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GemMed塾 看護モニタリング

ケアマネジャー、本来業務と言えない「長時間の電話対応」や「介護保険外の相談対応」をせざるを得ない状況浮彫に—介護クラフトユニオン

2024.5.29.(水)

ケアマネジャーの多くが、本来業務と言えない「長時間の電話対応」や「介護保険外の相談対応」をせざるを得ない状況にあることが浮き彫りになった。こうした状況の改善に向け「ケアマネの業務」範囲を明確化することが重要と考えられる—。

2024年度介護報酬改定では「ケアマネ1人当たりの担当者数上限緩和(引き上げ)」が行われたが、すでに利用者1人1人に向き合えなくなる、サービス残業が増えるために「評価できない」との声が多い—。

介護業界労働者の労働組合である日本介護クラフトユニオンが5月27日、こうしたアンケート結果を公表しました(介護クラフトユニオンのサイトはこちら)。

ケアマネ資格の「更新研修」、頻度が多すぎ、ケアマネの負担が大きいとの声も

厚生労働省の「アマネジメントに係る諸課題に関する検討会」(以下、検討会)」で、▼ケアマネジャーの業務の在り方▼人材確保・定着に向けた方策▼法定研修の在り方▼ケアマネジメントの質の向上に向けた取り組み促進—に関する議論が始まっています(関連記事はこちらこちら)。

2040年に向けて、高齢者人口そのものは大きく増えないものの、「多様な介護・医療ニーズを持つ85歳以上高齢者の割合が高まる」とともに「高齢者を支える現役世代人口が急速に減少していく」ことが分かっています。少なくなる一方の「支え手」(若者)で、増大する高齢者を支えなければならず、「どのように人材を確保していくのか、どのようにサービスの質を落とさずに業務効率化を進めていくのか」などが極めて大きな課題となっていきます。

ケアマネジャー等の状況を見ると、▼従事者数が2020年度から減少傾向にある▼ケアマネ事業者数も2018年度から減少傾向にある—ことなどが分かっています。

ケアマネジャーが減少している(ケアマネ課題検討会2 240415)

ケアマネ事業所も減少している(ケアマネ課題検討会3 240415)



さらに、ケアマネジャー業務については、▼業務の範囲が広すぎる▼本来のケアマネジメント業務に加え、さまざまな要望が利用者・家族からくる—ことなどから、ケアマネジャーが疲弊している状況が報告されています((関連記事はこちら)。



こうした中で介護クラフトユニオンは、ケアマネジャーを対象とした「業務実態」に関するアンケート調査を実施(本年(2024年)4月26日-5月6日)。641名のケアマネジャー・主任ケアマネジャー(7割弱が居宅介護支援事業所(ケアマネ事業所)に所属)が回答を寄せており、次のような状況が明らかになりました。

【「本来はケアマネの業務ではない」と思うもの】(該当割合が多いものをGem Med編集部でピックアップ)
▽ペット・植物の世話:88.6%
▽利用者の入退院時の生活用品等の調達:81.1%
▽介護保険制度上では対応できない生活支援(買い物、銀行等の手続、粗大ごみの対応等):79.9%
▽高頻度・長時間の電話対応:71.9%
▽救急車への同乗:70.2%
ほか

ケアマネ業務範囲について1



【「本来はケアマネ業務ではない」と思うものの対応経験】(経験ありの割合が高いものをGem Med編集部でピックアップ)
▽利用者の介護保険制度以外の相談:83.3%(「本来業務でない」と考える割合は25.7%)
▽利用者の安否確認(見守り支援含む):78.9%(同32.1%)
▽高頻度・長時間の電話対応:77.8%(同71.9%)
▽利用者の怪我等によるトラブルを原因とする緊急訪問:76.3%(同25.4%)
▽利用者の介護保険制度以外の行政上の手続き支援:75.0%(同53.2%)
ほか

ケアマネ業務範囲について2



【「本来はケアマネ業務ではない」と思うものになぜ対応したか】(上記の経験あり割合が高いものをGem Med編集部でピックアップ)
▽利用者の介護保険制度以外の相談
→「支援できる家族や友人知人がいなかったため」が82.0%で最多、ほか「自費サービスを利用する金銭的な余裕がないため」14.0%など

▽利用者の安否確認(見守り支援含む):78.9%(同32.1%)
→「支援できる家族や友人知人がいなかったため」が76.9%で最多、ほか「自費サービスを利用する金銭的な余裕がないため」19.8%、「人手不足のため」16.2%など

▽高頻度・長時間の電話対応:77.8%(同71.9%)
→「支援できる家族や友人知人がいなかったため」が62.5%で最多

▽利用者の怪我等によるトラブルを原因とする緊急訪問:76.3%(同25.4%)
→「支援できる家族や友人知人がいなかったため」が82.4%で最多、ほか「自費サービスを利用する金銭的な余裕がないため」17.2%、「人手不足のため」11.2%など

▽利用者の介護保険制度以外の行政上の手続き支援:75.0%(同53.2%)
→「支援できる家族や友人知人がいなかったため」が89.2%で最多、ほか「自費サービスを利用する金銭的な余裕がないため」23.0%など
ほか

ケアマネ業務範囲について3



このように、相当程度「本来はケアマネ業務でないと思われる業務」を、「他に頼れる人がいない」などの理由でケアマネ自身が手弁当で実施している状況が浮き彫りとなっています。

こうした状況の改善に向けて、ケアマネの多くは▼ケアマネジャーが「できること」と「できないこと」を明確に示す(77.1%)▼不明確な業務範囲を誰が行うべきか明確に決める(70.2%)—ことが重要と考えていることが分かりました。ほかに▼利用者・家族が介護保険制度を理解しやすいようにする▼業務範囲外の行為も含め、介護報酬を引き上げて制度に盛り込む―との考えもありますが、「効果がある」と考えるケアマネは半数程度、あるいは4割程度にとどまっており、「実効性」の面で課題がありそうです。

検討会でも、この「業務範囲外の行為をしなければならない」現状の解決方策が検討されています。現場の声に十分に耳を傾けて解決策を考えていく必要があるでしょう。



また、更新研修については▼回数が多すぎる▼時間が長すぎる▼費用が高すぎる—との声が出ており、「現場負担」と「ケアマネの質確保」の両面をにらみながら、見直しの必要性・内容などを検討していくことが重要です。

更新研修について



さらに、2024年度介護報酬改定では「ケアマネ1人当たりの担当者数上限の緩和」(より多くの要介護者を担当可能とする)との対応が行われましたが、この見直しについては「利用者としっかり向き合えなくなる」「サービス残業が増える」「賃金は上がらず業務量が増えるばかり」「今でも大変なのにできると思えない」「困難事例の利用者が増えているので件数を増やせない」ことなどから64.9%(ケアマネ事業所所属ケアマネに限定すれば75.0%)が「評価できない」と回答しています。さらに実態を詳しく把握することが重要でしょう。

ケアマネの担当者数上限見直し(緩和、引き上げ)に関する評価



このほか、▼オンラインモニタリングについて、移動時間短縮・担当件数増加に向けて「行いたい」との声が4割程度ある一方、「対面でなければわからないことが多い」「利用者にオンライン環境が整っていない」ことなどから行いたくないとの声が半数を超えている▼AI(人工知能)によるケアプラン作成について、「時短につながる」「自分では思いつかないプランができる」ことなどから前向きな意見が7割弱を占める一方、「個別性がなくなる」「手間がかかる」ことを懸念する消極的な意見も3割弱ある—ことなども分かりました。

オンラインモニタリングの評価



こうした調査結果も踏まえて、ケアマネにかかる課題解決策が検討されることに期待が集まります。



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