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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

高度医療機器の保守費用など透明化し、国による一定のコントロールも検討すべき—日本病院会

2017.4.24.(月)

 CTやMRIなどの高度医療機器の関連費用(減価償却費や保守費など)は最大で年間1兆9121億円程度と推計される。これらの費用はあまりに不透明であり、部品供給可能期間も極めて短い。これらを透明化し、また国による一定のコントロールなども検討する必要があるのではないか—。

 日本病院会が24日に開いた定例記者会見で、同会の安藤文英医業経営・税制委員会委員長はこのように訴えました。

4月24日の日本病院会定例記者会見で、「平成28年度医療機器・医療情報システム保守契約・費用に関する実態調査」結果を発表した医業経営・税制委員会の安藤文英委員長(西福岡病院理事長)

4月24日の日本病院会定例記者会見で、「平成28年度医療機器・医療情報システム保守契約・費用に関する実態調査」結果を発表した医業経営・税制委員会の安藤文英委員長(西福岡病院理事長)

高額医療機器関連費用は2兆円弱、IT関連費用は7000億円弱と推計される

 診療報酬の引き下げや控除対象外消費税(いわゆる損税)などにより病院経営が厳しい中で、日本病院会では「医療機器・医療情報システム関連費用がどの程度なのか、実態を把握する必要がある」と判断し、2016年度の「医療機器・医療情報システム保守契約・費用に関する実態調査」を行ったものです(日病のサイトはこちら)。

 今般、408病院から得られたデータをもとに▼医療機器などの関連費用(減価償却費、保守管理などの費用)が1兆9121億円▼医療IT関連費用(電子カルテやレセコンなど)が6848億円―に上ると推計しました(408病院を高度急性期、急性期などの機能に分類し、機能ごとの「1床当たり費用」を算出。ここに機能ごとのベッド数を乗じ、それを積み上げて推計している)。これらは病院医療費(国民医療費の病院分)のおよそ10%に相当しています。

 こうした高額な医療機器・IT関連費用ですが、現場には多くの「疑問」や「苦悩」があるようです。408病院から寄せられた意見を見てみると、▼メーカーや代理店以外の業者への保守業務委託は難しく、競争原理が働かない▼金額の設定根拠が不明確▼契約内容が複雑で理解に苦しむ▼「保守契約を締結しないと修理対応が遅くなる」との説明をメーカーからされた▼部品供給可能期間が短すぎる(最低でも製造中止後10年、高度機器では15年の部品供給を行うべき)―といった意見が多いようです。このため、一部の医療機関では「臨床工学技士による点検や修理」「フルメンテ契約からスポット契約への変更の検討」「グループ内での共同契約の検討」などを行って、これらに対処しているようです。

 安藤委員長は、こうした状況を重視し、医療関連サービス振興会や医療機器産業連合会、経済産業省などに対して、サービス内容や費用の透明化を要望するとともに、PL法への抵触がないのか(部品供給機関の短さなど)の照会などを行う考えを示しました。

「本体価格を下げ、保守費用を高額にする」商習慣は好ましいのだろうか

 ところで高度医療機器については、「本体の購入費などを下げ、保守管理費用を高額に設定する」という契約もあるようです。外部保険会社などを活用し、この保守管理契約費用を低く抑える仕組みがあります)が、「高額な保守管理費用をメーカーが手に入れなくなれば、結果として、メーカーは本体価格を高額に設定する方向に動くだろう」と指摘する識者もいます。

 この点について安藤委員長はメディ・ウォッチに対し、「医療用医薬品や医療材料は公定価格が設定され、医療機関の購入価格も一定程度コントロールされるが、高額医療機器の保守費用などはまったくの自由価格となっている。『本体価格を抑え、保守費用を高額にする』という商習慣があるが、これは適切なのだろうか。米国ではFDA(アメリカ食品医薬品局)が病院や患者団体から、医療機器の保守管理などに関するヒアリングを行うこととしており、必要が認められれば規制に動く可能性もあるようだ。我が国でも、厚生労働省が実態を把握し、一定のコントロールを行う必要性を検討する時期に来ているのではないか」とコメントしました。

 2018年度からの医療計画では、「高度医療機器の保守点検」状況も把握することとなっており、これには批判もありますが(関連記事はこちらこちらこちら)、価格調査を含めた実態把握となれば、現場のニーズは高いとも考えられそうです。

偏在是正に向け、「ベテラン医師が地方に行く仕組み」や「地域枠の活用」など検討を

 同日の記者会見では、堺常雄会長から「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」(以下、ビジョン検討会)の報告書に関するコメントも示されました。22日に開かれた日病の常任理事会では、ビジョン検討会報告書に対し、「違和感を覚える」といった感想のほか、次のような意見が出されたといいます。

4月24日の日本病院会定例記者会見に臨んだ、堺常雄会長

4月24日の日本病院会定例記者会見に臨んだ、堺常雄会長

 

▼報告書では偏在対策に「規制的手法は用いない」旨を示しているが、地方では考えられる手段はやりつくしている

▼子育てが一段落したベテラン医師が地方に出ていくような仕組みを考えてはどうか

▼地域枠のやり取り(例えば地域枠がほぼ不要な東京の枠を、医師が不足する道県で活用するなど)を認めることも検討してはどうか

▼報告書には病院総合医への記述が薄い、今後、10万人程度の病院総合医養成が必要である

▼グループ主治医制の議論があるが、あまりにグループが大きくなると責任の所在が不明確になるので、2-3名程度でグループ主治医制としてはどうか

▼高度急性期や急性期から、必要医師数(需要)と要請医師数(供給)を試算し、そこから回復期・慢性期と広げていくべきではないか

 

 このうち「規制的手法」について堺会長は、「最後の手段であろう。管理者要件に『地方勤務』などを掲げれば、『管理者にならなくて結構』という医師も現れる可能性があると述べ、日病幹部全体では「規制的手法は好ましくない」との見解が大勢であると説明しています。

 また報告書でも専門医制度に触れるなど、新専門医制度を巡ってはさまざまな動きがあります。この点について堺会長は「各検討会で新専門医制度に関連する事項を検討すると、『この検討会ではここまで』という具合に尻切れトンボになってしまう。そろそろ厚労省医政局がしっかりした考えを示してもよいのではないか」との見解を示しました。もちろん、日本専門医機構におけるプロフェッショナルオートノミーの下での議論・改善を尊重した上で、混乱を収めるために一定の見解を示す必要があるとの考えに基づくコメントです。

  
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