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ケアマネジャーの処遇改善・専門性の評価を進めるべき、「ケアマネ試験枠広げ、合格者への研修を充実する」方向も検討を—ケアマネ課題検討会

2024.5.10.(金)

ケアマネジャーの人材確保・定着を図る「処遇改善」や「専門性の評価」を検討する必要がある。また人材確保のために「ケアマネジャー試験(実務者研修受講試験)の枠を広げ(受験者・合格者増を狙う)、合格者の研修を充実する(質の確保を図る)」という方向も検討してはどうか―。

5月9日に開催された「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」(以下、検討会)で、こういった議論が行われました。

ケアマネジャー1人当たりの利用者定員拡大に「業務過多」などを懸念する声も

検討会では、社会保障審議会・介護保険部会の意見を踏まえて、(1)ケアマネジャーの業務の在り方(2)人材確保・定着に向けた方策(3)法定研修の在り方(4)ケアマネジメントの質の向上に向けた取り組み促進—の4テーマについて議論を深めていきます(関連記事はこちら)。

5月9日の検討会では、▼板井佑介参考人(「民間事業者の質を高める」全国介護事業者協議会理事)▼根津賢謙参考人(社会福祉法人米寿会)▼斉藤正行(全国介護事業者連盟理事長)▼田中紘太参考人(マロー・サウンズ・カンパニー代表取締役)▼平原優美参考人(日本訪問看護財団常務理事)▼中澤伸参考人(川崎聖風福祉会理事兼事業推進部長)—から、意見を聴取しながら、上記4テーマに関する議論を深めました。

参考人の意見は多岐にわたりますが、次のような点が目を引きました。

▽ケアマネジャーの専門性(訪問系サービスのサービス提供責任者等経験、社会福祉士等の資格、サービス管理者経験など)の評価、ケアマネ受験資格要件の緩和(実務者経験年数要件の撤廃など)、処遇の向上、ケアマネ事業所管理者の主任要件撤廃、「御用聞き」を排除する方向での評価充実などを検討してほしい(板井参考人)

▽既存の社会資源(民生委員など)や自治体との連携、ICTの活用(法定研修の完全オンライン化、オンラインでのサービス担当者会議・モニタリング、音声入力ソフトの活用による会議録作成など)によりケアマネ負担は相当程度軽減する。またケアマネ業務の魅力を積極的に情報発信すべき(根津参考人)

▽居宅介護支援の管理業務と主任ケアマネジャーの役割の整理、ケアマネジャーの総合的な業務に対する更なる評価(業務の切り分けは現実的には難しく、評価されていない業務の評価が必要)、居宅介護支援における処遇改善、法定研修の講師に対する評価制度の導入と高評価講師の活用、科学的介護推進及びLIFEの活用支援、自立支援・重度化防止の推進評価とアウトカム評価の導入を検討すべき(斉藤参考人、田中参考人)

▽介護サービスの量的限界も踏まえた「インフォーマルサービスを視野に入れたケアマネジメント」、福祉関係者との日頃からの連携強化、法定研修の受講方法・時間・金額等の見直し、医療の視点もある職種(訪問看護等)に対し気軽に相談・意見求めができる枠組みの検討が必要である(平原参考人)

▽ケアマネ同士・ケアマネと地域包括支援センターの連携強化、主任介護支援専門員の役割見直し、業務の明確化と明確化後の対応の検討などが必須である。主任ケアマネには「ケアマネの知識・スキルの向上」と「事業所経営」との双方の能力が求められているが、1人ですべてを賄うことはできない(中澤参考人)



ケアマネジャー業務については、これまでにも「業務の範囲が広すぎる」「本来のケアマネジメント業務に加え、さまざまな要望が利用者・家族からくる」ことが問題視され、「本来のケアマネ業務」と「それ以外の業務」との切り分けが重要視されており、参考人からもこの点を強く求める声が出ています。

一方で、利用者・家族-ケアマネジャーの関係性を踏まえれば「業務の切り分けは現実的には難しい」ことを踏まえ、むしろ「本来業務以外の評価も検討してはどうか」との声が出ている点にも注目が集まります。現場の実態を踏まえて、今後、どういった手法が好ましいのかを深く検討していくことになるでしょう。

また、個々のケアマネジャーの負担を軽減していくためには「ケアマネ事業所の規模拡大、ケアマネジャーの多人数確保」も重要な要素となります。ただし、大規模化していけば、それだけ経営者である主任ケアマネジャーの負担も大きくなります。その際、主任ケアマネジャーに「ケアマネジメントのスキルアップ」だけでなく、「経営手腕の強化」も同時に求めれば、主任ケアマネはパンクしてしまいます。例えば「ケアマネ事業所の経営支援」を行う組織や、事務処理業務のセンター化などを提案する声も出ており、それらも参考にしながら、今後、検討を深めていく必要があります。

このほか、「ケアマネジャーの処遇改善」や「専門性の高いケアマネジャー(がん末期の要介護者や難病の要介護者対応などを行えるケアマネジャー)の評価充実」などを検討していくことも多くの参考人・構成員から提言されています。



また、5月9日の検討会では、前回会合に続く自由討議も行われました。

そこでは、染川朗構成員(日本介護クラフトユニオン会長)から、「2024年度介護報酬改定で、ケアマネジャー1人当たりの利用者定員の拡大が行われたが、現場からは『従前より多くの利用者担当は非現実的である』『ケアマネ業務の煩雑さを理解してほしい』『ケアマネの質向上のために、かえって利用者数を減らしてほしい』など、『評価できない』との声が多数(アンケート回答者の75%)出ている。またICT活用や効率化は『やりたくてもやれない』との声も大きい。今後、実態把握の上で必要な対応を検討すべき」旨の意見が出されました。

2024年度介護報酬改定で、ケアマネ人当たりの取り扱い件数を緩和した



ほかに、「ケアマネジャーの人材確保に向けて、受験資格を緩和したうえで、合格者に向けた研修の充実を図る方向も検討すべきではないか」(工藤英明構成員:青森県立保健大学健康科学部社会福祉学科教授、石山麗子構成員:国際医療福祉大学大学院医療福祉経営専攻教授)、「小規模なケアマネ事業所等の連携を強化する方策を検討すべき」(相田里香構成員:青い鳥合同会社代表社員)などの意見も出されています。



ケアマネジャー等の状況を見ると、▼従事者数が2020年度から減少傾向にある▼ケアマネ事業者数も2018年度から減少傾向にある—ことなどが分かっており、「人材の確保・定着、少人数でも質の高い業務を実施できるような方策」を、検討会で総合的に考えていくことが重要です。

ケアマネジャーが減少している(ケアマネ課題検討会2 240415)

ケアマネ事業所も減少している(ケアマネ課題検討会3 240415)



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