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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

難病診療連携の拠点病院を支援する「難病医療支援ネットワーク」に求められる機能は―難病対策委員会

2017.1.27.(金)

 2018年度から各都道府県に整備される「難病診療連携の拠点となる病院」を支援するために、難病情報センターの情報や機能を充実し「難病医療支援ネットワーク」を構築する。また難病の診断の必要な遺伝子検査を「どの機関が実施しているのか」を明示したリストを作成する―。

 27日に開かれた、厚生科学審議会・疾病対策部会の「難病対策委員会」ではこういった議論が行われました。

1月27日に開催された、「第46回 厚生科学審議会 疾病対策部会 難病対策委員会」

1月27日に開催された、「第46回 厚生科学審議会 疾病対策部会 難病対策委員会」

難病情報センター、「どこに専門医師がいるのか」の情報を充実すべき

 難病対策については、医療費助成の対象となる「指定難病」の指定に関する議論が進められると同時に、難病に対する質の高い医療提供体制の構築に向けた検討が進んでいます。前者については「指定難病委員会」を中心に議論が行われ、2017年度実施分を含めて330疾患が指定難病となる見込みです(関連記事はこちらこちら)。

 後者については「難病対策委員会」が昨年(2016年)10月に、具体的な医療提供体制モデルを提言しています。そこでは、▼早期に正しい診断ができる▼診断後はより身近な医療機関で適切な医療を受けられる▼遺伝子関連検査について、倫理的な観点も踏まえて実施できる▼小児慢性特定疾病児童などの移行期医療を適切に行える―体制を構築することとし、都道府県(3次医療圏)ごとに、「一般病院・診療所や保健所、難病協力医療機関による難病対策地域協議会を設け、患者に適切な医療を提供する」「分野別の難病診療の拠点病院を設け、一般病院や難病医療協力病院などの支援(専門的医療提供や診断など)を行う」「横断的な難病診療連携の拠点となる病院を設け、分野別の拠点病院を支援する(遺伝子診断などの特殊な検査など)」という体制を構築することとなっています。厚労省は今年度(2016年度)末にも拠点病院などの整備に向けた指針を示す予定で、実際の稼働は2018年度からとなります。

2018年度からの新たな難病医療提供体制のイメージ(その1)

2018年度からの新たな難病医療提供体制のイメージ(その1)

2018年度からの新たな難病医療提供体制のイメージ(その2)

2018年度からの新たな難病医療提供体制のイメージ(その2)

2018年度からの新たな難病医療提供体制では、都道府県の実情に応じて「拠点病院」を整備することになる

2018年度からの新たな難病医療提供体制では、都道府県の実情に応じて「拠点病院」を整備することになる

 さらに都道府県の難病診療連携の拠点病院を支援するために、「難病医療支援ネットワーク」を国レベルで構築することとなっており、そこでは、難病情報センターや国立高度専門医療研究センター、難病研究班、学会、IRUD(未診断疾患イニシアチブ:Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases)が連携して、個別難病を専門的に研究している医師を紹介したり、拠点病院からの相談に応じたりします。ネットワークの稼働も2018年度からとなる見込みです。

2018年度からの新たな難病医療提供体制のモデルケース、主に都道府県で難病医療を完結できることとし、国レベルのネットワークで都道府県の難病診療連携拠点病院を支援する

2018年度からの新たな難病医療提供体制のモデルケース、主に都道府県で難病医療を完結できることとし、国レベルのネットワークで都道府県の難病診療連携拠点病院を支援する

 27日の難病対策委員会では、この「難病医療支援ネットワーク」にどのような機能が求められるか、といった点が議題となりました。

 この点、「難病情報センター」(以下、センター)では、指定難病に関する詳細な情報提供を行い、医療機関・患者からの問い合わせにも一部対応していますが、拠点病院代表として出席した菊地誠志参考人(国立病院機構北海道医療センター院長)は、「現在の難病情報センターの情報には濃淡があり、必ずしも十分とは言えない」と指摘、その上で、「拠点病院でも、希少難病を含む『全ての難病』診断にたどりつくのは難しい。系統的、簡便、確実、効率的、短時間に利用できる情報提供サービスが必要」と強調しています。また菊地参考人や羽鳥裕委員(日本医師会常任理事)や菊地参考人は、「『A症状、B症状、C症状があれば、X疾患が疑われる』といった診断アルゴリズムの構築」の必要性も指摘しています。

 これに対し、センターの運営委員長でもある宮坂信之参考人(東京医科歯科大学名誉教授)は、「AIを活用したシステムなどは難しいが、学会や研究班に依頼し、診断アルゴリズムを準備することは可能」との考えを示したほか、「現在、センターでは、一部問い合わせには対応しているものの、主に情報提供・発信を行っている。今後は、より問い合わせに対応できるような機能を充実していく必要があるのではないか」とコメントしています。

 また渥美達也委員(北海道大学大学院医学研究科内科学講座 免疫・代謝内科学分野教授)は、「診断アルゴリズムは専門家に問い合わせればよい。問題は『誰が専門家なのか。どこに専門家がいるのか』であり、センターにはこの情報提供を期待したい」と要望しています。

 こうした意見を踏まえて、千葉勉委員長(京都大学大学院総合生存学館思修館特定教授)は、「難病医療支援ネットワークにおいては、難病情報センターや国立高度専門医療研究センター、研究班、学会といった『役者』はすでに揃っており、これらがいかにコミュニケーションをとるか、まさに『ネットワーク』構築が重要となる。難病情報センターについては、情報提供・発信機能に加えて、問い合わせや相談に応じる機能の充実も必要となるのではないか。また『どこの病院に、どのような専門家がいるのか』が分かるようなネットワーク構築や定期的な意見交換などが必要ではないか」と整理しました。今後、さらに議論を重ね、2018年度からの難病医療支援ネットワーク稼働を目指します。

 

 ところで菊地参考人や西澤正豊委員(新潟大学名誉教授 脳研究所フェロー)は、「難病医療支援ネットワークにおいて情報管理を行うオーガナイザーが必要ではないか」とも指摘しています。しかし、渥美委員の意見にもあるように、難病情報センターの情報を充実すれば、現場の医師が自ら専門医に円滑にコンタクトをとれるようになるため、「オーガナイザーを設置する積極的な理由」がどこにあるのかを問われることにもなり、慎重な検討が求められると言えそうです。

指定難病診断の遺伝子検査、「どこで実施されているのか」のリスト作成

 27日の委員会では「遺伝子検査の実施体制」も議論となりました。多くの指定難病では、診断基準に「特定遺伝子の変異」が含まれており、遺伝子検査が確実に行われる体制が整備されていることが患者にとって極めて重要となります(指定難病と診断されれば、医療費助成の対象となる)。現在、指定難病の診断に必要な検査については、すべて保険収載されており(D006-4遺伝学的検査、3880点)、患者負担は一定の範囲内に抑えられています。

 この点について厚労省は、▼検査の品質・精度の確保▼検査実施体制の整備▼カウンセリング体制の充実・強化▼地域の医療機関から遺伝子検査実施医療機関へ患者を紹介する仕組み▼対象患者の絞り込み▼専門人材の確保▼ゲノム情報解析に基づく治療法の選択―などを重要論点として掲げました。

 このうち「検査実施体制の整備」や「地域の医療機関から紹介する仕組み」などについて、多くの委員から「どの検査を、どの機関が実施しているのが必ずしも明らかになっていない」との指摘がありました。遺伝学的検査を実施する企業でも全種類の検査を行っているわけではなく、知り合いの研究者などが検査を行っていることを知らない場合などには、どこに検査を依頼すればよいのかが極めて分かりにくいといいます。この点、厚労省健康局難病対策課の担当者は「どの検査が、どの検査機関や研究班で実施されているのかを明示するリストを作成する」考えを明確にしました。

 また村田美穂(国立精神・神経医療研究センター病院長)らは「検査の種類によってはコストが高く、診療報酬の3880点では賄えないものもある」と指摘。検査点数引き上げの必要性などを訴えました。ただし、これは中央社会保険医療協議会で議論するテーマであり、学会などを通じて要望していくことが必要でしょう。

 

 なお、前述の論点の中で、「検査の品質・精度の確保」については社会保障審議会・医療部会で臨検法改正が検討され(関連記事はこちらこちら)、「カウンセリング」についてがん診療提供体制のあり方に関する検討会で「遺伝子カウンセラーの育成」などが議論されるなど(関連記事はこちらこちら)、すでに他部局で進められている部分も少なくありません。

  
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