2015年から16年にかけて在院日数短縮と病床利用率向上とを両立、ダウンサイジングの効果も―厚労省
2017.9.26.(火)
昨年(2016年)10月1日現在、活動中の医療施設は17万8911施設あり、うち一般病院は7380施設(前年よりも36施設減)。病院の病床数は156万1005床で、一般病床が89万1398床(同2572床減)、療養病床が32万8161床(同245床増)となっており、一般病床の平均在院日数は16.2日(同0.3日減)、病床利用率は75.2%(同0.2ポイント増)となった―。
このような状況が、厚生労働省が9月26日に公表した2016年の「医療施設(動態)調査・病院報告の概況」から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら、過去の資料をご覧になりたい方はこちら)(関連記事はこちら)。
病院のダウンサイジングがさらに進む
まず昨年(2016)年10月1日現在、全国で活動している医療施設数を見ると17万8911施設(休止・1年以上の休診中施設を含めると18万1052施設)で、前年より699施設・0.4%増加しました。
内訳を見ると、一般病院7380施設(前年に比べて36施設・0.5%減)、一般(医科)診療所10万1529施設(同534施設・0.5%増)などとなっています。有床診療所は7629施設で前年から332施設・4.2%減と、大幅減少が続いています。メディ・ウォッチでも繰り返しお伝えしているように(関連記事はこちらとこちら)、有床診の減少傾向には歯止めがかからず、すでに7000施設を切っていると考えられます。
病院について詳しく見てみると、開設者別では医療法人がもっとも多く5754施設(同17施設・0.3%増)、次いで公的1213施設(同14施設・1.1%減)が多くなっています。
病床規模別では、50-99床が2120施設(病院全体の25.1%)、100-149床が1423施設(同16.9%)、150-199床が1331施設(同15.8%)、200-299が1136施設(同13.5%)などとなっており、200床未満の中小規模病院が全体の7割弱(68.7%)を占めています。我が国の医療提供体制の特徴の1つでもある「小規模病院が多い」状況が依然として続いています。
また、病床規模を縮小した病院は301、逆に増床した病院が122となっており、多くの病院でダウンサイジングを行っている状況も変わっていません。平均在院日数の短縮が進む中で、従前の規模では病床利用率を維持することができず、適正規模に向かっていると考えられます。
人口10万人当たりの一般病床数、依然として高知と埼玉で2.2倍の格差
次に病床数を見てみると、昨年(2016)年10月1日現在、日本全国で166万4525床のベッドがあり、前年に比べて9144床・0.5%減少しています。医療法に定められた病床の種別に見ると、▼一般病床が89万1398床(前年に比べて2572床・0.3%減)▼療養病床が32万8161床(同245床・0.1%減)▼精神病床が33万4258床(同2024床・0.6%減)▼結核病床が5347床(同149床・2.7%減)▼感染症病床が1841床(同27床・1.5%増)―となっています。
人口10万人当たりの一般病床数は702.3床で、前年に比べて1.03床減少しています。都道府県別に見ると、もっとも多いのは高知県で1093.8床(同16.9床増)、次いで大分県1009.87.9床(同1.9床増)、北海道984.7床(同4.5床増)など。逆にもっとも少ないのは埼玉県で491.7床(同1.1床増)、次いで神奈川県509.2床(同2.2床増)、愛知県533.2床(同1.8床減)という状況です。最多の高知県と最低の埼玉県の格差は2.2倍で、昨年よりも僅かながら格差は広がっています。高齢化の状況や、近隣自治体の病床整備状況(患者の流出)とも関係しますが、それだけで2.2倍のベッド整備格差が生まれるとは考えにくく、経済財政諮問会議や財政制度等審議会などが強く求める「格差の是正」に向けた方策が今後進められることになるでしょう。
平均在院日数、高知と神奈川で依然として1週間以上の開き
次に一般病院における患者数や稼働状況などを見ていきましょう。
昨年(2015年)1年間における一般病床の1日平均在院患者数は67万449人(前年から0.1%の微増)、1日平均新入院患者数は4万1596人(同1.5%増)、1日平均退院患者数は4万955人(同1.3%増)となりました。新入院患者数・退院患者数が同程度の増加を見せており、後述するように平均在院日数の短縮に伴う「回転率の向上」が進んでいると考えられます。
一般病院の外来については、1日平均で129万7906人の患者が来院しており、前年に比べて0.8%減少しています。
一般病床における平均在院日数は16.2日で、前年よりも0.3日短縮しました。DPCの拡大および医療内容の標準化の進展や、診療報酬による誘導などによって一般病床の平均在院日数は短縮を続けています。
ただし都道府県別に見ると大きなバラつきがあり、最長は高知県の21.3日(前年に比べて0.2日減)、次いで熊本県の20.1日(同0.1日減)、和歌山県の19.4日(同0.3日減)と続いています。逆に最短は神奈川県の13.8日(同0.1日減)、東京都の13.9日(同0.2日減)、愛知県の14.0日(同0.2日減)で短くなっています。最長の高知県と最短の神奈川県では7.5日と、一週間以上の開きがあります(関連記事はこちら)。在院日数の延伸は、一見「患者に優しい」ようにも思えますが、ADL低下や院内感染リスクの高まりなどの弊害があり、決して好ましいものではありません(もちろん、必要な在院日数の確保は必要)。後述するような「病床利用率を確保するために、在院日数短縮の取り組みを放棄する」ようなことがあってはなりません(関連記事はこちらとこちら)。
一般病床の病床利用率は75.2%で前年に比べて0.2ポイント向上しました。在院日数の短縮は「空床」を生むために、同時に新規患者の獲得をしなければ医業収入が低下してしまします。この点、2015年から2016年にかけては「平均在院日数の短縮」と「病床利用率の向上」とを両立できていることが伺えます。もっとも、この状況は基本的に全国の病院で同じであるため、新規患者の獲得を継続することは容易でありません。今般の病床利用率向上は、「集患」対策の効果だけでなく、上述した病床規模の縮小(ダウンサイジング)の影響もあると考えられます。
最後に、一般病院(大学附属病院など医育機関を除く)における100床当たり従事者数を見てみると、▽医師15.9人(前年に比べて0.3人増)▽歯科医師0.8人(同増減なし)▽薬剤師3.6人(同0.2人増)▽看護師57.3人(同1.5人増)▽准看護師7.3人(同0.4人減)▽診療放射線技師など3.4人(同0.1人増)▽臨床検査技師など4.1人(同増減なし)▽管理栄養士など1.8人(同増減なし)―という状況で、人員体制が手厚くなっている状況が伺えます。ここにもダウンサイジングの効果が現れていると言えそうです。
ただし都道府県別に人口10万人当たりの医師数を見ると、全国平均では171.5人ですが、もっとも多い高知県では252.3人、もっとも少ない埼玉県では121.4人となっており、大きな格差があることが分かります。現在、厚労省の検討会で「医師の地域・診療科偏在の是正」に向けた議論が進んでおり、年末までに法改正も視野にいれた実効性ある策が示される見込みです(関連記事はこちらとこちら)。
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