2022年度、国保の課税限度額は102万円、後期高齢者医療の賦課限度額は66万円に引き上げ―社保審・医療保険部会(2)
2021.10.27.(水)
国民健康保険の保険料賦課・保険税課税限度額は現在より3万円アップの102万円に、後期高齢者医療制度の保険料賦課限度額は同じく2万円アップの66万円とする―。
高所得者では若干の負担増となるが、これを行わなければ医療費が増加する中で「中間所得層の負担」が増えてしまうため、高所得者と中間所得者との負担バランスを考慮するものである―。
10月22日に開催された社会保障審議会・医療保険部会では、こういった点も固められました。
2022年度の国保保険料(税)の賦課限度額、102万円に引き上げ
医療保険・介護保険などの社会保険では、「サービスを受けた量に応じた負担をする」という【応益負担】(サービスを多く受ければ受けるほど負担も大きくなる)と「経済力に応じた負担をする」という【応能負担】(所得が高ければ高いほど負担も大きくなる)を組み合わせて保険料(税)や自己負担割合を決めています。
このうち保険料(税)については、もっぱら後者の「応能負担」の考えが採用され、「所得等の高い人が、より高額な保険料(税)を負担する」形となっています。ただし青天井に保険料(税)が上がっていけば、高所得者の中には「私の保険料は高すぎ、これでは医療保険に加入する意味がない。医療等を自費で受けるので保険料(税)は負担しません」と考える人が出てきてしまいます。これでは社会保険制度が崩壊してしまうため、保険料(税)負担額の上限、具体的には「一定所得以上の人は、それ以上に所得が高くなっても保険料(税)額は同額とする」という【賦課限度額】(上限額)の仕組みが設けられています。
賦課限度額は、そのときどきの医療保険加入者の所得状況によって変えていく必要があります。例えば、「医療費が増加する中で賦課限度額を変えない」こととすれば、高所得者の負担は変わりませんが、その分「中間所得層に負担がのしかかる」こととなってしまうためです。
この点、国民健康保険については「【賦課限度額】見直しの必要があるか」を毎年度検討し(例えば、上限を超過する高所得世帯の割合が1.5%程度以内までに収まるか、などを勘案する)、必要に応じて3-4万円程度の引き上げが行われてきています。
2022年度においては、医療費等の増加を見込んで「3万円」(基礎賦課分2万円、介護納付金分1万円)引き上げ、保険料(税)の上限を「102万円」とする方針が固められました。
今後、税制改正等を行い(国見健康保険「税」としている自治体が多い)、それを踏まえて各自治体で条例が改正されることになります。
また、後期高齢者医療制度の保険料賦課限度額については、見直しの必要性を2年に一度検討します。上記と同様に「高所得者と中間所得者との負担バランス」を考慮するものです。
この点、2022年度には「2万円」引き上げ、保険料の上限を「66万円」とする方針が固められています。関係政令を改正し、来年度(2022年度)から新たな賦課限度額が適用されることになります。
オンライン資格確認が実際に可能な医療機関は、全体の5.1%
また、10月22日の医療保険部会では「オンライン資格確認等システム」の体制整備状況なども報告されました。
患者が医療機関を受診する際、医療機関窓口で「医療保険制度に加入しているのか、それはどの医療保険制度(健康保険組合、協会けんぽ、国民健康保険など)なのか」を瞬時に確認することで、「医療保険に加入していない人が不当に医療保険を利用する」ことが避けられるのです(例えば退職後も国民健康保険加入手続きをとらず、会社員時代の保険証を返還せずに利用している事例が、1か月当たり30-40万件程度ある。従前、正確な医療保険の加入資格確認はレセプト審査を行う際にしかできなかったので、こうした事態が生じてしまう)。
オンライン資格確認は次のような流れで行われます。
▼患者が、健康保険被保険者証機能を持つ「マイナンバーカード」を医療機関等窓口のカードリーダーにかざす
↓
▼医療機関等のパソコン端末から、オンラインで社会保険診療報酬支払基金(支払基金)・国民健康保険中央会(国保中央会)のデータに「当該患者がどの医療保険(健康保険組合や国民健康保険など)に加入しているのか」を照会し、回答を得る
医療機関の準備遅れ(資格確認用パソコンが品薄になるなど)、資格情報の整理遅れなどにより、オンライン資格確認等システムの本格稼働・本格運用は「10月20日」となり、医療保険部会ではその時点での体制整備状況が報告されました。
たとえばオンライン資格確認等システムの準備(顔認証付カードリーダーシステム、対応パソコン等の準備)が完了している医療機関は、10月20日時点で2万362施設・全体の8.9%。さらに、実際にマイナンバーカードを用いてオンライン資格確認を実施している医療機関は、同日時点で1万1676施設・5.1%となりました。
残念ながら「全国の医療機関において、マイナンバーカードで保険診療を受けられる」状況にまでは至っておらず、「さらなる体制整備」に力を入れていく必要があり、厚生労働省保険局医療介護連携政策課保険データ企画室の大竹雄二室長は「まず、顔認証付きカードリーダーを申し込んでいるが、準備・運用に至っていない10万程度の医療機関について、専用パソコンの設置やシステム改修などを急ぎ進めてもらう」との考えを示しています。
なお佐野雅宏委員(健康保険組合連合会副会長)からは「目標値などを盛り込んだアクションプランを策定し、進捗管理を精緻に行ってはどうか」との提案もなされており、今後の検討課題の1つになるでしょう。
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