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診療報酬改定セミナー2024 新制度シミュレーションリリース

医師偏在対策に向け「偏在の数値化」や「病院総合医の育成」に取り組む―日病・堺会長

2017.1.16.(月)

 医師偏在解消に向けて、日本病院会では(1)偏在の数値化(2)病院総合医の育成(3)厚生労働省などへの働きかけ―の3つの対策に取り組んでいく―。

 16日に開かれた日本病院会の定例記者会見で、堺常雄会長はこうした方針を明らかにしました(関連記事はこちら)。

 また、昨年暮に四病院団体協議会と日本医師会の連名で「災害医療を国家として統合するための提言」を内閣府と厚労省に行ったことも報告されました。

1月16日に開催された、2017年初の定例記者会見に臨んだ堺常雄会長

1月16日に開催された、2017年初の定例記者会見に臨んだ堺常雄会長

ビジョン検討会設置で、厚労省の医師偏在対策策定は大幅な遅れ

 医師の地域偏在、診療科偏在が大きな課題とされ、厚労省は「医療従事者の需給に関する検討会」や、その下部組織である「医師需給分科会」などで、昨年末に偏在対策を取りまとめる予定でした(関連記事はこちらこちらこちら)。

 しかし、塩崎恭久厚生労働大臣は「高度急性期などの医師労働時間は、より適正化(短縮する)ことなどが考慮されるべき」と考え、「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」(ビジョン検討会)を設置し、ビジョン検討会の結論を踏まえて、医師などの将来需給推計や偏在対策の議論を行うと軌道修正。偏在対策の策定は当初予定よりも大幅に遅れることとなり、医師不足地域の住民には「多大な不利益」が生じていることになります。

 ビジョン検討会では昨年末に、▼地域が主導して医療・介護・生活を支える▼個人の能力と意欲を最大限発揮できるキャリアと働き方を実現する▼高い生産性と付加価値を生み出す―という中間とりまとめを行いましたが、堺会長は「やや具体性に乏しい。机上の空論ではないか」と指摘し、医師偏在対策を積極的に進めるために、日病として次の3つの取り組みを行う方針を明確にしました。13日の常任理事会で了承されたものです。

(1)偏在の数値化(データ収集)

(2)病院総合医の育成

(3)厚労省などへの働きかけ

 (1)は、地域医療構想策定に関する基礎データ(地域の疾病構造や患者数、専門医の数など)をベースにして、地域偏在や診療科偏在の実態を数値で明らかにするものです。

 また(2)は、日病が行ったアンケート調査で「偏在対策に効果的」との声が最も多かったもので、すでに病院の勤務している医師のうち「総合診療に携わりたい」と希望する場合に、日病などが支援を行っていく(指導医向けの講習会開催など)というもので、新専門医制度における総合診療専門医とは異なります。堺会長はかねてより「総合診療医には、『地域の家庭医』と『病院で総合診療に携わる医師』(病院総合医)の2タイプがあり、両者の育成過程には重複する部分もあるが、異なるカリキュラムで研修を行うべき部分もある」と指摘しています。後者の病院総合医育成に日病として本腰を入れることになったと考えられ、全国自治体病院協議会や地域医療振興協会(JCHO)などとも協力していくことになりそうです(関連記事はこちら)。

 (3)では、厚労省のほか、文部科学省や総務省に対して「病院団体も加わって、連係して総合的な対策をとる」よう呼びかけていきます。

 

 なお、偏在対策としては、「大学医学部の入学定員における地域枠」や「一定の開業制限」「インセンティブの付与」なども検討されていますが、いずれもこれからの議論を待たなければならず、実効性に疑問符が付くものもあります。日病をはじめとする病院団体や日医の今後の取り組みに期待が集まります。

常設の災害医療研究機関を国に設置し、関係府省への提言を行うべき

 16日の会見では、日病災害医療対策委員会の有賀徹委員長(労働者健康安全機構理事長)から「災害医療を国家として統合するための提言」に関する報告も行われました。この提言は、四病院団体協議会(日病、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会)の各会長と日本医師会の横倉義武会長との連名で行われたものです。

1月16日の日本病院会定例会見で、災害医療に関する提言を報告した日病災害医療対策委員会の有賀徹委員長

1月16日の日本病院会定例会見で、災害医療に関する提言を報告した日病災害医療対策委員会の有賀徹委員長

 災害医療としては、例えばDMAT(災害派遣医療チーム)やJMAT(日本医師会災害医療チーム)などが多くの功績を上げていますが、▼行政、日本赤十字社、医師会、病院などさまざまな災害医療チームが作られており、構成や活動ルールがばらばら▼災害対応をめぐる国家施策に医療の視点が不十分▼災害時の医療に学術的根拠を提供する研究活動が低調▼最新情報に基づいたテロルの形態が想定されておらず、準備がない▼医療者の院外活動に関する法律やその他の環境整備が不十分―という課題があることも事実です。

 そこで四病協の各会長と日医の横倉会長は、こうした課題を是正することで、より統合的な国家的な視点に立った災害医療を実現できるとし、「災害医療に関する治験を集積、その学術的根拠を背景して、災害医療の国家的統合を実現するために常設の研究機構を設置し、関係府省庁などに提言を行う」ことを提言しました。提言は、災害対策を主に所管する内閣府と厚労省に対して提出されています。有賀委員長は、「例えば内閣府の中央防災会議(会長は内閣総理大臣が務める)の下に常設の研究機関を設置し、災害医療についてさまざまな研究を行い、そこで得られた知見をもとに、中央防災会議や厚労省、国交省、防衛省などに提言を行っていくことが必要」と強調しています。

 
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