「2月分」の経年比較でも、在院日数短縮と病床利用率向上とを両立―病院報告、17年2月分
2017.6.8.(木)
ここ数年における「2月分」の平均在院日数・病床利用率を見ると、「平均在院日数」は短縮傾向にあり、同時に「病床利用率」は2016年・17年と連続で上昇しており、オールジャパンでは「病院が空床対策に成功している」可能性がある―。
このような状況が、厚生労働省が7日に発表した2017年2月分の病院報告から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。
平均在院日数は減少傾向、病床利用率は2016・17年と連続で上昇
厚労省は毎月、(1)1日平均患者数(2)平均在院日数(3)月末病床利用率―について集計し、「病院報告」として公表しています(関連記事は「1月」こちらとこちらとこちら))。
(1)の1日平均患者数は、今年(2017年)2月には病院全体で入院129万272人(前月比3万6086人・2.9%増)、外来137万7738人(同11万2398人、8.9%増)で、入院・外来ともに増加しています。
病院の一般病床において入院患者数は70万9384人で、前月に比べて3万1659人・4.7%増加しました。また病院の療養病床における入院患者数は29万1624人で、前月に比べて3467人・1.2%増加しています。
(2)の平均在院日数は、病院全体では28.1日で、前月から2.0日短縮しました。病院の病床種別に見ると、▼一般病床16.5日(前月比0.8日短縮)▼療養病床139.7日(同13.8日短縮)▼介護療養病床288.4日(同33.8日短縮)▼精神病床267.1日(同22.7日短縮)▼結核病床60.5日(同5.6日短縮)―となり、すべての病床種別で平均在院日数は短縮しています。
(3)の月末病床利用率については、病院全体では81.6%で、前月に比べて0.5ポイントとわずかながら低下してしまいました。病院の病床種別に見ると、▼一般病床77.8%(前月から1.1ポイント低下)▼療養病床88.8%(同0.6ポイント上昇)▼介護療養病床90.4%(同0.6ポイント上昇)▼精神病床85.8%(同0.1ポイント上昇)▼結核病床32.1%(同0.7ポイント上昇)―という状況です。
ここで、一般病床における「2月分」の平均在院日数を5年前から見てみると、▼2012年:17.9日→(0.2日短縮)→▼2013年:17.7日→(0.2日短縮)→▼2014年:17.5日→(0.5日短縮)→▼2015年:17.0日→(0.5日短縮)→▼2016年:16.5日→(増減なし)→▼2017年:16.5日―と推移しており、短縮傾向が伺えます。「1月分」の年次推移をみても、2016年から17年にかけて平均在院日数の増減はなく「短縮傾向がストップ」したようにも思えます。「3月」以降の状況に注目すべきでしょう。
一方、病床利用率は、▼2012年:78.9%→(0.6ポイント低下)→▼2013:78.3%→(1.1ポイント低下)→▼2014:77.2%→(3.5ポイント低下)→▼2015年:73.7%→(2.9ポイント上昇)→▼2016年:76.6%→(1.2ポイント上昇)→▼2017年:77.8%▼―という状況です。こちらも「1月分」の年次推移と同様に「2015年が底」のように見えます。
メディ・ウォッチで度々お伝えしていますが、「平均在院日数の短縮」は、7対1病院では重症度、医療・看護必要度該当患者割合の上昇と大きく関係する(関連記事は関連記事はこちら)ほか、DPCのII群要件の1つである「診療密度」向上に大きく寄与します。さらに経営面だけでなく、院内感染やADL低下のリスクを低く抑えることができ、医療の質向上のためにも重要です。
一方、単純な在院日数短縮は病床利用率の低下、つまり「空床」発生要因になります。そこで、在院日数短縮と同時に「新規入院患者の獲得」などの対策をとらなければいけません。例えば、近隣のクリニックや中小病院との連携強化による重症新患の紹介増や、救急搬送患者の積極的受け入れなどが求められます。
「2月分」の経年比較からは、▼平均在院日数の短縮は順調に進んでいる▼病床利用率は2015年以降上昇傾向にある—ことが分かり、2016年・17年だけを見れば「在院日数の短縮」と「稼働率の上昇」との両立が実現できているようにも見えます。
ただし、少子化により地域の患者数が減少していく中では、「空床」(増患)対策にも限界がある(ライバル病院も同じ対策をとります)ことから、地域ニーズ(人口動態など)や他院の動きをしっかりと見極めた上で、「ダウンサイジング」(病床の削減)や「近隣病院との再編・統合」といった選択肢も視野に入れた病床戦略を立てる必要があります(関連記事はこちら)。
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