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国・自治体・医療関係者が連携して、地域医療構想・医師偏在対策・医師働き方改革を推進することが必要―医療政策研修会

2020.2.14.(金)

少ない医療関係者で、増加する高齢患者に適切な医療サービスを提供する必要があり、そのためには、国・自治体・医療関係者が連携して、地域医療構想・医師偏在対策・医師働き方改革を推進していくことが極めて重要である―。

厚生労働省が2月14日に開催した「都道府県医療政策研修会」(以下、研修会)で、厚労省医政局地域医療計画課の鈴木健彦課長はこういった点を強調しました。

2月14日に開催された、「令和元年度 第3回医療政策研修会及び第3回地域医療構想アドバイザー会議」

公立病院等の機能転換再検証に向けたデータ提供、再編統合の方向を定めるものでない

2022年度から、いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になりはじめ、2025年度にはすべてが後期高齢者となります。このため、今後、急速に医療ニーズが高まっていきます。その後、2040年度にかけて高齢者の増加スピードそのものは鈍化するものの、支え手である現役世代人口が急速に減少していきます。医療保険制度はもちろん、医療提供体制の基盤が極めて脆くなることから「医療提供体制改革」が急務となります。

医療提供体制改革については、▼地域医療構想の実現▼医師偏在の解消▼医師をはじめとする医療従事者の働き方改革―の3本柱が立てられており、これらは相互に連環するため、「三位一体改革」と呼ばれることも少なくありません。鈴木地域医療計画課長は、国・自治体・医療関係者が一体となって、この三位一体改革を進めていくことの重要性を強調するとともに、改革のポイントを次のように整理しています。

2月14日に開催された医療政策研修会の冒頭、厚生労働省医政局地域医療計画課の鈴木健彦課長は、国・自治体・医療関係者が連携して医療提供体制改革を進めていくことの重要性を強調した



【地域医療構想の実現】
▽昨秋(2019年秋)に公立・公的等医療機関の診療データ分析を提供した(いわゆる424病院)後に、自治体や医療関係者との意見交換、協議を通じて「現場の意見」を拝聴した。この現場の意見を真摯に受け止め、1月17日に都道府県に宛てて「再検証への対応」を整理した通知を発出している。診療データ分析の趣旨は、あくまでも「地域医療構想調整会議の議論を活性化する」ことを目的としており、分析結果が医療機関の統廃合の方向を決めるものではない(関連記事はこちら)。



▽骨太方針2019(経済財政運営と改革の基本方針2019)では、国が「医療機関の再編統合・機能転換」を技術的・財政的に支援する「重点支援区域」を設定することとされ、1月末に第1回の選定(3県・5地域)を行った。重点支援区域への申請は随時募集しており、各都道府県においては「地域の地域医療構想調整会議の議論」を踏まえたうえで、この仕組みの活用も検討してほしい(関連記事はこちらこちら)。

【医師偏在の解消】
▽2018年の医療法・医師法改正に基づき、地域間の医師偏在を解消し、地域で必要な医師を確保できるように、現在、各都道府県で「医師確保計画」「外来医療計画」の策定が進められている。医学部生の段階から専門研修までを通じて、地域でどのように医師を確保していくのかを計画に位置付けることとなり、どのような具体的方策が考えられるのか、国・自治体・医療関係者間で意見交換を行っていく必要がある(関連記事はこちらこちら)。

【医療従事者の働き方改革】
▽2018年度末に「医師の働き方改革に関する検討会」が報告書をとりまとめ、現在、2024年4月の施行(原則として勤務医の時間外労働上限を960時間とし、ただし救急病院や研修医等について特例的・暫定的に1860時間とする)に向けて、「医師の働き方改革の推進に関する検討会」で詳細な制度設計を論語するとともに、医師の勤務環境改善や医師から他職種へのタスク・シフティングについても検討を進めている。地域医療体制を確保したうえで、医師・医療従事者の働き方改革を進めるには、都道府県の「地域医療構想担当者」「医師確保担当者」「医師の勤務環境改善の担当者」が連携することが極めて重要である(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちらこちらこちら こちら)。



関係の検討会等(地域医療構想に関するワーキンググループ、医師需給分科会、医師の働き方改革の推進に関する検討会など)の議論経過も睨みつつ、地域で関係者が膝を突き合わせて本音で議論することが求められるでしょう。

病床機能報告制度、定量的基準設定などの工夫を行ってはどうか

また研修会では、▼地域医療構想の実現▼医師の働き方改革▼2020年度予算案―について厚労省担当者から自治体関係者や地域医療構想アドバイザーに詳細な説明が行われました。例えば、地域医療構想については、鈴木地域医療計画課長が説明したように、「診療実績データに基づき、『急性期医療の実績が特に少ない』あるいは『類似の急性期機能を持つ病院が近接している』ような公立・公的等病院(当初424施設 → 精査の結果、約440施設に)について再編統合・機能転換を再検証するよう求めている」ことや、「国が再編統合・機能転換に関する財政的・技術的支援を直接行う重点支援区域を3県・5地域選定した」ことなどを詳説しています。

この点に関連して、厚労省担当者と出席者との間で「再検証の進め方」に関する確認をはじめとする質疑が行われました。その中で、八幡平市病院事業管理者で岩手県立病院名誉院長でもある望月泉氏(日本病院会・岩手県支部長、100超のがん診療連携拠点病院等が集い、がん診療の質向上を目指す「CQI研究会」代表世話人なども務める)は、「地方の『地域に1か所しかない』ような小規模公立・公的等病院では、いわゆる軽症急性期(sub acute)を中心とする広範な機能を担っており、『急性期』として病床機能報告を行うことが多い。しかし病床機能報告では、高度急性期・急性期・回復期・慢性期の各機能について定量的な基準はなく、報告で悩むことも多い。急性期の中で、軽症急性期を独自に分けて報告を求めている自治体もあり、病床機能報告制度について何らかの工夫を考えるべきではないか」と提案。厚労省医政局地域医療計画課の担当者も「今後、例えば『回復期とは何か』を議論し、整理を試みたい」との考えを示しています。

診療実績の極めて乏しい公立・公的等医療機関について、再編統合・機能転換の再検証が求められる背景には、「地域医療構想で規定された機能別ベッド数」と「病床機能報告による機能別ベッド数」との間に極めて大きな乖離がある(もちろん考え方が異なるので同一にはなり得ない)という点があります。しかし、そこには「定量的基準がないため、どの機能として報告すれば良いか分からない。回復期には回復期リハビリ病棟のイメージがあるので、とりあえず急性期として報告しておこう」などと考える医療機関も少なくないことから、望月氏は「より報告しやすくなるよう、基準の解釈などをより明確にする」などの工夫を求めるものです。一部については「機能」と「入院基本料・特定入院料」との紐づけが一定程度行われており、さらなる精緻化が検討される可能性もありそうです。



なお、医師の働き方改革を進める大前提として、労務管理の徹底(勤怠管理や36協定の締結など)があります。この点について社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長の神野正博氏(全日本病院協会副会長)は「36協定の締結について労働基準監督署から『時間外同労の上限は720時間である』と指導を受けたが、おかしいのではないか」と質問。これに対し、厚労省担当者は「現在、医師については時間外労働の上限は法定されておらず、これを2024年4月から原則として960時間に定めるものである。誤った措置を行わないよう、労働基準監督署に指導等を行っている」旨の答弁が行われています。

36協定を結ばなければ、法律上は一切の時間外労働をさせることはできません。しかし、少なくない医療機関ではこの36協定すら結んでおらず、2024年4月に向けて「まず第一歩として、36協定を労働者代表や労働組合と結ぶところから始める」(前提として勤怠管理の徹底も必要である)ことが重要です。労働基準監督署にも、制度の正しい理解と、併せて医療現場のおかれている難しい状況の把握が求められます。



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