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要支援者への訪問・通所サービスの市町村事業への移行で、介護サービス利用者等が「減少」—2017年度介護給付費等実態調査

2018.9.4.(火)

 2017年4月から、全市町村において「要支援者への訪問・通所サービス」を総合事業へ移行することとなったため、介護保険サービスの受給者数、1人当たり介護費が減少した―。

 このような結果が、厚生労働省が8月30日に公表した2017年度の「介護給付費等実態調査」から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。

介護保険サービスの累計受給者(2017年度1年間)は、前年度に比べ3.0%減少

 介護給付費等実態調査は、1年度(X年5月審査分-X+1年4月審査分)の介護レセプトをもとに、介護サービスの提供状況(利用状況)や給付費の状況などを把握するものです。集計対象は、都道府県の国民健康保険団体連合会が審査したすべてのレセプト(介護給付費明細書・給付管理票)です。

 まず受給者の状況を見てみると、2017年度の累計受給者数は6042万4100人で、前年度に比べて184万9500人・3.0%の減少となりました。減少の背景には「要支援者の訪問・通所サービスの、市町村総合事業への移行」があります。2014年の介護保険制度改革の一環として、要支援者に対する訪問・通所サービスは、介護保険給付から、市町村の総合事業(地域支援事業のうちの、介護予防・日常生活支援総合事業)に段階的に移管することになりました。2017年度からは「全市町村で完全移行する」こととなり、介護予防訪問介護、介護予防通所介護の受給者が大幅に減少していることが全体の受給者数減につながっていると言えます(関連記事はこちら)。

 また、同一人物を名寄せした実受給者数は604万1200人で、前年度に比べて9万6900人・1.6%の減少となっています。この減少の背景にも「要支援者の訪問・通所サービスの、市町村総合事業への移行」があります。
2017年度介護給付費等実態調査1 180830
2017年度介護給付費等実態調査2 180830
 
なお、「累計受給者数の減少幅」のほうが、「実受給者数の減少幅」よりも大きいことから、訪問・通所サービスを利用していた要支援者については、「他サービス理由者に比べて、比較的多数回のサービス利用を行っていた」人が多い可能性もあります。

 サービス種類別に累計受給者数を見てみると、次のようになっています。

▽介護予防訪問介護:累計受給者数122万8300人・前年度比70.6%減、実受給者数23万200人・前年度比55.1%減

▽介護予防訪問看護:累計80万7200人・15.9%増、実11万3600人・13.7%増

▽介護予防通所介護:累計162万6500人・68.1%減、実30万7800人・53.4%減

▽介護予防通所リハ:累計188万6100人・6.6%増、実22万8000人・5.5%増

▽訪問介護:累計1209万9700人・1.5%増、実145万7800人・1.2%増

▽訪問看護:累計508万6300人・9.0%増、実66万2300人・8.2%増

▽訪問リハ:累計105万8900人・6.8%増、実14万2300人・6.3%増

▽通所介護:累計1362万7100人・3.4%増、実157万9100人・3.2%増

▽通所リハ:累計524万7000人・1.7%増、実61万7800人・1.6%増

▽小規模多機能型居宅介護(短期利用以外):累計112万4800人・6.2%増、実13万5700人・6.5%増

▽認知症対応型共同生活介護(短期利用以外):累計238万3800人・3.1%増、実24万9200人・3.5%増

▽定期巡回・随時対応型訪問介護看護:累計23万3700人・25.0%増、実3万1200人・21.2%増

▽看護小規模多機能型居宅介護(短期利用以外):累計9万4200人・29.6%増、実1万3100人・30.7%増

▽特養ホーム(介護老人福祉施設):累計639万9100人・1.9%増、実67万2600人・2.4%増

▽老健施設:累計434万4400人・0.7%増、実55万9100人・1.3%増

▽介護療養型医療施設:累計61万1200人・9.9%減、実8万4100人・8.2%減

 
比較的、新たなサービスと言える▼看護小規模多機能型居宅介護(看多機)▼定期巡回・随時対応型訪問介護看護―では大きく利用者数が伸びており、サービスの整備、利用者やケアマネジャーへの制度浸透が伺えます。一方で、介護療養の受給者数は減少傾向が続いており、2018年度の【介護医療院】創設によりこの傾向が強まると予測されます。2018年度の実態調査結果が待たれます。

なお、▼特定施設入居者生活介護▼小規模多機能型居宅介護(小多機)―などの「ショートステイ利用」が二桁増となっている点も注目されます。ショートステイは、在宅要介護者の状態悪化に一時的に対応するほか、家族介護者のレスパイトにも利用され、「在宅生活の限界点を高める」重要なサービスです。利用者の安全や介護の質を担保した上での「ショートステイ」拡充は歓迎すべきと言えます。

要介護4の利用者の1年後の状況、「重度化」と「軽度化」は同程度

 次に2017年度の1年間継続してサービスを受給した人について、2017年4月から18年3月にかけて要介護度がどのように変化したのかを見てみましょう。

 いずれの要介護度区分でも変化のない「維持」の割合が最も多く7-9割程度となっており、この状況に変わりはありません。

 また、「要支援2」から「要介護3」では、改善(軽度化)よりも悪化(重度化)の割合がはるかに高くなっていますが、「要介護4」では、改善(軽度化)と悪化(重度化)の割合がほぼ同程度となっており、重度者について「機能改善」に向けた努力を各事業所・施設が行っていると考えられます。
2017年度介護給付費等実態調査3 180830
 
 この点、かねてより「要介護度の改善に向けたインセンティブ」が重要な検討課題の1つになっていましたが、ついに2018年度の介護報酬改定で、通所介護において【ADL維持等加算】が創設されました。この加算がどのような効果を及ぼすのか、2018年度の調査に注目が集まります(関連記事はこちら)。

介護予防サービスでは、1人当たり介護費用が大幅に減少

 次に受給者1人当たりの費用額に目を移すと、2018年4月審査分では▼介護予防サービス:2万7500円(前年度比7600円減)▼介護サービス:19万4200円(同300円増)―となりました。介護予防の減少は、前述と同じく「要支援者への訪問・通穂サービスの市町村総合事業への移行」によるところが大きくなっています。
2017年度介護給付費等実態調査4 180830
 
 サービス種類別に見ると、次のような状況です。

▽介護予防訪問介護:1万5600円(前年比4600円減)

▽介護予防訪問看護:3万3300円(同700円減)

▽介護要望通所介護:2万4500円(同4900円減)

▽訪問介護:7万6100円(前年比3300円増)

▽訪問看護:4万8200円(同1100円減)

▽訪問リハ:3万9000円(同700円減)

▽通所介護:9万2700円(同1700円増)

▽通所リハ:8万3400円(同600円減)

▽短期利用以外の特定施設入居者生活介護:21万6900円(同3900円増)

▽定期巡回・随時対応型訪問介護看護:16万5200円(同5400円増)

▽短期利用以外の小規模多機能型居宅介護:21万2600円(同4100円増)

▽短期利用以外の看護小規模多機能型居宅介護:26万4100円(同9700円増)

▽特養ホーム:28万900円(同6300円増)

▽老健施設:30万500円(同3300円増)

▽介護療養型医療施設:38万9000円(同100円減)

 
 サービスの種類によって1人当たり費用額、つまり単価の増減状況が大きく異なっていることが分かります。「加算の算定状況」「利用者の要介護度の状況の変化(重度者が増えたのか、軽度者が増えたのか)」など、さまざまな切り口での詳細な分析を期待したいところです。

 
 受給者1人当たり費用額を都道府県別に比較すると、介護サービスでは、沖縄県が最も高く21万2600円(前年度から3200円増)。次いで石川県20万8100円(同3900円増)、鳥取県20万7900円(同4000円増)で高くなっています。

逆に、最も低いのは北海道で18万3800円(同1600円増)。次いで京都府18万5600円(同1900円増)、福島県の18万5800円(同5700円増)、埼玉県18万5800円(同2000円増)で低い状況です。

最高の沖縄県と最低の北海道の間には1.16倍の格差があり、また医療と同様に「西高東低」の傾向があることが分かります。
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特養ホームは要介護度に関わらず1年超の入所が半数超

 さらに、サービスの利用状況に目を移すと、次のような状況が明らかになりました。

▽2018年4月審査分における居宅サービスの平均利用率(区分支給限度基準額の中で、どれだけのサービス利用を行ったか)を見ると、「要介護5」が最も高く65.6%(前年度から0.3ポイント増)。要介護度が下がるにつれ、利用率も下がる(前年度と同様の傾向)
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▽2018年4月審査分における訪問介護の内容類型は、要介護度が高くなるにつれ「身体介護」の利用度合いが高くなるが、身体介護に引き続き生活援助を行うケースは、要介護度に関わらず3割程度となっている(前年度と同様の傾向)
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▽1年間における施設サービスの請求単位数を施設種類別・要介護度別に見ると、特養ホームでは「要介護4」「要介護5」の割合(合計72.3%、前年度よりも0.7ポイント増)が、老健施設では「要介護3」「要介護4」の割合(同52.3%、同増減なし)が、介護療養型医療施設では「要介護5」の割合(55.2%、同1.5ポイント減)が多い(前年度と同様の傾向)

 
▽施設入所者の入所(院)期間を施設種類別・要介護度別に見ると、次のような違いがある

【特養ホーム】
「1年以上5年未満」の人が5-7割程度で、要介護度による極端な差はない(▼要介護1:63.7%▼要介護2:74.9%▼要介護3:55.8%▼要介護4:62.4%▼要介護5:71.9%—)

【老健施設、介護療養】
特養ホームに比べて、若干、入所期間が短く、要介護度が上がるにつれて、入所期間が長くなる傾向がある
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 介護療養型医療施設は「要介護度が高く、かつ医療必要度が高い入所者を受け入れる施設(重症化による転院や死亡退院が一定程度あるため、入所期間はどれほど長くない)」、特養ホームは「要介護度が高い入所者の『終の棲家』機能を持つ施設」、老健施設は「比較的入所期間が短い、在宅復帰促進施設」という区分けが明確になってきていると言えるでしょう。
2018年度には【介護医療院】が創設され、こうした施設の特徴がどう変化するのか、あるいは変化しないのか、注目する必要があります。

 
 
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