会でも改めてこの点への要望が行われています(関連記事はこちら)。

また大道道弘構成員(日本病院会副会長)は、「何よりも重要なのは『国民・患者への周知、普及啓発である。例えばスマートフォンに搭載する電子お薬手帳なども民間で開発され、医療現場での活用も進んでいる。これらと電子処方箋を連携させるなどし、患者・国民に『便利な仕組みだ。医療が良くなった』と実感してもらうことが必要である。病院会としても協力を惜しまない』と強調しています。



また同日には、電子処方箋のモデル事業に参画する⽇本海総合病院(山形県酒田市)の島貫隆夫院長が参考人として出席し、▼院内において電⼦処⽅箋導⼊前に「電⼦カルテのマスター整備」を十分に行うことが必要かつ重要である▼重複防⽌や併⽤禁忌のシステム確認のために「地域の医療機関・薬局が連携して運⽤を推し進める」ことが重要である▼患者の利便性確保、医師の負担軽減のための「工夫」を十分に行う必要がある(例えば、患者は「薬局の名前」を正確に記憶しておらず、地図とセットで「どの薬局を利用するのか」を明確化することなどが必要となる)▼地域で分けた運用を可能とすることで「地域独⾃のチェックロジック」(例えば地域フォーミュラリなど)が実現できるので検討してほしい—などの考えが示されました。

フォーミュラリとは、医療機関等が作成した「医学的妥当性や経済性などを踏まえた医薬品使用方針」のことです。「●●疾患には第1選択としてA医薬品(特定の銘柄や成分)を使用する、◆◆疾患には第1選択としてX医薬品(特定の銘柄や成分)を使用する」といったリストをつくるイメージです。採用医薬品を集約化することで「経営の質」が向上する(医薬品の購入コストを抑えることが可能)ことはもちろんですが、何よりも「医療の標準化が進み、医療の質が向上する」という大きな効果が期待されます。

この点、各医療機関が独自にフォーミュラリを作成するよりも、「地域医療機関で連携してフォーミュラリを作成・使用する」ことで、「地域単位での医療内容の標準化・医療の質向上」にもつながると期待されます。

島貫院長の指摘は、今後の重要な検討視点の1つと言えます。



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