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2019年、日本国の人口は51万超の大幅減、「老衰」の死亡率が10ポイント超も増加―厚労省

2020.6.8.(月)

2019年、出生数と死亡数の差である「自然増減数」はマイナ51万5864人で、人口減少ペースはさらに加速している。死因をみると第1位のがん、第2位の心疾患、第3位の「老衰」という順位に変わりはないが、「老衰」による死亡率が前年比べて10ポイント超も増加した―。

このような状況が、6月5日に厚生労働省が公表した2019年の「人口動態統計月報年計(概数)の概況)から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)(前年の記事はこちら)。

2019年人口動態の各数値(2019人口動態統計1 200605)

2018年から19年にかけて日本国民は「50万人」超の大幅減少、減少スピードさらに加速

人口動態統計は、少子化対策など厚生労働行政の施策立案のための基礎資料を得ることを目的に、▼出生▼死亡▼婚姻▼離婚▼死産—の5つの事象を把握するものです。少子化の進行は、「社会保障財源の支え手」はもちろん、「医療・介護サービスの担い手」が足らなくなることを意味します。さらに社会保障制度にとどまらず、我が国の存立そのものをも脅かします(国家の3要素である「領土」「国民」「統治機構」の1つが失われ、日本国そのものが消滅しかねない)。

2019年の状況を見ると、出生数は86万5234人で、前年(91万8400人)に比べて5万3166人減少しました。出生率(人口1000対)は7.0で、前年(7.4)から0.4ポイント低下しています。

出生数・合計特殊出生率の年次推移(2019人口動態統計2 200605)



一方、死亡数は138万1098人で、前年(136万2470人)に比べて1万8628人の増加。死亡率(人口1000対)は11.2で、前年(11.)から0.2ポイント上昇しています。

死亡数・死亡率の年次推移(2019人口動態統計3 200605)



出生数と死亡数の差である「自然増減数」を見ると、マイナス51万5864人で、前年(マイナス44万4070人)に比べて7万1794人と減少ペースはさらに加速。自然増減率(人口1000対)はマイナス4.2で、前年(マイナス3.6)から0.6ポイント低下。自然増減数・自然増減率ともに13年連続で減少かつ低下しています。我が国の「人口減少」にさらに拍車がかかっていることが分かります。

さらに、「1人の女性が一生の間に生む子供の数」に相当する合計特殊出生率を見ると、2019年は1.36で、前年(1.42)から0.06ポイントの低下となりました。合計特殊出生率は2015年に上昇したものの、「一時的な現象」であったことが再確認できます。

都道府県別の合計特殊出生率を見ると、最も高いのは沖縄県で1.82(前年に比べて0.07ポイント低下)、次いで▼宮崎県の1.73(同0.01ポイント上昇)▼島根県の1.68(同0.06ポイント低下)▼長崎県の1.66(同0.02ポイント低下)―などで高くなっています。逆に最も低いのは東京都の1.15(同0.05ポイント低下)で、次いで▼宮城県の1.23(同0.07ポイント低下)▼北海道の1.24(同0.03ポイント低下)▼埼玉県の1.27(同0.07ポイント低下)―などで低くなっています。依然として「西高東低」の傾向が続いています。

前述のとおり、国家が存立するためには▼領土▼国民▼統治機構―の3要素が不可欠です。人口減少は、「国民」の要素が失われつつあること、つまり日本国が消滅に向かっていることを意味します。社会保障制度はもちろんのこと、我が国の存立基盤が極めて脆くなってきていると言えます。

この点、安倍晋三内閣では5月29日に「少子化社会対策大綱」を閣議決定。そこではさまざまな子育て支援策の充実などを通じて、「希望出生率 1.8」を実現する方針を打ち出しています。

3.6人に1人が「がん」で死亡、「老衰」の死亡率が前年より10ポイント超も上昇

次に死因別の死亡数を見ると、▼第1位:悪性新生物(腫瘍)の37万6392人(人口10万対の死亡率は304.2で、前年に比べて3.5ポイント上昇)▼第2位:心疾患(高血圧性を除く)の20万7628人(同167.8で、同じく0.2ポイント上昇)▼第3位:老衰の12万1868人(同98.5で、同じく10.3ポイント増加)▼第4位:脳血管疾患の10万6506人(同86.1で、同じく1.0ポイント低下)▼第5位:肺炎の9万5498人(同77.2で、同じく1.0ポイント増加)―となっています。

第1位の悪性新生物は、2019年の全死亡者に占める割合が27.3%(前年度に比べて0.1ポイント低下)で、日本人の3.6人に1人が「がんで死亡している」計算です。

死因の構成割合(2019人口動態統計4 200605)



また2016年までは「肺炎」が第3位でしたが、2017年には「脳血管疾患」が第3位、「老衰」が第4位となり、さらに2018年には「老衰」と「脳血管疾患」の順位が逆転しました。医療・医学等の水準が高まったことが確認できます。

死因別死亡率の年次推移(2019人口動態統計5 200605)



「老衰」の人口10万対死亡率は、さらに上昇しており、今後のさらなる高齢化の進行の中では、医療・介護分野において「看取り」が極めて重要なテーマとなることは確実です。2020年度の診療報酬改定では、地域包括ケア病棟において「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」などを踏まえた指針を策定することが要件化されるなど、「ACP」の重要性がますます高まってきています。自分の人生の最終段階において、どのような医療・介護を受けたいのか、逆に受けたくないのかを我々国民1人1人が考え、家族や親しい友人らと話し合っておく環境・風土の醸成などを進めていくことが重要です(いわゆるACPの推進、関連記事はこちら)。



なお主な死因の構成割合は、年齢・性によって相当異なります。

例えば、男女ともに5-9歳では「悪性新生物」「不慮の事故」、10-14歳では「悪性新生物」「自殺」が多く、男性は15-34歳では「自殺」「不慮の事故」、45歳以降では「悪性新生物」「心疾患」が、女性は15-24歳では「自殺」「不慮の事故」、25-54歳では「悪性新生物」「自殺」が多くなっています。

年齢が上がるにつれ「悪性新生物」の占める割合が高くなりますが、男性では65-69歳、女性では55-59歳でピークを迎えます(前年と同じ傾向)。つまり、70歳以上の高齢者では「がんによって死亡する割合」が低くなっていくため、「高齢者の特性を踏まえたがん対策」の重要性が伺えます。例えば、「副作用の強い抗がん剤の使用をどう考えるのか」、「根治を目指すのではなく、QOLの維持・改善を主目的とした治療プログラムを組むべきではないのか」といった議論を継続していく必要があるでしょう。

性・年齢階級別の死因構成割合(2019人口動態統計6 200605)

がんによる死亡、男性では肺がん、女性では大腸がんが最も多い

さらに、主な部位別に悪性新生物の死亡率を見ると、男性では「肺」が圧倒的に高く(1993年以降第1位)、2019年の死亡数は5万3300人、死亡率は88.6(前年から0.9ポイント上昇)となりました。第2位の「胃」がん(2万8044人、46.6(前値度から1.1ポイント低下))、第3位の「大腸」がん(2万7409人、45.5(同0.7ポイント上昇))と比べると、肺がんによる死亡の多さが分かります。

女性では、男性ほどの偏りはなく、第1位は「大腸」がん(2万4000人、37.8(同0.9ポイント上昇))、第2位は「肺」がん(2万2055人、34.7(同0.3ポイント上昇))、第3位は「膵臓」がん(1万8232人、28.7(同0.7ポイント上昇))となりました。

なお部位別のがん死亡率の推移を男女別にみると、次のように傾向そのものに変わりはありませんが、その動き方には若干の性差があります。
▼胃がん:男性↓(減少傾向)、女性↓(減少傾向)
▼肝臓がん:男性↓(減少傾向)、女性↑(減少傾向)
▼膵臓がん:男性↑(増加傾向)、女性↑(増加傾向)
▼肺がん:男性↑(増加傾向)、女性↑(増加傾向)
▼大腸がん:男性↑(増加傾向)、女性↑(増加傾向)

部位別のがんによる死亡率の年次推移(2019人口動態統計7 200605)



今後、社会的要因なども含めて男女差を詳しく分析していく必要があるでしょう。



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