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診療報酬改定セミナー2024 新制度シミュレーションリリース

患者起点で、医療費助成対象となる指定難病へ申請できる仕組みの整備へ―指定難病検討委員会

2017.6.27.(火)

研究班が設置されていない難病について、患者や家族の申し出を起点として、医療費助成の対象となる指定難病への申請を行える仕組みを設けてはどうか。その際、指定難病の要件を満たしているかなどの情報収集は、類縁疾病を研究する研究班で行うこととしてはどうか―。

27日に開催された厚生科学審議会・疾病対策部会の「指定難病検討委員会」では、こういった仕組みについて検討を開始しました。近く「難病対策委員会」でも検討をはじめ、本年度(2017年度)中に一定の答えが出される見込みです。

6月27日に開催された、「第19回 厚生科学審議会 疾病対策部会 指定難病検討委員会」

6月27日に開催された、「第19回 厚生科学審議会 疾病対策部会 指定難病検討委員会」

研究班の設置されていない難病と闘う患者が、専門医療機関を通じて申請

▼発症の機構が不明▼治療方法が未確立▼希少▼長期療養が必要—な疾病は「難病」に位置付けられ、調査研究や患者支援が行われます。このうち▼患者数が我が国で18万人未満▼客観的な診断基準が確立している—難病は「指定難病」に位置付けられ、重症患者については医療費助成が行われます。

医療費助成対象となる指定難病の要件

医療費助成対象となる指定難病の要件

 
ある疾病が指定難病に指定されるには、その疾病を研究する研究班が国に申請を行い、指定難病対策委員会における「上記要件を満たしているか」などの審査を経る必要があります。2015年1月から指定難病の対象疾患は順次拡大され、現在330疾患にのぼっています(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。

しかし疾病の中には研究班が設置されていないものもあり、それらは「検討の俎上に上がらない」のが現状です。厚生労働省はこれを「不公平」と考え、今般、「患者・家族の申し出を起点として指定難病を検討する仕組み」を設けられないか検討を行うことにしたものです。

この仕組みを検討するに当たっての論点として、厚労省健康局難病対策課の担当者は(1)申し出を行える者の範囲をどう考えるか(2)指定難病の要件に係る情報を誰が収集・整理するか—の2項目を掲げました。

前者の(1)について、27日の指定難病検討委員会では「実際に疾病に罹患している本人、あるいはその家族が、かかりつけ医などを通じて専門医療機関(例えば特定機能病院や臨床研究中核病院、都道府県難病診療連携拠点病院など)に申し出る」こととしてはどうかとの意見が多数出されました。したがって、例えば、我が国に成人患者が1人もいない疾病について「指定難病に指定すべきではないか」といった申請を行うことはできません。

この(1)の論点については、近く難病対策委員会でも議論が開始されます(関連記事はこちらこちら)。

 
後者の(2)「情報収集」については、「患者・家族には難しく、また、申し出を受けた施設が都道府県難病診療連携拠点病院であっても、当該疾病に精通した医師がいるとは限らず、そこに求めることも難しい」ため、全委員から「類縁疾患を研究している研究班に任せることが妥当」との見解が示されました。

さらに宮坂信行委員(東京医科歯科大学名誉教授)や和田隆志委員(金沢大学大学院医薬保健学総合研究科教授)は、「個別疾病について、どの研究班に研究を依頼するのかを、指定難病検討委員会で議論してはどうか」との意見も示しています。

これらを整理すると、▼患者・家族がかかりつけ医などを通じて、専門医療機関に相談する→▼専門医療機関が厚労省に申請を行う→▼申請内容について指定難病検討委員会で「どの研究班に研究を依頼するか」などを検討し、決定する→▼研究班で研究を開始する—という流れになりそうです。

なお、直江知樹委員(国立病院機構名古屋医療センター院長)は、「患者・家族の申し出がどのように検討されたのかについて、半年・1年といった単位で明らかにする(何件の申し出があり、どの研究班にどう振り分けたのかなど)、さらに、申し出を受けてから一定の期間で結論を出し、指定難病に該当しない場合には理由を付して明らかにする」といった透明性の確保が重要と指摘しました。

難病対策課の担当者は、患者・家族を起点とする指定難病検討の仕組みを実際に構築できるのか、また構築できるとして具体的にどういった仕組みとするのかについて「本年度(2017年度)中に一定の結論を出す必要がある」との見解を示しました。ただし、例えば「申し出から、例えば1年以内に結論を出す」といった厳格な仕組みを構築するとなれば、相当の準備が必要となるため、患者・家族起点の仕組みを「いつから稼働するか」については明らかにしていません。

指定難病検討委員会の負担軽減狙い、研究班が事前に指定難病要件をチェック

27日の指定難病委員会では、「2018年度からの指定難病の対象拡大」に向けた議論も行いました。

これまで(2015年からの第1次実施、2015年7月からの第2次実施、2017年度実施)、各研究班で研究が進められている疾病をすべて検討対象としていましたが、指定難病の要件(上述)を明らかに満たしてない疾病なども含まれ、指定難病検討委員会の負担が過重になっていました。

そこで厚労省、指定難病委員会は、「指定難病の要件を満たしているか」などを事前に研究班でチェックするべきではないかと考え、次のようなチェックリストを研究班・日本小児科学会に提示することを決めました。2018年度からの対象拡大に向け、研究班はチェックリストに沿って事前確認を行うことになります。指定難病の対象を狭めるものではなく、研究班と指定難病検討委員会との役割分担を明確にするものと言えます。

【必須項目】

▼発症の機構が明らかでないこと

▼他の施策体系(がん対策、など)が樹立していないこと

▼治療方法が確立していないこと(対症療法はあるが根治療法はない場合なども含む)

▼長期療養が必要なこと(基本的には治癒せず生涯にわたり症状が持続・潜在すること)

▼患者数が我が国一定人数に達しないこと(当面、人口の0.15%未満、18万人未満であること、ただし個別具体的に判断する)

▼患者数の推計に用いた疫学調査などの方法を記載する

▼推計患者数が100人未満の場合には、成人の患者数を推計し記載する(仮にゼロ人であっても、18歳の患者がいる場合には近く成人となるため、即『要件を満たさない』とは判断されない)

【参考項目】

▼これまでに指定難病検討委員会で検討された疾病、または類縁疾病かどうか

▼ICD10(もしくは11)またOrphanetにおける表記名およびコード

▼既に指定難病に指定されている疾病の類縁疾病かどうか

▼指定難病には指定されていない疾病で類縁疾病はあるか(複数の研究班から同時に申請がある場合には、事前に連携し、例えば合同で申請することなどを求めるもの)

▼本症および類縁疾病を対象とする研究班や研究グループが他に存在しないかどうか

▼小児慢性特定疾病に指定されているかどうか

▼医療費助成を受けるために必須だが、保険適応外の特殊検査が必要かどうか(仮に外国でしか実施できない検査であれば、厚労省で検討・調整しなければならないため。さもなくば、当該疾病が医療費助成の対象となっても、診断に必要な検査を受けられず、実際の対象患者がゼロ人という事態が起こってしまいかねない)

医療費助成対象から患者が漏れないよう、対象疾病の別名などを整理

ところで医療費助成の対象となる疾病の名称は、厚生労働大臣によって告示されています。しかし、疾患群として指定されている場合には、さまざまな名称の疾患があり、「果たしてこの患者が医療費助成の対象となるか」と判断に迷うケースがあると指摘されています。例えば、告示番号065「原発性免疫不全症候群」には、▼X連鎖重症複合免疫不全症▼プリンヌクレオシドホスホリラーゼ欠損症▼22q11.2欠失症候群▼高IgE症候群▼高IgM症候群▼自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)▼白血球接着不全症▼C1q欠損症▼C1r欠損症▼C1s欠損症—などなど、実に多数の疾患が含まれることが研究班から明らかにされています。

そこで厚労省は、告示されている疾病名と、そこに含まれる別名疾病や細分類疾病名を一覧にし、公表する考えを示しました。これにより「実は指定難病に罹患し、医療費助成の対象であるが、診断疾病名が告示病名と異なるため医療費助成が受けられない」という事態を回避することが期待されます。

研究班・学会において、改めて疾病名の精査をした上で、厚労省ホームページや難病情報センターホームページなどで公表されます。

 
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