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NDB・介護DBの連結方針固まる、「公益目的研究」に限定の上、将来は民間にもデータ提供―厚労省・医療介護データ有識者会議

2018.11.15.(木)

 NDB・介護DBの利活用を進め、両データベースを連結した解析なども可能とするために、根拠法となる高齢者医療確保法と介護保険法を改正し、利用目的の整理、第三者提供の制度化などを明確にする―。

11月15日に開催された「医療・介護データ等解析基盤に関する有識者会議」(以下、有識者会議)で、こうした内容の報告書が取りまとめられました(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。

一部文言等を修正した上で、社会保障審議会の医療保険部会・介護保険部会に報告。そこでの了承を待って、来年(2019年)の通常国会に改正法案が提出される見込みです。

11月15日に開催された、「第9回 医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議」

11月15日に開催された、「第9回 医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議」

 

NDB・介護DBからのデータ提供を法令等の明確に規定する

「ある人が、これまでにどういった疾病に罹患し、それに対しどのような治療が行われ、効果はどうであったのか。さらに介護が必要な状態となってから、どういったサービスを受け、どのような効果が得られたのか」といったデータを一元的に集約・解析し、医療・介護サービス等の質向上や新たな医療・介護技術の開発を目指す「全国保健医療情報ネットワーク」が2020年度から本格稼働する予定です。

その一環として、有識者会議では、まずNDB(National Data Base:特定健診・医療レセプト情報を格納)と介護DB(介護保険総合データベース:要介護認定情報と介護レセプト情報を格納)について、「更なる利活用を推進する」「両データベースの連結を行う」ための検討を行っています。公的医療保険・介護保険制度が整備されている我が国では、世界に類を見ない医療・介護に関する広範かつ精密な(審査後の)データが蓄積されており、連結も含めたさらなる利活用が注目されているのです。

今年(2018年)7月に中間的な議論の整理を行い、そこでは、▼NDB・介護DBの利活用を促進するために、根拠法(高齢者医療確保法、介護保険法)を改正し、利用目的に「第三者提供」なども含める▼両データベースについて、匿名性を維持するなどセキュリティを確保した上で、データの連結解析を可能とする―などの方針を確認(関連記事はこちらとこちらとこちら)。今秋からさらに詳細な検討を行い、今般の報告書とりまとめ(構成員から一部注文が付いたが、修正内容等は遠藤久夫座長・国立社会保障・人口問題研究所所長に一任)となりました。ポイントを絞って、報告書全体(中間整理も含めて)を眺めてみましょう。

  
NDB・介護DBに格納されたデータを用いて、医療・介護の質向上などに向けた研究を推進する際、「制度の壁」があると指摘されます。NDBではすでに、介護DBではこれから、研究者にデータ提供がなされていますが、これらは「運用上認められている」に過ぎないのです。

有識者会議では、将来的には「民間も含めた多様な主体にデータ提供を行う」ことで、より優れた研究成果が生まれるとの考えを示すとともに、データ提供に関する規定を「法令等に明確に定める必要がある」と指摘。さらに、両データベースのデータを連結して解析することも想定し、根拠法(高齢者医療確保法、介護保険法)に必要な規定(データベースの利用目的、第三者提供、連結解析など)を整備するよう提言しています。

もっとも、歯止めなくデータの第三者提供を進めることはできません。両データベースとも、データの格納時に匿名加工が施され、個人の特定ができないようになっていますが、連結解析、さらに他のデータと組み合わせることで個人特定の可能性が高まるためです。そこで有識者会議では、データの提供は「公益目的の研究」に限定する考えを明確にしています。

ただし、データ提供先は「研究者」に限定せず、将来的には民間も含めた「幅広い主体」への提供が予定されます。提供先は広く認めることで研究の裾野を広げ、研究内容(公益目的か否か)に縛りをかけることで「国民の安心」(自分のデータが不適切な利用にさらされていないとの安心)を確保する、という形でバランスをとっていると見ることもできるでしょう。

なお、データ提供先は、一気に広めるのではなく、例えば「政策的観点で必要とされる研究」をまず優先するなど、段階的に広めることになります(研究成果を公表することで国民の理解・安心が確保されれば、提供先の拡大にも理解が得られやすくなる)。

円滑なデータ提供に向け、利用申請・審査の手続きを合理化

データ提供に当たっては、現行と同様に「厳格な手続き」を経ることが必要でしょう。概観すると、(1)データ提供希望者が書面で申請する → (2)有識者による助言をもとに、厚生労働大臣が申請内容を審査する → (3)国と希望者で契約を交わし、データを提供する → (4)データを活用した研究成果を公表する―と整理できるでしょう。

有識者会議では、データの利活用を推進するために、(1)から(4)のそれぞれの場面において、必要な対応をとるべきと提案します。

例えば、(1)では、▼手続きの電子化▼e-ラーニングなども活用したデータベース利活用に関する研修の実施―などといった「利用者支援」を充実するよう、また(2)では円滑な審査(適切な審査頻度の確保など)に向けた検討を進めるよう求めています。

また(3)のデータ提供においては、▼安全面に十分配慮した上での「クラウド」環境の活用▼データ抽出の迅速化▼オンサイトリサーチセンター(利用者がセンターに赴き、そこでNDBデータにアクセスして集計等を行う)の機能向上—などを提案しました。

 さらに、利用者の裾野をさらに広げるために、「オープンデータ」(定型化されたデータ集)や「サンプリングデータセット」(1・4・7・10月分の単月データについて、個人の特定性をより低下させたデータ集)を充実することなども提言。NDB・介護DBへの関心が高まるとともに、これらを活用して、いわば「練習」することによって、「より研究目的にマッチしたデータ申請」などが可能となり、審査などの効率化、結果として「迅速なデータ提供」の実現も図られると考えられます。

データの紐づけに当たっては、まず▼カナ氏名▼生年月日▼性別―の3情報を活用

 ところで、NDBと介護DBのデータを連結することで、例えば「若い頃に●●の生活習慣があった人は○○疾病に罹患しやすく、高齢になると◆◆の機能が低下し、要介護状態に陥る。ただし、◇◇介護を提供することで自立が達成される」などの研究成果が出ることが期待されます。この場合、もともとの「●●生活習慣」を改善するよう重点的に指導することで、医療費や介護費の適正化、さらには国民のQOL向上につながります。

 こうした研究成果を生み出すためには、NDBの格納データと、介護DBの格納データとを適切に紐づけすることが前提となります。

 両データベースともデータ格納時に匿名加工がなされていますが、▼カナの氏名▼性別▼生年月日―の3情報を用いて連結することが可能です。さらに厚労省は、医療・介護等の情報連結における識別子(個人、個人のデータを紐づけるための識別子)として「個人単位の被保険者番号」を活用する考えも示しています。

 有識者会議では、データベース連結や個人単位被保険者番号運用のスケジュールを考慮し、▼2020年度からは3情報を用いて紐づけを行う▼2021年度からは3情報および個人単位被保険者番号を用いて紐づけを行う―ことを提言しました。識別子が多くなるほど、「紐づけの精度」が向上する点に鑑みたものと言えます。

 
 なお、将来的には他の公的データベース(DPCデータや全国がん登録、指定難病、小児慢性特定疾病など)との連結も検討されることになりますが、その際の「個人個人を紐づけるための識別子」としては、例えば「個人単位の被保険者番号」も考えられますが、将来、別の研究結果が示される可能性もあり、今後、具体的に検討していく必要があります。

データ利用申請の拡大等睨み、役割分担や利用者負担も検討

 このような環境が整い、データ提供が拡大すれば、データ抽出などに係る事務コストが増加していきます。そこで有識者会議では、▼国と他主体との役割分担▼利用者の費用負担―の2点にも言及しています。円滑な運用を確保するために、非常に重要なテーマです。

まず前者の役割分担については、「データ提供の可否の判断など、データベースの在り方の根幹に関わる性質の事務は、国が担う」が、「利用者支援、オンサイトリサーチセンターの運営補助などの関連事務は、他の主体(レセプトに関する知見や高度専門的な解析等の知識が必要)に委ねる」といった大きな方向を示しました。例えば後者については、国立保健医療科学院や国民健康保険中央会などが思い浮かびます。

一方、後者の費用負担については、「個々のデータ提供に要する作業等に応じた費用」について利用者に負担を求めることを可能とすべきと提案しました。さらに「研究が抑制されない」とことも重要であり、有識者会議では「個々の利用目的の公益性などを勘案した費用軽減の仕組み」なども例示しています。

また11月15日の会合では、海老名英治構成員(栃木県保健福祉部保健医療監)から「利用者の受益」も考慮した費用設定を勘案してはどうか、との提案がなされています。地方自治体では、今後の医療計画・介護保険事業(支援)計画・医療費適正化計画の策定、地域医療構想の実現、地域包括ケアシステムの構築などに向けて、NDB・介護DBを積極的に活用していくと考えられますが、費用が高額になれば、利用を手控え、結果として住民サービスが低下することにもなりかねません。この点、自治体には「NDB・介護DBを利活用した受益」は想定しにいことから、「費用が低水準になる」と海老名構成員は期待しているようです。

具体的な金額の検討は、今後に委ねられ、その際には海老名構成員の指摘なども検討材料に含まれることになるでしょう。

2019年に改正法案を国会に提出し、2020年度中に新たな運用等を開始

報告書については、一部文言修正などをした上で、近く開催される医療保険部会・介護保険部会に報告されます。そこでの了承を経て、来年(2019年)の通常国会に改正法案(高齢者医療確保法、介護保険法の見込み)を提出します。

改正法成立後に、運用に関する具体的な検討・準備を行い、2020年度中に新たな運用が始まることになるでしょう。準備としては、例えば、データ提供に関するガイドラインの見直し(現在のガイドラインでは提供先が限定され、連結などは想定されていない)や、利用費用の設定、利用者支援策の構築などが行われることになります。

11月15日の有識者会議では、保険局医療介護連携政策課の宮崎敦文課長から、こうした準備なども含めて「細かいスケジュールを示していく」考えも示されました。

 
なおデータ提供の可否を判断する「公益目的」が、具体的にどの範囲となるのかは必ずしも明確になっていません。例えば、新薬や新規医療機器の開発や、副作用情報への活用が「公益」目的に該当するのか、しないのかは、現時点で明確な判断はなされていません。

ただし、NDB・介護DBのデータが、さらに20年、30年と蓄積されていく中では、まさに冒頭に述べたように「国民個人個人の医療・介護に関するヒストリー」を見ることができ(匿名加工されているので、それが誰のヒストリーなのかは明らかにならない)、それらを解析することは、間接的・直接的に「画期的な医療・介護のサービス・技術開発」につながっていくことでしょう。NDB・介護DBの連結は、さまざまな可能性を秘めた「歴史に残る第一歩」と言えます。

 
 
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