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介護職員の加算、算定率の高いものは基本報酬に組み入れ、著しく低いものは背景を踏まえ廃止も含めた検討進める—社保審・介護給付費分科会

2023.9.19.(火)

介護報酬には様々な加算があるが算定率を見ると、80%を超えるものから、ゼロ・1%に満たないものまでさまざまである。各加算の状況(要件が厳しすぎないかなど)を踏まえたうえで、前者については「基本報酬への組み入れ」を、後者については「廃止」を検討していくべきではないか—。

介護老人保健施設や介護医療院については、多床室の室料負担を求めていないが、他サービスとの整合性などをどのように考えていくべきか—。

介護保険事業所施設における「感染症対応力強化、BCP(事業継続計画)策定」などをどのように推進していくべきか。またリハビリ・栄養管理・口腔管理の一体的実施をどのように推進していくべきか—。

9月15日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会で、こうした議論が行われました。なお、同日には「新型コロナウイルス感染症に対応する高齢者施設支援」(医療機関からのコロナ回復患者を受け入れる場合の退所前連携加算の特別算定)についても、期間短縮の上で継続する方針を了承しています。

算定率の高い加算は基本報酬へ組み込み、低い加算は背景踏まえて廃止も考慮

2024年度の次期介護報酬改定に向けた議論が介護給付費分科会で精力的に進められています。9月15日の会合では、各サービスに横断的な事項として(1)感染症対応力の強化(2)BCP(業務継続計画)の策定推進(3)リハビリ・栄養管理・口腔管理の一体的実施推進(4)報酬の簡素化(5)室料負担の在り方(6)高齢者虐待防止(7)地域区分の見直し—を議題としました。

まず(4)の報酬の簡素化について見てみましょう。2000年度の公的介護保険制度創設から25年近く経つ中で、利用者・入所者のニーズ多様化に対応するため、サービスの質向上を目指すために、各種加算の創設・改善が続けられ、介護報酬は非常に複雑になっています。きめ細かな対応が可能となるという利点がある一方で、サービス提供者にとっても、利用者・家族にとっても「わかりにくい」ものとなっている負の側面も大きくなってしまっています。そこでサービスの質を維持したまま「報酬の簡素化」が行えないかが重要な視点となっています(2022年度の前回介護報酬改定でも、例えばリハビリテーションマネジメント加算(Ⅳ)の廃止、療養通所介護の包括報酬化などが実施されています)。

2024年度の次期介護報酬改定に向けて、厚生労働省老健局老人保健課の古元重和課長は「各種加算の見直し」を行えないかとの問題提起を行いました。加算は「より優れたサービスの実施に向けた体制を整え、取り組みを実施している」事業所・施設を評価するものです(基本報酬にプラスアルファされる)。

各種加算の算定率を見ると「80%を超え、多くの事業所・施設で体制が整えられているもの」があることが分かりました(介護老人保健施設に初めて入所した者へのアセスメント・入所初期の不慣れな入所者へ対応する手間等を考慮した【初期加算】:97.8%など)。これらは「多くの事業所・施設で体制確保・取り組みが普遍的に行われている」と考えられ、加算ではなく、基本報酬に組み込み「すべての事業所・施設で優れたサービス提供を求める」ことが妥当と考えられ、介護給付費分科会でも、多くの委員がこの方向に賛同しています。

算定率が著しく高い加算例(社保審・介護給付費分科会1 230915)



なお、加算を基本報酬に組み込む際には、「加算で設けられていた要件をすべて基本報酬要件に移行するべきか」(この場合、基本報酬要件が厳しくなり、公的介護保険からの退場を求められる事業所が出てくる可能性もある)、「加算の単位数をすべて基本報酬に上乗せするべきか」(上乗せ単位数が減れば、介護事業所・施設の収益が減少する)という論点が浮上します。この点について古谷忠之委員(全国老人福祉施設協議会参与)は「加算分の単位数を全て基本報酬に上乗せすべきである」と主張しましたが、酒向里枝委員(日本経済団体連合会経済政策本部長)は「患者負担や保険財政への影響なども考慮すべき」(加算分の単位数の一部のみを基本報酬に上乗せすべき)との見解を示しています。今後の具体的論議に注目が集まります。



一方、加算の中には「算定率ゼロ、あるいは1%未満」というほとんど使われていない者も少なくありません(短期入所療養介護の【若年性認知症利用者受入加算】など)。

算定率が著しく低い加算例(社保審・介護給付費分科会2 230915)



これらの加算は廃止していく方向で検討が進められますが、単純に一律廃止とするのではなく、「算定率が極めて低調である理由(要件が厳しすぎるのか、対象利用者がいないのか、など)を見て1つ1つ存廃を丁寧に検討する必要がある。算定率が低調であるが、極めて重要な加算も少なくない」との考えが、古谷委員や伊藤悦郎委員(健康保険組合連合会常務理事)、正立斉委員(全国老人クラブ連合会理事・事務局長)、田母神裕美委員(日本看護協会常任理事)ら多数の委員から出されました。

古元老人保健課長も「算定率が低調な理由は今後精査していく。例えば専門職確保が難しいケースなどもある」とコメントしており、要件見直しとセットで考えていくことになるでしょう。

なお、報酬簡素化に関連して古谷委員や伊藤委員らは「処遇改善に関する3つの加算の1本化」も強く要請しています(関連記事はこちら)。

老健施設と介護医療院でも多床室の室料負担求めるべきか、依然として賛否両論あり

また(5)は、介護老人保健施設と介護医療院について、現在は「多床室の室料負担を入所者に求めていない」ところ、「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)では多床室入所者に室料負担を求めている」「そもそも在宅要介護者では居住費は完全に自己負担である」ことを踏まえて、どう考えていくべきかという論点です。介護保険制度改革を議論する社会保障審議会・介護保険部会からの「介護給付費分科会で検討せよ」との宿題事項でもあります(関連記事はこちら)。

多床室の室料負担について(社保審・介護給付費分科会3 230915)



この点については、「老健でも平均在所日数が300日を超え、介護医療院では死亡退所が過半数となるなど、両者とも一定の『生活の場、終の棲家』としての機能を果たしており、特養との整合性等を踏まえて一定の室料負担を入所者に求めることを検討すべきではないか」との声が吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)や伊藤委員らから出ています。

介護保険3施設の入所・退所状況(社保審・介護給付費分科会4 230915)



一方、「老健施設では98%の入所者が、自宅から住民票を移しておらず、『ときどき入所、ほぼ在宅』状態であり、生活の場とはなっていない。自宅の居住費負担と2重負担となるため室料負担を課すべきではない」(東憲太郎委員:全国老人保健施設協会会長、田中志子委員:日本慢性期医療協会常任理事、正立委員)、「介護医療院や老健施設は『医療施設』であり、成果の場ではない。室料負担を求めることは不適切であり、この議論が繰り返し行われることには強い違和感を覚える」(江澤和彦委員:日本医師会常任理事)といった反対意見も出ています。

介護保険部会でも賛否両論が出され、それが介護給付費分科会でも繰り返されている格好で、今後、どのように議論が進むのか注目したいところです。

2024年度介護報酬改定でもリハ・栄養管理・口腔管理の一体的実施を強力に推進

また(3)のリハビリ・栄養管理・口腔管理の一体的実施推進の重要性を否定する意見はありません。リハビリの効果を高めるために「栄養状態の改善」が極めて重要となり(栄養が不十分であれば筋肉量が減少し、リハビリの効果が現れない)、栄養状態改善のためには「口腔機能の維持」が必要不可欠なためです(関連記事はこちら)。

今後の具体的な報酬対応論議に向けて、介護給付費分科会では「ICTの利活用によりリハ・栄養・口腔の情報共有を進める必要がある」(吉森委員)、「ケアマネジャーや利用者・家族、事業所・施設職員らが、早期に歯科専門職(歯科医、歯科衛生士)に相談できる環境を整える必要がある」(野村圭介委員:日本歯科医師会常務理事)、「一体的実施をさらに推進するための報酬上のインセンティブ(加算など)を強化すべき」(古谷委員)、「例えば施設併設の通所サービスなどでは、施設配置の管理栄養士が通所サービス利用者の栄養管理を行えるような柔軟化を検討してはどうか」(濵田和則委員:日本介護支援専門員協会副会長)、「医療・生活の双方をみる看護職員の関与も強化すべき」(田母神委員)、「地域医療機関も交えたリハ・栄養・口腔の一体的実施を目指すべき」(江澤委員)などの前向きな提案が出ています。

なお、2022年度の前回介護報酬改定で「リハビリ・栄養管理・口腔管理を一体的に実施するための計画書」が作成されていますが、「利用を義務付ける」ものではありません。東委員は「様式に拘る必要はなく、3者の一体的実施を進めることこそが重要である」と強調しています。

新興感染症の流行、増加する大災害に備え、サービス提供の継続に向けた計画作成を推進

また(1)は現下の新型コロナウイルス感染症、今後発生が予想される新興感染症への対応力を介護施設・事業所でも強化していくことを、(2)では感染症や昨今急増している大規模災害時にも介護サービス提供を継続するための計画(事業継続計画、BCP)を策定し、それに沿った取り組みを進めていくことを目指すもので、その重要性・必要性を疑う声はありません(感染症対応指針作成、BCP作成などが2022年度の前回介護報酬改定ですべての介護事業所・施設に義務化された、ただし3年間(2024年3月まで)の経過措置あり、関連記事はこちら)。しかし、小規模事業所等ではこうした取り組みを進める余力がないことも事実です。

今後、最新のBCP策定状況調査データなどが厚労省から示される予定であり(BCP策定などが進んでいる状況が見られる)、それらも踏まえた対応が2024年度介護報酬改定に向けて練られていきます。

この点については、「事業所、施設単位のBCPはもちろん、地域単位のBCP作成を進めていくべき」(堀田聰子委員:慶応義塾大学大学院健康マネジメント研究科教授、江澤委員)、「災害、感染症に関する情報を迅速に介護事業所・施設に伝達する仕組みを構築してほしい」(古谷委員)、「災害時の訓練などへの住民参画には、自治体が仲介役となってほしい」(濵田委員)、「BCP作成はもちろん、事業継続のために事業所・施設の共同化が重要になってくる」(及川ゆりこ委員:日本介護福祉士会会長)、「感染症対応の専門家(専門看護師、認定看護師など)配置や連携を介護報酬で後押しすべき」(田母神委員)、「医療分野では地域医療機関の連携が感染対策向上加算で義務付けられており、ここに介護事業所・施設の参加も求め、介護報酬上の評価を行うべき」(江澤委員)などの意見が出ています。いずれも重要な意見であり、秋以降の個別具体的な第2ラウンドで参考となります。

なお、同日には「新型コロナウイルス感染症に対応すル高齢者施設支援」(医療機関からのコロナ回復患者を受け入れる場合の退所前連携加算の特別算定)についても、期間短縮の上で継続する方針を了承しています。



また(6)の高齢者虐待防止については、すべての委員が異口同音に「対応力の強化」を強く求めています。



なお、地域区分に関しては、例えば▼「その他地域」(単価上乗せゼロ%)だが、「高い地域区分の地域」に囲まれ、同一の区分(単価上乗せゼロ%)とは単一の隣接となっている場合には、隣接地域の高い地域区分のうち一番低い区分までの範囲で単価の引き上げを選択可能とする▼5級地以上の級地差がある地域と隣接している場合には、4級地差になるまで自地域の単価引き上げを可能とする—などの新ルール案が提示され、「自治体と厚労省とでまず協議を進めていく」ことが確認されています。

介護報酬単価「地域区分」の新ルール案(社保審・介護給付費分科会5 230915)

介護報酬単価の概要(社保審・介護給付費分科会6 230915)



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