エンハーツ点滴静注、HER2陽性の切除不能な進行・再発の「胃がん」にも保険診療で使用可―厚労省
2020.9.30.(水)
乳がん治療に用いる「エンハーツ点滴静注」について、今般、「胃がん」への効能・効果追加が認められ、発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療に用いる「ユルトミリス点滴静注」について、今般、「非典型溶血性尿毒症症候群」への効能・効果追加が認められたことなどを受け、保険診療上の留意事項を整理する―。
厚生労働省は9月25日に通知「医薬品医療機器等法上の効能・効果等の変更に伴う留意事項の一部改正について」を発出し、こうした点を明らかにしました(厚労省のサイトはこちら)。
医薬品の効能・効果追加を踏まえて、保険診療上の留意事項を整理
保険診療上、医薬品の使用は「効能・効果が認められた傷病」のみとなるのが原則です(例外的に、医学的な妥当性から効能・効果が認められてない傷病治療に用いることを社会保険診療報酬支払基金等が許可することもある)。今般、効能・効果等に変更が行われた医療用医薬品について、保険診療上の留意事項に関しても見直しが行われたものです。
まず、すでに「発作性夜間ヘモグロビン尿症」への効能・効果が認められている「ユルトミリス点滴静注300mg」(一般名:ラブリズマブ(遺伝子組換え))について、今般「非典型溶血性尿毒症症候群」への効能・効果が新たに認められました。
保険診療上は、「補体制御異常による非典型溶血性尿毒症症候群以外の患者に投与しない」ことに留意する必要があります(使用上の注意で「補体制御異常による非典型溶血性尿毒症症候群の患者に使用する」とされている)。
また、すでに「化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能または再発の乳がん(標準的な治療が困難な場合)」への効能・効果が認められている「エンハーツ点滴静注用100mg」(一般名:トラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え))について、今般「がん化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃がん」への効能・効果が新たに認められました。
保険診療上、投与対象となるのは、▼一次治療・二次治療の治療歴を有する▼「トラスツズマブ(遺伝子組換え)」(販売名:ハーセプチン注射用、ほか後発品あり)を含む化学療法による治療歴を有する―の両方を満たす患者のみとなる点に留意が必要です(本製剤の使用上の注意に、「トラスツズマブ(遺伝子組換え)を含む化学療法による治療歴のない患者」「一次治療・二次治療」における有効性・安全性は確立していない旨が記載されています)。
この場合、レセプトに「一次治療・二次治療で実施した化学療法」を記載することが求められます。
なお、強直性脊椎炎などの治療に用いる「トルツ皮下注80mgオートインジェクター」「同皮下注80mgシリンジ」(一般名:イキセキズマブ(遺伝子組換え))について、「X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎」も保険診療の対象とすることが示されています。その際、使用上の注意には、「20週以内に治療反応が得られない場合は本剤の治療計画の継続を慎重に再考する」と記載されている点に留意して使用すること。」と記載されているので、使用に当たっては十分留意することが求められます。
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