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介護保険リハビリのストラクチャー・プロセス評価指標を設定―要介護者のリハビリ提供体制検討会

2020.6.30.(火)

自立支援・重度化防止に向けた重要な介護保険のリハビリテーション(訪問リハ、通所リハ、介護老人保健施設、介護医療院)について、▼サービス提供事業所数▼定員数▼リハビリ専門職の数▼利用率▼延べ利用者数▼基本単位・加算の算定状況―などを指標として、地域の状況を評価し、サービス基盤の整備やサービスの質向上等につなげていくべきである―。

6月29日に開催された「要介護者等に対するリハビリテーションサービス提供体制に関する検討会」(以下、検討会)で、こういった考え方が概ねまとめられました(厚労省のサイトはこちら(検討会報告書(案))こちら(介護保険事業(支援)計画における要介護者等に対するリハビリテーションサービス提供体制の構築に関する手引き(案)))。

リハのストラクチャー評価指標・プロセス評価指標の全体像(要介護者リハ提供体制検討会4 200629)



今後、介護保険事業(支援)計画を作成・評価等する市町村(事業計画を作成)と都道府県(事業支援計画を作成)に周知されるとともに、2021年度に予定される介護報酬改定でも検討要素の1つとなることでしょう。

リハ提供体制の地域間格差、リハ内容・効果の事業者間格差などの課題

2000年度からスタートした公的介護保険制度は「自立支援・重度化防止」を重要理念の1つに掲げています。介護保険のリハビリテーションは、この「自立支援・重度化防止」を実現する極めて重要なサービスですが、「地域によってサービス提供量に大きな格差がある」「サービス事業所によって効果に大きな格差がある」などの課題も指摘されています。

前者については、離島や中山間部などサービス提供人材の確保が困難な地域では、リハ提供量も少なくなり、逆に都市部ではリハ提供量に余剰があるようです。

後者は、一部のリハ事業所では、効果の上がらない身体リハを漫然と繰り返しており、必ずしも利用者や家族の希望に沿ったものとなっていない状況があると指摘されます。

また、昨年(2019年)4月からは、要支援者・要介護者に対する維持期の医療保険疾患別リハビリテーション料(▼脳血管疾患等リハビリテーション料▼廃用症候群リハビリテーション料▼運動器リハビリテーション料―のみ)について、医師が「医療保険のリハビリ継続が必要」と判断した場合や「外傷性の肩関節腱板損傷」「高次脳機能障害」などの場合を除き、医療保険給付から介護保険給付へ完全移行となりました(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。この点、利用者等には「介護保険で十分なリハが受けられるのだろうか」という不安もあるようです。

リハの実績評価に当たり「指標」を設定、各地域でこれに基づくPDCA推進を

こうした問題点を放置したままでは「自立支援・重度化防止」は画餅に帰してしまいます。現在の介護保険事業(支援)計画においては、実績を評価して課題を抽出し、改善していくこととなっています(PDCAサイクルを回す)。実績評価に当たっては「指標」の設定が重要となることから、検討会で介護保険リハの実績を評価するに当たっての「指標」設定等を議論してきたものです。当然、地域におけるリハ提供体制の構築指針とも言えます。

検討会では、介護保険給付としてリハを提供する▼訪問リハ事業所▼通所リハ事業所▼介護老人保健施設▼介護医療院―を主な対象としています。ただし、リハの中には、これ以外にも「訪問看護の一環として提供されるリハ」や「デイサービス(通所介護)等における機能訓練」「市町村の地域支援事業の中で提供されるリハ」など様々な形態があります。検討会では、これらの様々なリハについては「今後の検討課題」に位置付けていますが、「地域のリハ提供体制の中で考えなくてよい。介護保険給付のリハ提供体制を構築すれば済む」わけでわけではありません。厚労省老健局の大島一博局長もこの点を強調しています。



医療・介護サービスの実績を評価する際には、大きく(1)ストラクチャー評価(構造設備等の評価、S)(2)プロセス評価(サービス内容の評価、P)(3)アウトカム評価(サービスの効果に関する評価、O)―の3種類があります。これらを組み合わせることが重要です。検討会では、介護保険リハの評価指標として次のような項目を固めました。

(1)ストラクチャー評価指標
▽サービス提供事業所数(訪問リハ、通所リハ、老健施設、介護医療院)
▽定員数(サービス種類別)
▽理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の従事者数(サービス種類別)
▽サービス提供事業所数(短期入所療養介護(老健施設・介護医療院))

リハのストラクチャー評価指標(要介護者リハ提供体制検討会2 200629)



(2)プロセス評価指標
▽利用率(訪問リハ、通所リハ、老健施設、介護医療院)
▽定員あたりの利用延人員数(通所リハ)
▽通所リハ(短時間(1時間以上2時間未満))の算定者数
▽リハマネジメント加算II以上の算定者数
▽短期集中(個別)リハ算定者数
▽認知症短期集中リハ算定者数
▽個別リハ実施加算算定者数
▽生活機能向上連携加算件数算定者数
▽経口維持加算算定者数

リハのプロセス評価指標(要介護者リハ提供体制検討会3 200629)



もちろん、上記以外の項目も重要ですが、「算定件数・率が極めて低い」「さらなる研究が必要である」ことなどから、次のように参考指標として整理されています。

【ストラクチャー評価の参考指標】
▽サービス提供事業所数(短期集中(個別)リハ実施加算)
▽サービス提供事業所数(認知症短期集中リハ実施加算)
▽サービス提供事業所数(リハマネジメン加算II以上)
▽規模別の通所リハ事業所数
▽基本サービス費別の老健施設数

【プロセス評価の参考指標】
▽生活行為向上リハ実施加算算定者数
▽経口移行加算算定者数
▽介護医療院における理学療法、作業療法、言語聴覚療法の算定者数
▽入所前 後訪問指導加算算定者数

アウトカム評価指標は今後の検討課題、ADL・IADL・主観的幸福感など

一方、(3)アウトカム評価については、「指標設定は今後の課題」に位置付けられています。リハのアウトカムと言えば、たとえば「身体機能の改善」「社会参加の実現」などが考えられていますが、「いわゆるクリームスキミング(リハ効果が上がりやすい利用者のみを選別し、効果の上がりにくい利用者へのサービスが滞る事態)をどう防止するか」「利用者の意向は様々(身体機能の向上が優先という利用者もいれば、「買い物に行ける・料理ができる」ことを優先する利用者もいる)であり、そこをどう勘案するか」という点について、研究や議論が尽くされていないため、安易に指標を設定すれば、かえってリハ提供体制が好ましくない方向に動いてしまう可能性もあるためです。

検討会では、「活動・参加の拡大」や「利用者の尊厳・生活の維持向上」などを目指す指標が好ましいとし、▼主観的幸福感、健康観▼社会参加への移行▼ADL(BIやFIM)の変化度▼IADL(FAI)▼障害高齢者の日常生活自立度―などを検討項目として例示。また検討会の構成員からは、▼心身機能▼基本動作(寝返り・座位保持など)▼日中の過ごし方(離床時間など)▼トイレでの排泄が可能となった件数▼経口摂取が可能となった件数▼介護負担感▼興味関心チェックシート▼ロコモ度テストの変化度―などを検討してはどうかとの意見も出ています。

2021年度からの第8期計画に、リハの実績評価「指標」を活用

介護保険事業(支援)計画については、2021年度から第8期がスタートします(3年を1期とする)。現在、市町村と都道府県で計画作成が進んでおり、これら指標が、その中に盛り込まれることになります。検討会では、その際に、次のような流れで目標設定等を行ってはどうかと提案しています。今回の指標は、とりわけ(C)の「課題・施策検討に向けた事項の確認」において重要となることが分かります。具体的な数字(サービス提供事業所数など)は各種の統計情報(介護保険総合データベースや介護サービス情報公表システムなど)などから引用できますが、都道府県による市町村支援が重要となってくるでしょう。

(A)地域で目指す「理想像」を明確化する(例えば「状態に応じて、必要なリハを受けながら地域で健康的に暮らせる社会を構築する」など)

(B)理想像を実現するための具体的なビジョンを固める(例えば「リハ基盤を整備する」「地域独自の指標を明確化する」など)

(C)課題・施策検討に向けた事項の確認(例えば「地域のリハビリスタッフはどの程度か」「リハサービス事業所の稼働率はどの程度か」「介護予防の取り組み状況はどうか」「地域ケア会議の開催回数や出席者の状況はどうか」など)

市町村・都道府県におけるリハ提供体制構築に向けたの検討の流れ(要介護者リハ提供体制検討会1 200629)



さらに、第8期計画の状況を踏まえて、「上記の参考指標を正式に指標化する」「新たな指標項目を検討する」「アウトカム指標の研究・検討を進める」などし、第9期・第10期計画に向けたバージョンアップをしていくことになります。この点に関連して東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)は、「リハにおいて認知症対応を避けてとおることはできない」と強調。今後、認知症リハについても指標設定等に向けた検討が求められ、そこでは効果に関する研究に期待が集まります。

また2021年度には3年に一度の介護報酬改定が予定されており、そこでも上記指標設定等も踏まえた検討が行われます。

介護保険リハ以外の「地域支援事業や訪問看護のリハ」なども重要検討課題

なお、医療・介護サービスは一体的に行うことが重要です。医療提供体制については都道府県で「医療計画」を定め、現在、第8次計画(2018-23年度、2020年度に中間評価)が進行中です。この点について今村知明構成員(奈良県立医大公衆衛生学教授)は「都道府県の医療提供体制主管部局において、本検討会の成果物(報告書・手引き)を参考に、必要な部分は医療計画にも盛り込んでいくべき」と提言しています。リハビリや訪問看護など、医療保険と介護保険の双方にまたがるサービスもあり、シームレスなサービス提供体制の構築に向けた、「必要な部分の共有」(医療提供体制主管部局と介護保険主管部局との共有)が重要です。

また、上述したように検討会では「介護保険給付のリハ」を主な検討対象にしましたが、他のリハ(地域支援事業のリハや訪問看護の一環として行われるリハなど)を軽んじるものではありません。岡島さおり構成員(日本看護協会常任理事)や角野文彦構成員(滋賀県健康医療福祉部理事)らは、「介護保険給付のリハ」以外のリハ(地域支援事業のリハや訪問看護の一環として行われるリハなど)の整備が後ろ向きにならないように留意すべき旨を強く訴えています。

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