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公立病院、大規模ほど経営が良好、小規模病院は近隣病院との統廃再編も視野に入れよ―内閣府

2017.8.30.(水)

 公立病院では、大規模なほど医業収支比率が高く、一方で小規模病院では医業収支比率が低下傾向にあるため、大規模公立病院と小規模公立病院とで収支比率の差が広がっている。立地状況などにより経営課題は異なり、「地域の状況を踏まえた経営改善戦略」を建てる必要がある—。

 内閣府が25日に公表した、「公立病院経営の状況と小規模公立病院の経営課題-持続可能な地域の医療提供体制の確立へ向けて-」(政策課題分析シリーズ12)からこういった状況が明らかになりました(関連記事はこちら)(内閣府のサイトはこちら)。

大規模病院ほど医業収支比率が高く、小規模病院では繰入金比率が高い

 公立病院については、「経営改善」と「地域医療構想の実現」を目指す改革プラン(新改革プランの作成)が求められていますが(関連記事はこちらこちらこちら)、収支改善が困難なケースもあり、内閣府では病床規模別に経営状況や経営課題などを調査・分析しています。

 まず病床規模別に公立病院の医業収支比率を見てみると、「大規模病院ほど医業収支比率が高い」(つまり経営状況が良い)ことが分かります。ただし公的病院・私的病院と比べると、公立病院では医業収支比率が低い(つまり経営状況が悪い)点には注意が必要です。

公立病院の医業収支比率を病床規模別に見ると、大規模なほど良好、つまり経営状況が良いことが分かる

公立病院の医業収支比率を病床規模別に見ると、大規模なほど良好、つまり経営状況が良いことが分かる

 
また公立病院については、赤字部分を自治体などからの繰入金で賄うことになりますが、これを病床規模別に見ると、50床未満・50-99床の小規模病院において高い割合となっています(小規模病院では医業収支比率が低く、繰入金による補てんが大きくなる)。
公立病院に対する繰入金比率を病床規模別に見ると、小規模な病院では、著しく高いことが分かる

公立病院に対する繰入金比率を病床規模別に見ると、小規模な病院では、著しく高いことが分かる

入院単価の向上が経営改善の鍵、大規模なDPC病院で単価向上目立つ

次に、経営形態の変化(例えば地方独立行政法人化など)を行っていない605病院について、自治体からの繰入金などを除いた「修正医業収支」の状況を見てみましょう。

修正医業収支が改善した病院は257病院あり、規模が大きくなるほど「収益と費用がともに増加して経営が改善した」病院の割合が高くなり、逆に規模が小さい病院では「収益と費用がともに減少したが、経営が改善した」割合が高くなります。

一方、修正医業収支が悪化したのは348病院で、小規模になると「収益と費用がともに減少し、経営が悪化した」割合が高くなっています。

経営状況が改善した病院では、大規模なほど「収益・費用ともに増加して改善」する割合が高く、逆に経営状況が悪化した病院では、小規模なほど「収益・費用ともに減少して悪化」してしまった割合が高い

経営状況が改善した病院では、大規模なほど「収益・費用ともに増加して改善」する割合が高く、逆に経営状況が悪化した病院では、小規模なほど「収益・費用ともに減少して悪化」してしまった割合が高い

 
この点について内閣府では、とくに「入院単価の向上が収益増加に寄与している」点に注目。次のように公立病院をグループ分けし、単価の変動状況を見ています。

【グループ1】(400床以上の大規模、DPC導入、98病院):2014年度の入院単価は5万7479円で、5年前(2009年度)に比べて1万203円・21.6%増加。入院料と手術料が入院単価の8割程度を占め、主な単価向上要因も入院料と手術料である

【グループ2】(200床以上400床未満の中規模、DPC導入、73病院):2014年度の入院単価は4万8539円で、5年前から7192円・17.4%増加。入院料と手術が入院単価の8割程度を占めるが、大規模病院では手術料のシェアが26.9%なのに対し、中規模病院では23.2%にとどまる。主な単価向上要因は入院料である

【グループ3】(200床以上400床未満の中規模病院、非DPC、32病院):2014年度の入院単価は3万6813円で、5年前から3743円・11.3%増加。手術料のシェアは18.4%にとどまり、DPC導入病院と比べて「その他」(検査、放射線、食事など)が単価増に大きく影響している

【グループ4】(200床未満の小規模病院、非DPC、306病院):2014年度の入院単価は2万5554円で、5年前と比べて9377円・7.2%増加。他のグループと異なり手術料が減少、手術料のシェアも10.0%にとどまっている

 また各グループについて2009年度から14年度までの5年間における入院単価の1年度当たり伸び率を見ると、▼グループ1(大規模、DPC)4.0%▼グループ2(中規模、DPC)3.3%▼グループ3(中規模、非DPC)2.2%▼グループ4(小規模、非DPC)1.4%—となっています。もっとも単価の高いグループ1と、もっとも低いグループ4では、3万1925円・2.2倍の開きがあります。つまり、入院単価の高い大規模DPC病院はより単価が上がっており、入院単価の低い小規模非DPC病院は単価の伸びが小さく、「格差が広がる」傾向にあることが改めて認識できます。

大規模なDPC病院では、入院単価が高く、伸び率も高い。このため小規模病院との入院単価の格差は広がる一方である

大規模なDPC病院では、入院単価が高く、伸び率も高い。このため小規模病院との入院単価の格差は広がる一方である

 
 なお外来単価については、次のような状況です。入院ほどの大きな格差はないようです。

▼グループ1(大規模、DPC):2014年度単価は1万4621円で、5年前から20.9%増

▼グループ2(中規模、DPC):2014年度単価は1万2777円で、5年前から10.0%増

▼グループ3(中規模、非DPC):2014年度単価は1万733円で、5年前から11.4%増

▼グループ4(小規模、非DPC):2014年度単価は8856円で、5年前から4.0%増

入院単価ほどではないが、大規模なDPC病院で外来単価が高く、伸び率も高いため小規模病院との格差が広がる

入院単価ほどではないが、大規模なDPC病院で外来単価が高く、伸び率も高いため小規模病院との格差が広がる

地域の状況を踏まえ、近隣病院との「統合再編」なども視野に入れる必要

このように見ると、病院経営の改善には「大規模化」「DPC参加」などの方向が見えるようにも思えますが、人口規模の小さい地方の自治体に設立された小規模公立病院に、それを求めることはできません。

内閣府は、200床未満の小規模病院の経営改善方策を探るため、近隣病院との地理的配置などに着目した分析を実施。さらに、病院関係者の意見(インタビューを実施)も踏まえて、次のような改善方向を示しました。地域の状況を踏まえて、「病院の統合再編」を踏まえた検討を行うよう提言しています(こちら)とこちらこちら)とこちら)。

【タイプ1】(不採算地区の外に設置され、15㎞圏内に300床以上の競合病院がある):▽人口規模が大きい▽人口密度が高い▽高齢化率が低い—という好立地環境にあることが分かったが、病床シェアは低く、修正医業収支比率・病床稼働率は低下している(ただし他のタイプに比べて低下幅は小さい)。ここから▼他病院と機能分担を進め、地域にとって必要な医療を提供する▼地域包括ケアシステムの確立に貢献する—ことが必要と考えられる。地域によっては「病院の統廃合」などの抜本的な見直しも検討する必要がある

【タイプ2】(不採算地区の外に設置され、15㎞圏内に300床以上の競合病院はない):▽人口規模は小さい▽人口密度は低い▽高齢化率・人口減少率が高い—という厳しい立地環境にあり、「地域に必要な医療機能の維持」が最優先の課題となる。将来、大幅人口減などが生じた場合には「病院規模などの見直し」を実施することが必要である

【タイプ3】(不採算地区に設置され、15㎞圏内に300床以上の競合病院がある):近隣に規模の大きな病院があることから、▼他病院との機能分担を進め、地域に必要な医療を提供する▼地域包括ケアシステムの確立に貢献する—ことが必要。近隣病院との距離が近い場合には「統合再編」の検討も必要

【タイプ4】(不採算地区に設置され、15㎞圏内に300床以上の競合病院はない):1日平均外来患者数や病床稼働率が低く、経営指標は最も厳しい。「地域唯一の病院」と言うケースが多く、地域医療の確保という観点からも支援が必要。ただし、将来的には、地域の医療ニーズ見通しなどを踏まえ、▼病床削減・機能転換(診療所と老人福祉施設の複合施設への転換など)▼同一医療圏内の病院との統廃合・ネットワーク化―などを検討し、「産業・雇用・交通などを含めた地域全体の街づくりの中で、公立病院の位置づけを明確にしつつ、地域に一定の医療・介護サービスが確保される体制」を目指すことが必要である

公立病院を立地条件などに応じて分類すると、それぞれにおいて経営課題は異なっていることが分かる

公立病院を立地条件などに応じて分類すると、それぞれにおいて経営課題は異なっていることが分かる

 
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