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「3月分」の経年比較、在院日数の短縮に限界が来ている可能性―病院報告、17年3月分

2017.7.4.(火)

 ここ数年における「3月分」の平均在院日数・病床利用率を見ると、「平均在院日数」は短縮傾向にあったが「頭打ち」になっている可能性がある―。

 このような状況が、厚生労働省が7日に発表した2017年3月分の病院報告から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。

2016年までは在院日数が一貫して短縮したが、そこから頭打ちの可能性

 厚労省は毎月、(1)1日平均患者数(2)平均在院日数(3)月末病床利用率―について集計し、「病院報告」として公表しています(2017年2月分の状況はこちら、1月分の状況はこちら)。

 (1)の1日平均患者数は、今年(2017年)3月には病院全体で入院126万9971人(前月比2万301人・1.6%減)、外来139万906人(同1万3168人、1.0%増)で、入院は減少、外来は増加となりました。病院の一般病床における入院患者数は69万137人で、前月に比べて1万9247人・2.7%増加しました。また病院の療養病床における入院患者数は29万1160人で、前月に比べて464人・0.2%の微増となっています。

2017年3月、病院の1日平均患者数は入院では減少、外来では増加となった

2017年3月、病院の1日平均患者数は入院では減少、外来では増加となった

 
 (2)の平均在院日数は、病院全体では28.2日で、前月から0.1日延伸してしまいました。病院の病床種別に見ると、▼一般病床16.3日(前月比0.2日短縮)▼療養病床141.5日(同1.8日延伸)▼介護療養病床294.8日(同6.4日延伸)▼精神病床260.0日(同7.1日短縮)▼結核病床63.5日(同3.0日延伸)―となり、病床種別によって異なる動きをしています。
一般病床の平均在院日数は、今年(2017年)2月から3月にかけて0.2日短縮したが、頭打ちになっていないか、今後の動向を注視する必要がある

一般病床の平均在院日数は、今年(2017年)2月から3月にかけて0.2日短縮したが、頭打ちになっていないか、今後の動向を注視する必要がある

 
 (3)の月末病床利用率については、病院全体では79.3%で、前月に比べて2.3ポイント低下しています。病院の病床種別に見ると、▼一般病床74.0%(前月から3.8ポイント低下)▼療養病床88.5%(同0.3ポイント低下)▼介護療養病床90.6%(同0.2ポイント上昇)▼精神病床85.4%(同0.4ポイント低下)▼結核病床32.1%(同増減なし)―という状況です。一般病床の大幅低下が気になります。
一般病床の病床利用率は、今年(2017年)2月から3月にかけて3.8ポイントと大幅に低下してしまった

一般病床の病床利用率は、今年(2017年)2月から3月にかけて3.8ポイントと大幅に低下してしまった

 
 ここで、一般病床における「3月末分」の平均在院日数を5年前から見てみると、▼2012年:17.9日→(0.2日短縮)→▼2013年:17.7日→(0.3日短縮)→▼2014年:17.4日→(0.8日短縮)→▼2015年:16.6日→(0.5日短縮)→▼2016年:16.1日→(0.2日延伸)→▼2017年:16.3日―と推移しており(厚労省のサイトはこちら、下にスクロールすると毎月の状況が示されています)、短縮傾向が伺えます。ただし、2016年から17年にかけて平均在院日数は延伸しており、「2月末分」と同様に「短縮傾向がストップ」したように見えます。在院日数の短縮に限界が来ているのか、今後の動向にさらに注目する必要があります。

 一方、病床利用率は、▼2012年:72.4%→(1.4ポイント低下)→▼2013:71.0%→(1.8ポイント上昇)→▼2014:72.8%→(0.7ポイント上昇)→▼2015年:73.5%→(0.9ポイント上昇)→▼2016年:74.4%→(0.4ポイント上昇)→▼2017年:74.0%―という状況です(厚労省のサイトはこちら、下にスクロールすると毎月の状況が示されています)。こちらは変動が大きく、一貫した傾向はまだ見えてきていません。

 メディ・ウォッチで度々お伝えしていますが、「平均在院日数の短縮」は、7対1病院では重症度、医療・看護必要度該当患者割合の上昇と大きく関係するほか、DPCのII群要件の1つである「診療密度」向上に大きく寄与するなど、経営面では極めて重要なテーマです。さらに院内感染やADL低下のリスクを低く抑えることにもつながり、医療の質向上のためにも重要です。

 もっとも、単純な在院日数短縮は病床利用率の低下(空床の発生)につながり、経営面ではマイナスの要素も含んでいます。そこで、在院日数短縮と同時に「新規入院患者の獲得」などの対策、近隣のクリニックや中小病院との連携強化による重症新患の紹介増や、救急搬送患者の積極的受け入れなど、をとることが肝要です。この点、「3月分」の経年比較からは、両者の実現ができているのか、まだ明確な傾向をうかがい知ることは困難です。

 今後、少子化により地域の患者数そのものが減少していく(地域によってはすでに高齢患者が減少しはじめているところもある)中、将来不安もあってか入院・外来受療率が低下しています。加えて各病院が増患対策を進めるため、「空床」対策の効果が表れにくくなってきます(関連記事はこちら)。自院の機能、地域の医療ニーズ(人口動態など)や他院の動きをしっかりと見極めた上で、「ダウンサイジング」(病床の削減)や「近隣病院との再編・統合」といった選択肢も視野に入れた病床戦略を検討する必要があります。

 
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