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2018年1月までに888件の医療事故が報告され、65%超で院内調査が完了―日本医療安全調査機構

2018.2.14.(水)

 今年(2018年)1月に医療事故調査・支援センター(以下、センター)に報告された医療事故は31件。2015年10月に医療事故調査制度がスタートしてから、累計で888件の医療事故が報告され、うち65.1%・578件で院内調査が完了し、遺族や医療機関からのセンターへの調査依頼は累計で59件となった―。

 日本で唯一のセンターとして指定されている「日本医療安全調査機構」が2月9日、こういった状況を公表しました(機構のサイトはこちら)。

制度発足から、外科で147件、内科で111件の医療事故が発生

 2015年10月から、すべての医療機関において、院長などの管理者が予期しなかった「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡・死産」のすべてを、センターに報告することを義務づける「医療事故調査制度」が始まっています。この制度は「責任追及」を目的とするのではなく、事故の原因を究明する中で「再発防止」策を構築することが主眼です。センターでは、これまでに再発防止策として(1)中心静脈穿刺合併症に係る死亡の分析―第1報―(2)急性肺血栓塞栓症に係る死亡の分析(3)注射剤によるアナフィラキシーに係る死亡事例の分析—を公表するなど、精力的な活動を行っています。

 医療事故調査制度は、▼管理者が医療事故を確認した場合、速やかにセンターに事故報告の旨を報告する → ▼当該医療機関で事故原因の調査【院内調査】を行い、その結果をセンターに報告する → ▼当該医療機関が、調査結果に基づいて事故の内容や原因について遺族に説明する(調査結果報告書などを提示する必要まではない) → ▼センターが事故事例を集積、分析し具体的な再発防止策などを練る—という流れで進められます。

医療事故調査制度の概要、「院内調査」を第一に行い、「医療事故調査・支援センター」がそれを補完する格好で調査が行われ、再発防止策に結びつける

医療事故調査制度の概要、「院内調査」を第一に行い、「医療事故調査・支援センター」がそれを補完する格好で調査が行われ、再発防止策に結びつける

 
我が国唯一のセンターとして指定されている日本医療安全調査機構は、毎月、医療事故報告の状況を公表しており(前月の状況はこちら)、今年(2018年)1月には、新たに31件の医療事故が報告されました。制度発足からの累計報告件数は888件となっています。

 今年(2018年)1月に報告された事故の内訳は、病院からが30件、診療所からが1件で、制度発足からの累計では、病院から833件(事故全体の93.8%)、診療所から55件(同6.2%)です。1月報告分を診療科別に見ると、▼外科6件▼内科5件▼消化器科3件▼産婦人科3件▼脳神経外科3件▼呼吸器内科3件―などが目立ちます。また、制度発足からの累計では、▼外科153件(同17.2%)▼内科116件(同13.0%)▼消化器科74件(同8.3%)▼整形外科73件(同8.2%)―などで多くなっています。

2018年1月に、新たに31件の医療事故が報告され、制度発足(2015年10月)からの累計で888件の医療事故が報告されている

2018年1月に、新たに31件の医療事故が報告され、制度発足(2015年10月)からの累計で888件の医療事故が報告されている

センターへ4261件の相談、遺族からは「医療事故の判断」に関する相談が多い

 センターに報告しなければならない医療事故は、医療機関で生じたあらゆる死亡・死産事例ではなく、院長などの管理者が▼予期しなかった▼医療に起因し、または起因すると疑われる—死亡・死産事例に限定されます。「手の施しようのない重篤な状態で救急搬送された患者」が、治療の甲斐なく死亡してしまったとしても、「死亡が予期された」ため報告対象からは除外されます。ただし、何らかの医療ミスによって、「予期された経緯」とは別に死亡した場合には、報告対象になります。

医療機関には「患者が予期せぬ死亡を遂げたが、センターに報告すべき医療事故に該当するのか?」、「初めての報告で、センターへの報告方法がよく分からない」といった疑問が生じると思われます。一方、遺族側には「家族が医療機関で死亡したが、医療事故として報告されていない。医療機関側が隠蔽しているのではないか」といった不信感を持つケースもあることでしょう。センターでは、こうした疑問に答えるために相談対応を行っており、今年(2018年)1月に、新たに138件の相談がセンターに寄せられました。制度発足からの累計相談件数は4399件となっています。

新規相談の内訳は、▼医療機関から70件▼遺族などから60件▼その他・不明8件―です。

 医療機関からの相談内容としては「報告の手続き」がもっとも多く39件(医療機関からの相談の55.7%)。次いで「院内調査に関するもの」が22件(同じく31.4%)、「報告すべき医療事故に該当するか否かの判断」が13件(同じく18.6%)と続きます。厚生労働省は、一昨年(2016年)6月に医療事故調査制度の運用改善(医療事故該当性の判断などを標準化するための「支援団体等連絡協議会」を設置するなど)を行っており、「報告すべき医療事故に該当するか」という知識は、相当程度、医療現場に浸透してきています(関連記事はこちらこちらこちら)。

 一方、遺族などからの相談内容としては、「医療事故に該当するか否かの判断」が圧倒的で、55件(遺族などからの相談の91.7%)となっています。ただしこの中には、「制度開始前の事例」「生存事例」など、そもそも「報告すべき医療事故でない」ものも含まれている点に留意が必要です。医療事故調査制度が国民全体に浸透してきていると考えられる一方で、制度の内容への理解は十分でないことが背景にあると言えるでしょう。さらなる制度の周知が期待されます。

センターへの相談は2018年1月に138件あり、うち70件が医療機関から、60件が遺族などからのものとなっているが、相談の中には「制度の対象外の事例」も含まれている点には注意が必要である

センターへの相談は2018年1月に138件あり、うち70件が医療機関から、60件が遺族などからのものとなっているが、相談の中には「制度の対象外の事例」も含まれている点には注意が必要である

センターへの調査依頼は累計58件、うち2件でセンター調査が完了

 医療事故調査制度の目的は「再発防止」にあるため、事故が発生した医療機関自らが原因究明に向けた調査【院内調査】を行い、その過程で自院の体制や院内ルールの見直し、遵守の徹底などを行うことが期待されます。

今年(2018年)1月に新たに院内調査が完了した事例は31件で、制度発足からの累計では578件となりました。一気に院内調査が進んだ格好で、これまでに報告された全888件の医療事故のうち、65.1%で院内調査が完了しています。

医療事故を報告した医療機関のうち、新たに院内調査が完了したものは2018年1月に31件、制度発足からの累計で578件となった(報告された事故全体の65.1%)

医療事故を報告した医療機関のうち、新たに院内調査が完了したものは2018年1月に31件、制度発足からの累計で578件となった(報告された事故全体の65.1%)

 
 ところで、遺族の中には「院内調査結果に納得できない」「院内調査が遅すぎる(何かを隠すために時間稼ぎをしているのではないか)」と感じる人もおられると思われます。また、クリニックなど小規模医療機関では、「自力での院内調査は難しい」ところもあります(もちろん、医師会や病院団体などの支援団体によるサポート体制がある)。そこで、センターでは、「遺族や医療機関からの調査依頼を受け付ける」体制も整えています(院内調査が時間・内容ともに適正に実施されているのか、という観点での調査が中心)。

この点、今年(2018年)1月に、センターになされた調査依頼は「医療機関から1件」で、制度発足からの累計では59件(遺族から45件・76.3%、医療機関から14件・23.7%)となりました。うち3件でセンター調査が終了しており、ほか「院内調査結果報告書の検証中」(院内調査が適切に行われたかどうかを確認)52件、「院内調査の終了待ち」4件という進捗状況です。

 
病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

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