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お薬手帳は医療従事者が処方内容確認のために使うこともあり、「毎回記録」が重要―医療機能評価機構

2020.9.10.(木)

緑内障治療点眼剤を調剤する際は、同成分や作用点が同じ成分が重複していないかを確認する必要がある—。

お薬手帳は、医療従事者が処方内容確認のために使うこともあるため「毎回記録することが重要である」旨を患者に伝える必要がある—。

日本医療機能評価機構が9月4日に公表した、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の「共有すべき事例」から、こういった重要ポイントが浮上しました(機構のサイトはこちら)。

処方薬の成分や効能効果を確認し、「同成分」「同効」薬が処方されていないかなど確認を

日本医療機能評価機構は、全国の保険薬局(調剤薬局)を対象に、「患者の健康被害等につながる恐れのあったヒヤリ・ハット事例」(ヒヤリとした、ハッとした事例)を収集する「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」も展開しています。その一環として、収集事例の中から医療安全確保のために有益な情報を「共有すべき事例」として整理し、公表しています(最近の事例に関する記事はこちらこちらこちら)。9月4日には、新たに3つのヒヤリ・ハット事例が紹介されました。

1つ目は、形状が類似した異なる薬剤を誤って患者に交付しそうになった事例です。

ある患者に、気管支喘息治療やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の症状緩和に用いる「レルベア100エリプタ30吸入用」(一般名:ビランテロールトリフェニル酢酸塩・フルチカゾンフランカルボン酸エステル)が処方されました。しかし調製者は、誤って同じ引出しに入っていたCOPD症状緩和薬の「テリルジー100エリプタ30」(フルチカゾンフランカルボン酸エステル・ウメクリジニウム臭化物・ビランテロールトリフェニル酢酸塩)を箱から取り出し、鑑査に回しました。鑑査時には取り違えに気付きませんでしたが、患者に薬剤を交付する際にアルミ包装を開封したところ誤りに気付きました(デバイスの色がレルベアは白地に青のキャップ、テリルジーは白地に黄土色のキャップ)。

取り違えの背景には、▼レルベアとテリルジーは本体・包装の形状がおなじである▼ほかにも同じ形状の薬剤がある(気管支喘息治療薬の「アニュイティ」、COPD症状緩和薬の「アノーロ」、COPD症状緩和薬の「エンクラッセ」)―ことが考えられます。

機構では、外観が類似した薬剤の取り違えを防ぐために、「薬品棚に注意喚起を促すラベルを付ける」「薬剤名、有効成分、規格、製剤の画像を掲載した吸入剤リストを作成し薬局内で情報を共有する」ことなどが有効であるとアドバイスしています。

レルベアとテリルジーは形状が同一である(薬局ヒヤリハット1 200904)



2つ目は、薬剤師が処方薬剤の成分を確認したうえで疑義照会を行った結果、「診療ガイドライン」に沿った処方内容に見直された好事例です。

ある患者の処方が、いずれも緑内障・高眼圧症治療薬である▼アイベータ配合点眼液▼ドルモロール配合点眼液「センジュ」―に変更されました。薬剤師が有効成分を確認すると、どちらにも「チモロールマレイン酸塩」が含まれているため、処方医に疑義照会。その結果、「ドルモロール配合点眼液『センジュ』」が、同成分を含まない「ブリンゾラミド懸濁性点眼液1%『ニットー』」(緑内障・高眼圧症治療薬)へ変更になりました。

日本緑内障学会の「緑内障診療ガイドライン(第4版)」では、「緑内障の薬物治療では、単剤での効果が不十分であるときには多剤併用療法を行い、併用処方時には、薬理学的な作用点が同じ薬剤を選択してはならない」とされています。この点、上記では「β遮断薬」が重複しており、薬剤師の知識・疑義照会で、ガイドラインを遵守する処方内容への変更が可能となっています。

機構では、「緑内障治療点眼剤を調剤する際は、単剤、配合剤ともに有効成分を確認し、同成分あるいは薬理学的な作用点が同じ成分が重複していないかを確認する必要がある」とアドバイスしています。

アイベータ配合点眼液とドルモロール配合点眼液とには、作用機序が同じ成分が重複している(薬局ヒヤリハット2 200904)



3つ目も、薬剤師が患者とのコミュニケーションを通して「同じ薬効の薬剤が処方されている」ことに気づき、疑義照会を行った結果、適正化が行われた好事例です。

久しぶりに来局した患者に、整形外科から末梢性神経障害性疼痛の治療に用いる「タリージェ錠5mg」(一般名:ミロガバリンベシル酸塩)が初めて処方されました。薬剤師が患者とコミュニケーションをとったところ「他院で、神経障害性疼痛、線維筋痛症に伴う疼痛治療薬の『リリカカプセル』(一般名:プレガバリン)を継続服用している」ことが分かりました。薬剤師は「薬効が重複する」ために処方医に疑義照会。結果、「タリージェ錠」が削除となりました。

なお、本事例ではお薬手帳に「リリカカプセル」が記載されていましたが、情報更新がなされておらず、処方医が「リリカカプセルの服用は終了している」と判断したという背景もあります。

機構では、「タリージェ錠やプレガバリン製剤が処方された際は、同効薬の服用の有無を確認する」「お薬手帳は、患者だけでなく医療従事者が患者の薬剤服用歴を把握するためにも重要なツールであり、同じ薬剤が長期にわたり継続処方されている場合でも、毎回記録することの重要性を患者に伝える必要がある」とアドバイスしています。

タリージェ錠とリリカカプセルは効能に重複がある(薬局ヒヤリハット3 200904)



厚生労働省は2015年10月に「患者のための薬局ビジョン」をまとめました。「かかりつけ薬局・薬剤師が▼服薬情報の一元的・継続的な把握と、それに基づく薬学的管理・指導▼24時間対応・在宅対応▼かかりつけ医を始めとした医療機関などとの連携強化—の機能を持つべき」旨が強調されています。薬局・薬剤師のかかりつけ機能を強化し、「適正な薬学管理の実現」「重複投薬の是正」など医療の質を向上していくことが重要なためです(関連記事はこちら)。

とりわけ高齢者においては多剤投与が健康被害を引き起こす可能性が高いことが知られており、厚労省は「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」および「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別))」を取りまとめ、公表しています。入院医療においては医療機関(薬剤部など)が薬剤適正使用の責任を負いますが、外来医療等においては、保険薬局(調剤薬局)のかかりつけ機能が極めて重要であることは述べるまでもありません(関連記事はこちらこちらこちら)。

こうした考え方を先取りし、2018年度の前回調剤報酬改定では、▼薬剤師から処方医に減薬を提案し、実際に減薬が行われた場合に算定できる【服用薬剤調整支援料】(125点)の新設▼【重複投薬・相互作用等防止加算】について、残薬調整以外の場合を40点に引き上げる(残薬調整は従前どおり30点)—など、「患者のための薬局ビジョン」や「高齢者の医薬品適正使用の指針」を経済的にサポートする基盤が整備され、さらに今般の2020年度改定でその充実(例えば【服用薬剤調整支援料2】の新設など)が図られています。

決して「疑義照会=点数算定」という単純な構図ではりません(要件・基準をクリアする必要がある)が、今回の事例(2つ目、3つ目の事例)のような薬剤師の取り組みが積み重ねられれば、確実に「かかりつけ薬局・薬剤師」の評価(評判)が高まっていきます。こうした現場の動きは、確実に報酬引き上げ論議等に結びついていくことから、「薬剤の専門家」という立場を踏まえて、積極的な疑義照会・処方変更提案などが行われることがさらに期待されます。

ぽんすけ2020 MW_GHC_logo

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