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病床利用率維持のため、在院日数の短縮をストップしている可能性―病院報告、17年4月分

2017.8.10.(木)

 ここ5年における「4月分」の平均在院日数・病床利用率を見ると、「平均在院日数」は短縮傾向にあったものの、2016年以降「頭打ち」になっている可能性がある。ただし、この背景には、病床利用率維持のために在院日数短縮をストップしている可能性もある—。

 このような状況が、厚生労働省が8日に公表した2017年4月分の病院報告から伺えます(厚労省のサイトはこちら)。

2016年までは在院日数が一貫して短縮したが、そこから頭打ち

 厚労省は毎月、(1)1日平均患者数(2)平均在院日数(3)月末病床利用率―について集計した「病院報告」を公表しています(2017年3月分の状況はこちら、2月分の状況はこちら、1月分の状況はこちら)。

 (1)の1日平均患者数は、今年(2017年)4月には病院全体で入院125万3122人(前月比1万6849人・1.3%減)、外来130万1963人(同8万8943人、6.4%減)で、入院はやや減少、外来は大幅減少となりました。病院の一般病床における入院患者数は67万6208人で、前月に比べて1万3929人・2.0%減少しました。また病院の療養病床における入院患者数は28万9420人で、前月に比べて1740人・0.3%の微減となっています。

一般病床の病床利用率は、今年(2017年)3月から4月にかけて、前月と同様に2.7ポイントと大幅に低下してしまった

一般病床の病床利用率は、今年(2017年)3月から4月にかけて、前月と同様に2.7ポイントと大幅に低下してしまった

 
 (2)の平均在院日数を見ると、病院全体では28.8日で、前月から0.6日延伸してしまっています。病院の病床種別に見ると、▼一般病床16.5日(前月比0.2日延伸)▼療養病床146.5日(同5.0日延伸)▼介護療養病床293.6日(同1.2日短縮)▼精神病床272.0日(同12.0日短縮)▼結核病床68.5日(同5.0日延伸)―となり、介護療養を除き延伸しています。
2017年4月、病院の1日平均患者数は入院ではやや減少、外来では大幅減少となった

2017年4月、病院の1日平均患者数は入院ではやや減少、外来では大幅減少となった

 
 (3)の月末病床利用率については、病院全体では77.6%で、前月に比べて1.7ポイント低下してしまっています。病院の病床種別に見ると、▼一般病床71.3%(前月から2.7ポイント低下)▼療養病床88.0%(同0.5ポイント低下)▼介護療養病床90.9%(同0.3ポイント上昇)▼精神病床85.5%(同0.1ポイント上昇)▼結核病床33.0%(同0.9ポイント上昇)―という状況です。病床種別で異なりますが、とくに一般病床について前月に続く大幅低下が気になります。
一般病床の平均在院日数は、今年(2017年)3月から4月にかけて0.2日延伸してしまった

一般病床の平均在院日数は、今年(2017年)3月から4月にかけて0.2日延伸してしまった

 
 ここで、一般病床における「4月末分」の平均在院日数を5年前から見てみると、▼2012年:17.9日→(0.8日短縮)→▼2013年:17.1日→(0.3日短縮)→▼2014年:16.8日→(0.4日短縮)→▼2015年:16.4日→(0.2日短縮)→▼2016年:16.2日→(0.3日延伸)→▼2017年:16.5日―と推移しています(厚労省のサイトはこちら、下にスクロールすると毎月の状況が示されています)。2016年までは一貫した短縮傾向が見られましたが、2017年にかけては平均在院日数は延伸しており、「2月末分」「3月分」と同じく「短縮傾向がストップ」したように見えます。在院日数の短縮に限界が来ている(後述するように利用率維持のために短縮させていない可能性もある)のか、今後の動向にさらに注視する必要があります。

 一方、病床利用率は、▼2012年:71.0%→(1.7ポイント上昇)→▼2013:72.7%→(0.3ポイント低下)→▼2014:72.4%→(0.8ポイント上昇)→▼2015年:73.2%→(4.6ポイント低下)→▼2016年:68.6%→(2.7ポイント上昇)→▼2017年:71.3%―という状況です(厚労省のサイトはこちら、下にスクロールすると毎月の状況が示されています)。こちらは変動が大きく、一貫した傾向は見て取れません。

 メディ・ウォッチでも毎回お伝えしていますが、「平均在院日数の短縮」は、7対1病院では重症度、医療・看護必要度該当患者割合の上昇と大きく関係するほか、DPCのII群要件の1つである「診療密度」向上に大きく寄与するなど、経営面では極めて重要なテーマです。さらに院内感染やADL低下のリスクを低く抑えるなど、医療の質向上にも密接に関係します。

 ただし、単純な在院日数短縮は病床利用率の低下(空床の発生)につながり、経営面ではマイナスの要素も含んでいます。そのため、利用率維持のために在院日数の短縮を控える(施設基準を維持できる範囲でコントロールする)ことが行われがちですが、これは好ましい姿とは言えません。在院日数短縮と同時に「新規入院患者の獲得」などの対策、近隣のクリニックや中小病院との連携強化による重症新患の紹介増や、救急搬送患者の積極的受け入れなどが肝要です。この点、「4月分」の経年比較からは、両者の実現は十分にはできておらず、好ましくない「利用率維持のために在院日数短縮をストップしている」可能性が伺えます。

 この点、今後、少子化により地域の患者数そのものが減少していく(地域によってはすでに高齢患者が減少しはじめているところもある)中では、「空床」対策の効果が表れにくくなってきます(関連記事はこちら)。地域医療構想や他院の動き、さらには自院の機能、地域の医療ニーズ(人口動態や疾病構造など)などを十分に踏まえた上で、「ダウンサイジング」(病床の削減)や「近隣病院との再編・統合」といった選択肢を真剣に考える時期に差差し掛かっていると言えそうです(関連記事はこちら)。

 
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