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GemMed塾 看護モニタリング

2017年末までに857件の医療事故が報告され、63.8%で院内調査が完了―日本医療安全調査機構

2018.1.16.(火)

 昨年(2017年)12月に医療事故調査・支援センター(以下、センター)に報告された医療事故は33件。2015年10月に医療事故調査制度がスタートしてから、累計で857件の医療事故が報告され、うち63.8%・547件で院内調査が完了し、遺族や医療機関からのセンターへの調査依頼は累計で58件となった―。

 こうした状況が、日本で唯一のセンターとして指定されている「医療安全調査機構」から1月11日に公表されました(機構のサイトはこちら)。

制度発足から、外科で147件、内科で111件の医療事故が発生

 2015年10月に医療事故調査制度がスタート。すべての医療機関において、院長などの管理者が予期しなかった「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡・死産」のすべてを、センターに報告することが義務づけられています。もっとも医療事故調査制度は「責任追及」を目的とするのではなく、事故の原因を究明する中で「再発防止」策を構築することが主眼です。既に、再発防止策として(1)中心静脈穿刺合併症に係る死亡の分析―第1報―(2)急性肺血栓塞栓症に係る死亡の分析—を公表しています

 医療事故調査制度は、▼管理者が医療事故を確認した場合、速やかにセンターに事故報告の旨を報告する → ▼当該医療機関で事故原因の調査【院内調査】を行い、その結果をセンターに報告する → ▼当該医療機関が、調査結果に基づいて事故の内容や原因について遺族に説明する(調査結果報告書などを提示する必要まではない) → ▼センターが事故事例を集積、分析し具体的な再発防止策などを練る—という流れで進められます。

医療事故調査制度の概要、「院内調査」を第一に行い、「医療事故調査・支援センター」がそれを補完する格好で調査が行われ、再発防止策に結びつける

医療事故調査制度の概要、「院内調査」を第一に行い、「医療事故調査・支援センター」がそれを補完する格好で調査が行われ、再発防止策に結びつける

 
我が国唯一のセンターとして指定されている医療安全調査機構は、毎月、医療事故報告の状況を公表しており、昨年(2017年)12月には、新たに33件の医療事故が報告されました。制度発足からの累計報告件数は857件となっています。

 2017年12月に報告された事故の内訳は、病院からが30件、診療所からが3件で、制度発足からの累計では、病院から803件(事故全体の93.7%)、診療所から54件(同6.3%)です。12月報告分を診療科別に見ると、▼外科7件▼整形外科4件▼産婦人科4件▼内科3件▼脳神経外科3件―などで多くなっています。また、制度発足からの累計では、▼外科147件(同17.2%)▼内科111件(同13.0%)▼整形外科72件(同8.4%)▼消化器科71件(同8.3%)―などで多い状況です。

2017年12月に、新たに33件の医療事故が報告され、制度発足(2015年10月)からの累計で857件の医療事故が報告されている

2017年12月に、新たに33件の医療事故が報告され、制度発足(2015年10月)からの累計で857件の医療事故が報告されている

センターへ4261件の相談、遺族からは「医療事故の判断」に関する相談が多い

 センターに報告しなければならない医療事故は、医療機関で生じたすべての死亡・死産事例ではなく、院長などの管理者が▼予期しなかった▼医療に起因し、または起因すると疑われる—死亡・死産事例に限定されます。例えば「手の施しようのない重篤な状態で救急搬送された患者」が、治療の甲斐なく死亡してしまったとしても、「死亡が予期された」ため報告対象からは除外されます。ただし、何らかの医療ミスによって、「予期された経緯」とは別に死亡した場合には、報告対象になります。

医療機関では「患者が予期せぬ死亡を遂げたが、センターに報告すべき医療事故だろうか?」、あるいは「初めての報告となるが、センターへの報告はどのように行えばよいのか?」といった疑問が生じることでしょう。また遺族側には「家族が医療機関で死亡したが、医療事故として報告されていない。隠蔽されているのでは?」といった不信感をぬぐいきれない方もおられると思います。こうした疑問に答えるために、センターでは医療機関・遺族からの相談に対応しており、昨年(2017年)12月に、新たに165件の相談がセンターに寄せられました。制度発足からの累計は4261件となっています。

新規相談の内訳は、▼医療機関から73件▼遺族などから74件▼その他・不明18件―です。

 医療機関からの相談内容としては「報告の手続き」がもっとも多く42件(医療機関からの相談の57.5%)。「医療事故に該当するか否かの判断」が15件(同じく20.5%)、「院内調査に関するもの」が15件(同じく20.5%)などとなっています。厚労省は医療事故調査制度の運用改善(医療事故該当性の判断などを標準化するための「支援団体等連絡協議会」を設置するなど)を一昨年(2016年)6月に行っており、事故の判断に関する知識は、相当程度、医療現場に浸透していると考えられます(関連記事はこちらこちらこちら)。

 一方、遺族などからの相談内容としては、依然として「医療事故に該当するか否かの判断」が多く、61件(遺族などからの相談の82.4%)となっています。ただしこの中には、「制度開始前の事例」「生存事例」など、そもそも「報告すべき医療事故でない」ものも含まれている点には、留意が必要です。

センターへの相談は2017年12月に165件あり、うち73件が医療機関から、74件が遺族などからのものとなっているが、相談の中には「制度の対象外の事例」も含まれている点には注意が必要である

センターへの相談は2017年12月に165件あり、うち73件が医療機関から、74件が遺族などからのものとなっているが、相談の中には「制度の対象外の事例」も含まれている点には注意が必要である

センターへの調査依頼は累計58件、うち2件でセンター調査が完了

 医療事故調査制度の目的は「再発防止」にあるため、事故が発生した医療機関自らが原因究明に向けた調査【院内調査】を行い、その過程で自院の体制や院内ルールの見直し、遵守の徹底などを行うことが期待されます。昨年(2017年)12月に新たに院内調査が完了した事例は19件で、制度発足からの累計では547件となりました。これまでに報告された全857件の医療事故のうち、751件のうち63.8%で院内調査が完了しています。

 
 ところで、遺族の中には「院内調査結果に納得できない」「院内調査が遅すぎる(何かを隠すために時間稼ぎをしているのではないか)」と感じる人もおられることでしょう。一方で小規模医療機関などでは、「自力での院内調査は難しい」というところもあります(ただし、医師会や病院団体などの支援団体によるサポートは整備されている)。そこで、センターでは、「遺族や医療機関からの調査依頼を受け付ける」体制も整えています(院内調査が時間・内容ともに適正に実施されているのか、という観点での調査が中心)。

この点、昨年(2017年)12月に、センターになされた調査依頼は6件で(すべて遺族からの調査依頼)、制度発足からの累計では58件(遺族から45件・77.6%、医療機関から13件・22.4%)となりました。うち2件でセンター調査が終了しており、ほか「院内調査結果報告書の検証中」(院内調査が適切に行われたかどうかを確認)51件、「院内調査結果報告書検証準備作業中」2件、「院内調査の終了待ち」3件となっています。

医療事故を報告した医療機関のうち、新たに院内調査が完了したものは2017年12月に19件、制度発足からの累計で547件となった(報告された事故全体の63.8%)

医療事故を報告した医療機関のうち、新たに院内調査が完了したものは2017年12月に19件、制度発足からの累計で547件となった(報告された事故全体の63.8%)

 
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