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GemMed塾 看護モニタリング

2017年9月までに751件の医療事故が報告、院内調査は63.4%で完了―日本医療安全調査機構

2017.10.13.(金)

 今年(2017年)9月に医療事故調査・支援センター(以下、センター)に報告された医療事故は35件。一昨年(2015年)10月に医療事故調査制度がスタートしてから、累計で751件の医療事故が報告され、うち63.4%・476件で院内調査が完了し、遺族や医療機関からのセンターへの調査依頼は累計で43件となった―。

 こうした状況が、日本で唯一のセンターとして指定されている「医療安全調査機構」から10月10日に公表されました(機構のサイトはこちら)。

制度発足から、外科で127件、内科で96件の医療事故が発生

 一昨年(2015年)10月に医療事故調査制度がスタートしました。すべての医療機関において、院長などの管理者が予期しなかった「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡・死産」のすべてを、センターに報告することが義務となっています。医療事故調査制度は、「責任追及」ではなく、事故の原因を究明する中で「再発防止」策を構築することを狙ったもので、センターでは今年(2017年)3月に再発防止策第1弾「中心静脈穿刺合併症に係る死亡の分析―第1報―」を、9月に第2弾「急性肺血栓塞栓症に係る死亡の分析」を公表しています

 医療事故調査制度の流れをおさらいすると、▼管理者が医療事故を確認した場合、速やかにセンターに事故報告の旨を報告する→▼当該医療機関で、事故原因の調査【院内調査】を行い、その結果をセンターに報告する→▼当該医療機関が、調査結果に基づいて事故の内容や原因について遺族に説明する(調査結果報告書などを提示する必要まではない)→▼センターが、事故事例を集積、分析し具体的な再発防止策などを練る—というものです。

 
我が国唯一のセンターとして指定されている医療安全調査機構は、毎月、医療事故報告の状況を公表しており(前月の状況はこちら)、今年(2017年)9月には、新たに35件の医療事故が報告されました。制度発足からの累計報告件数は751件となっています。

 9月報告の内訳は、病院からが34件、診療所からが1件。診療科別に見ると、▼内科7件▼循環器内科4件▼外科3件▼―などで多くなっています。なお、これまでの751件を診療科別にみると、▼外科127件(16.9%)▼内科96件(12.8%)▼消化器科64件(8.5%)▼整形外科59件(7.9%)―などで多い状況です。

2017年9月に、新たに35件の医療事故が報告され、制度発足(2015年10月)からの累計で751件の医療事故が報告されている

2017年9月に、新たに35件の医療事故が報告され、制度発足(2015年10月)からの累計で751件の医療事故が報告されている

 
 センターに報告しなければならない医療事故は、医療機関で生じたすべての死亡・死産事例ではなく、院長などの管理者が▼予期しなかった▼医療に起因し、または起因すると疑われる—死亡・死産事例に限定されます。例えば「手の施しようのない重篤な状態で搬送された救急患者」は「死亡が予期される」ため報告対象から除外されます。

医療機関では「患者が予期せぬ死亡を遂げたが、センターに報告すべき医療事故だろうか?」、あるいは「初めての報告となるが、センターへの報告はどのように行えばよいのか?」といった疑問が生じると思われます。また遺族側には「家族が医療機関で死亡したが、医療事故として報告されていない。隠蔽されているのでは?」といった不信感をぬぐいされない方もおられることでしょう。こうした疑問を解決するために、センターでは医療機関・遺族からの相談に対応しており、今年(2017年)9月に、新たに161件の相談がセンターに寄せられました。制度発足からの累計は3732件となりました。

新規相談の内訳は、▼医療機関から91件▼遺族などから58件▼その他・不明12件―です。

 医療機関からの相談内容としては「報告の手続き」がもっとも多く57件(医療機関からの相談の62.6%)。「医療事故に該当するか否かの判断」は15件(同じく16.5%)にとどまっており、制度が医療現場への浸透し、理解が進んでいることが分かります。厚労省は医療事故調査制度の運用改善(医療事故該当性の判断などを標準化するための「支援団体等連絡協議会」を設置するなど)を昨年(2016年)6月に行われており、その効果も大きいと考えられます(関連記事はこちらこちら

 一方、遺族などからの相談内容としては、依然として「医療事故に該当するか否かの判断」が最多で、34件(遺族などからの相談の58.6%)となっています。ただしこの中には、「制度開始前の事例」「生存事例」など、そもそも「報告すべき医療事故でない」ものも含まれており、「一般国民への制度浸透」が今後の重要課題の1つと言えるでしょう(関連記事はこちら)。

センターへの相談は2017年9月に161件あり、うち91件が医療機関から、58件が遺族などからのものとなっているが、相談の中には「制度の対象外の事例」も含まれている点には注意が必要である

センターへの相談は2017年9月に161件あり、うち91件が医療機関から、58件が遺族などからのものとなっているが、相談の中には「制度の対象外の事例」も含まれている点には注意が必要である

 
 医療事故調査制度の目的は「再発防止」にあることから、事故発生医療機関において原因究明に向けた調査【院内調査】を行い、その過程で院内体制やルールの見直し、遵守の徹底などを行うこととされています。今年(2017年)9月に新たに院内調査が完了した事例は25件で、制度発足からの累計では476件となりました。これまでに報告された全751件のうち63.4%で院内調査が完了していることになります。調査スピードは前月に比べて若干アップしています。
医療事故を報告した医療機関のうち、新たに院内調査が完了したものは2017年9月に25件、制度発足からの累計で476件となった(報告された事故全体の63.4%)

医療事故を報告した医療機関のうち、新たに院内調査が完了したものは2017年9月に25件、制度発足からの累計で476件となった(報告された事故全体の63.4%)

 
 ところで、遺族の中には「院内調査結果に納得できない」「院内調査が遅すぎる(何かを隠すために時間稼ぎをしているのではないか)」と感じる人もいることでしょう。また小規模な医療機関などでは、「自力での院内調査が困難」というところもあります(医師会や病院団体などの支援団体によるサポートは整備されているが)。そこで、センターは「遺族や医療機関からの調査依頼を受け付ける」体制も整えています(院内調査が時間・内容ともに適正に実施されているのか、という観点での調査が中心)。この点、今年(2017年)9月にはセンターへなされた調査依頼は1件(遺族からの調査依頼)で、制度発足からの累計は43件(遺族から32件、医療機関から11件)となりました。うち39件が「院内調査結果報告書の検証中」(院内調査が適切に行われたかの確認)、3件が「院内調査の終了待ち」となっています。

  
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