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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

老化に伴い交感神経の筋肉サポート機能が弱まって「筋力が低下」、筋緊張が生じやすくなり「運動能力が低下」―都健康長寿医療センター研究所

2023.5.24.(水)

老化により筋力の低下、運動機能の低下が生じるが、この背景には、老化に伴って「交感神経の筋力をサポートする働きが弱まる」ことと、「単独で筋緊張が生じる」ことが深く関与している—。

東京都健康長寿医療センター研究所が5月17日に公表した研究成果から、こうした点が明らかになりました(研究所のサイトはこちら)。

老化による筋力低下・運動機能低下には交感神経が深く関与

Gem Medでも繰り返し報じているとおり、未曽有の少子高齢化が進行。少子化により少なくなる一方の支え手」(サービス提供者、費用負担者)で、高齢化により増大する一方の高齢者(サービス利用者、受益者)を支えなければならず、「どのように効率的に要介護者を支えていくか」(サービス提供の生産性向上、介護費の負担の公平化など)とともに、「要介護者の発生をいかに防止していくか、要介護状態になったとしても、いかに重度化を防止するか」が重要になっています。

そうした中で都健康長寿医療研究センターは今般、「老化による筋力低下には、交感神経が関わっている」ことを明らかにしました。

老化は「四肢の筋量、筋力、運動機能が著しく低下する進行性のサルコペニア」を引き起こします。サルコペニアは「日常生活に支障を来してしまう」「死亡リスクを倍増させてしまう」ため、その対策が非常に重要となります。

サルコペニアでは、「筋量の減少に比べ、筋力の減少の程度が大きい」ことが分かっています(通常、筋力と筋量は比例が、サルコペニアでは筋量が一定程度あっても筋力が弱くなる特徴がある)。この「筋量と筋力の乖離」原因は明らかになっていませんが、(a)筋が硬くなる(b)神経性調節機能が低下する—ことなどが関与しているのではないかと推測されています。

ところで、都健康長寿医療センター研究所・堀田晴美研究部長らの研究グループでは、これまでに「後肢筋が収縮する → 交感神経の反射性活動が誘発される → 後肢筋の収縮力をサポートする」という形で、「骨格筋と交感神経との間にフィードバック機構がある」ことを明らかにしています。

ここから、上記(b)に関連して「交感神経調整機能が低下する → フィードバック機構が低下する → 筋肉の収縮力サポートが弱まる → 筋力が低下する」可能性が伺えます。



そこで研究グループでは、若齢と老齢のラットを用いて「後肢の筋収縮に対する交感神経の作用」を調査。

(1)後肢への交感神経の専用経路(腰部交感神経幹)を切断、あるいは刺激して「交感神経活動を変化」させると、運動神経刺激に伴う「後肢筋の収縮力が変化」する(上述のフィードバック機構を再確認)
→この作用には、老若に関わらず「α型とβ型の両方のアドレナリン受容体が関与」する

(2)交感神経を切断した場合の「筋力の低下率」は、老齢ラットでは、若齢ラットの半分であった(下図「左」)
→筋力低下の程度は、筋萎縮の程度と相関していた
→「筋萎縮が進む」ほど、「交感神経の寄与率が低下」していた

(3)交感神経のみを刺激した時にしばしば見られる「αアドレナリン受容体を介した筋緊張の増加」は、老齢ラットで増大していた(下図「右」)。

老化による筋力低下・運動機能低下には交感神経が深く関与



これらの結果から研究グループでは、▼「骨格筋と交感神経の間のフィードバック機構が加齢により低下する」ことが、高齢者のサルコペニアを加速する要因である▼「交感神経の興奮のみで生じる筋緊張の増加」(上記(3))は、多くの高齢者に見られる筋硬直や深部痛の発症に関係している可能性がある▼「収縮筋と交感神経の間のフィードバック機構低下は、筋萎縮の程度と相関していた」(上記(2))ため、「運動による筋萎縮の予防・回復」が、筋と交感神経の間のフィードバック機能の回復に役立つと考えられる—と分析。

ここから、▼「交感神経による筋力の調節は、運動神経の機能を助ける」が、「交感神経の興奮のみによる筋緊張は、運動神経の働きを邪魔する」可能性がある▼加齢に伴う運動機能の低下には「交感神経による筋力サポート機能の低下」と「交感神経による筋緊張発生の増加」の両方が関係している—と考えることができます。

さらなる研究により「要介護・要支援の原因の1つとなるサルコペニア」への有効な対策につなげられるのではないか、と期待されます。



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